BOOK REVIEW 6 

冷静と情熱のあいだ Blu & Rosso

辻 仁成、江國香織
角川文庫/2001.9.25初版発行
本体価格¥457(税別) ×2冊

〈あらすじより〉
あのとき交わした、たわいもない約束。
十年たった今、君はまだ覚えているだろうか。
穏やかな恋人と一緒に暮らす、静かで満ち足りた日々。
これが私の本当の姿なのだろうか。
切ない愛の軌跡を男性の視点から描く、青の物語。
永遠に忘れられない恋を女性の視点から綴る、赤の物語。

 
政治家やめます。
とってもナルちゃん、辻仁成。

弥次:今回のレビューはひと言で終わっちゃうんだけど。
喜多:どんな風に?
弥次:「クッサー」てな感じ。
喜多:でも売れてるぞ。映画もサントラも。
弥次:そうなんだよな、こういうクサさ
が若い娘のハートをとらえるんだろうな。
喜多:大人の男が読むには面白くないんだ。
弥次:失った恋、若き日の情熱、フィレンツェ、ミラノ、10年前の約束…。これだけ聞けば大体内容がわかるだろ。
喜多:わかる気がする。小説も映画も竹野内豊効果で売れてるんだろ。
弥次:こんな小説みたいな話、ゼッタイないよというストーリーだけど、そこが逆に魅力なんだろうな。わざわざ買うまでのことはない本だ。図書館で借りた方がいいな。
喜多:でも、オマエさんは買ったんだろ。
弥次:古本屋で定価の半額で買ったよ。だからあんまり損した気にはなってないな。
喜多:青い方は男の立場から、赤い方は女の立場から同じ話を書いてるんだろ?
弥次:意欲的な試みではあるな。作家の方は楽しく挑戦しがいのある仕事だったろうな。その点は認めるよ。
喜多:でも、面白くなかった。
弥次:うーん、正確に言うと、辻仁成の書いた青い方は面白くなかった。クサすぎて体が痒くなるほどだ。大体、辻仁成の作品は必ず自分をモデルにした登場人物が、主役級でナルシスティックに出てくる。
喜多:でも、オマエさん辻仁成の本はよく読んでるじゃないか。
弥次:ギクッ!
喜多:それに彼が参加していたロックバンド「エコーズ」のCDも全部持ってるじゃねえか。
弥次:ギクッ、ギクッ!
喜多:それに、昔、コンサートにも行ったらしいじゃねえか。
弥次:ギクッ、ギクッ、ギクッ! すまん、若気の至りだ。

ないものねだりが面白い。
弥次:青い方については、まあそんなところで。
喜多:やけにおよび腰だな。
弥次:そんなことないぞ。
喜多:辻仁成の作品は、自分の中のナルシスティックなところをさらけ出しているから、読んでいる最中は、その世界に酔えるんだろうな。ただ、読み終わった後、そんな世界に酔っていた自分を認めたくないから批判する。だから、男性や男性的な考え方をする女性には辻作品は評判が悪いんだろうな。
弥次:やけに今年は論理的で。
喜多:で、江國版の方はどうなんだ?
弥次:自分にない女性的な視点、思考で書かれているから興味深かったよ。
喜多:面白かったということか?
弥次:英語で言うinterestingだな。ストーリーは面白くないが、最後まで飽きずに読めたよ。この作品は男性は江國版の方が面白くて、女性は辻版の方が面白いと感じるんじゃないかな。
喜多:自分が知らない世界だから、「そんなアホな」と突っ込まずに読めるから?
弥次:That's right!
喜多:なるほどな。
弥次:ひとつだけ心残りなのは、オイラは辻版の青から読んだけど、江國版の赤から読むと、どういう風に感じるのという点

喜多:みんなはどちらから読むんだろう?
弥次:青から読むことを想定して書かれている気がするんだけど、それはオイラが男だからかなあ。
喜多:赤から読んでも話はわかる?
弥次:わかりにくい部分があるような気はする。
喜多:これから読もうと思っている人は、ぜひ江國版から読んで感想を聞かせて欲しいね。
弥次:That's right!
02.1.11 (C)YAJIKITA NET
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