猫多羅天女(みょうたらてんにょ)の事
 鳥翠台北茎の『北国奇談巡杖記』(文化4年〈1807〉刊)巻三「猫多羅天女の事」によると、「ある夏の夕方、佐渡国雑多(さわた)郡小沢の老婆がひとり涼んでいた。すると一匹の老猫があらわれ砂の上でころがってたわむれはじめた。老婆もつられて猫と遊ぶこと数日、そのうちに体が軽くなり、やがて全身に毛が生えてついに飛行自在の妖術を得た。形相もすさまじく、見る人肝をつぶし驚くうち、猫となった老婆は雷鳴をとどろかせて対岸の越後国・弥彦山に飛び移り、霊威をふるって大雨を数日降らせた。里人は困り、これを鎮めて猫多羅天女とあがめた。年に一度、猫多羅天女が佐渡にわたる日には、ひどい雷鳴があるという」とある。

 この「猫多羅天女」は、弥彦神社の隣の宝光院の中に祀られているが、ここでは「妙多羅天女」となっており、縁起も大分違っている。