泊まり山の大猫

 『北越雪譜』(鈴木牧之)には「泊まり山の大猫」と題して、次のような内容で語られている。

 『飯士山の東に阿弥陀峯(あみだぼう)という山がある。昔、百姓たちは雪の少なくなる頃にこの山に入り、小屋を作って寝泊まりし、木を切って薪を生産した。村人はこれを「泊まり山」と呼んでいた。この薪は積んで乾かし、雪が消えると牛馬で家へ運んだ。
この山には水がなかった。人々は樽を背負って、垂れ下がった藤づるを伝わって、谷川まで水をくみに行った。
ある時、七人の若者が、この泊まり山に薪作りをしていた。すると近くで、山あいに響きわたるような、大きな猫の鳴き声が聞こえてきた。驚いた若者たちは小屋に集まり、手に手に斧や鎌を持って襲撃に備えていたが、ついに姿を見せなかった。後でその場所へ行って見ると、雪の上に丸盆のような大きな足跡があったという。』

 丸盆ほどの大きさの足跡ならば虎よりも大きな猫だったようだ。大猫が「ニャオーッ」では恐ろしげがないので、やはり鳴き声は「ギャオーッ」だったのだろうか?