四塚伝説
 昔尾口村の尾添集落にたいそう猫好きの娘がいた。娘は猫のとってきた魚を猫とともに一つの皿で食べ、猫とともに山野を跳び回り、老女になっても若者のように元気だった。

 ある日大蛇が現れて老女を襲ったが、三匹の猫が勇ましく飛びかかりついにはひるんでいた老女もカマで大蛇を殺した。その肉を食べた猫はその後狼と戦うほど荒くなった。老女もいつの間にか猫そっくりの顔になり、手足にも毛が生えた。

 彼女は家を離れて山の洞穴に住むようになったが、しまいには神通力を得て、雲を起こし、雨を呼び、空を飛べるまでになった。村に葬式があると必ず雨を降らせ、黒雲をおこらせて棺桶を奪った。あまりの悪行に困り果てた村人の頼みで越知山にいた浄定行者が四匹の猫を山から追い出し、二度と暴れないように北竜ヶ馬場の四塚に封じ込めた。