弥次:オールスターゲームって見たかい?
喜多:野球? それともサッカー?
弥次:どっちでもかまわないけど。
喜多:野球は、ここ何年かはほとんど観てないな。
弥次:なぜだい?
喜多:そりゃおまえさん、あんまり面白くないからさ。
弥次:どうしてだい?
喜多:さてね。真剣勝負じゃないからだろう。
弥次:サッカーはどうだい。
喜多:観てるけど大して面白くないな。今年は少し面白かったけどな。
弥次:どうして、面白くないんだろうな。
喜多:そりゃおまえさん、真剣勝負じゃなくてお祭りだからだろ。野球のオールスターなんて第3戦まであって、テレビをつけたらたまたまやってて、「ああ、まだやってたんだ」って思ったぐらいだもんな。余計なゲストや演出過多も興ざめだな。
弥次:そんな感じなんだよ。
喜多:何が?
弥次:宮部みゆきの新刊「A.T.M」…
喜多:(すかさず)ムダボケ禁止!
弥次:すまん。「R.P.G.」。
喜多:「模倣犯」に便乗して売ろうとしてるね。よっ!集英社。
弥次:文庫書き下ろしの新作だそうだ。
喜多:その「A.R.B」と…
弥次:おまえさんまでボケてどうするんだ。
喜多:すまん。「R.P.G.」とオールスターゲームとどういう関係があるんだ?
弥次:ネタバレになるけど、過去の宮部作品の主要な登場人物が、この小説でも出てくるんだよ。
喜多:なーんだ、そういうことか。よくあることじゃないか。
弥次:よくある?
喜多:シャーロック・ホームズもミス・マープルも金田一耕助も、ミステリーなら同じ人物がいくつも事件を解決するぞ。
弥次:いやいや、名探偵シリーズとは違うだろ。
喜多:高村薫の「マークスの山」から「照柿」「レディー・ジョーカー」にだって、名探偵じゃないけど合田刑事はずっと出てるぞ。出てくるたびに同一人物とは思えない描写が多くて、だんだんやおい系になるけどな。
弥次:ちょっと違うんだな。この「R.P.G.」では、過去にベストセラーになった「クロスファイア」と「模倣犯」に登場した主要人物が共演してるんだよ。
喜多:それでオールスターゲームか。
弥次:オールスターゲームって、ひとりひとりのスター選手は目立つけど、試合自体は大したことない気がしないか? 中には手を抜いてそうな選手だっているじゃないか。
喜多:まあな。
弥次:この小説も、読み始めると「おっ、こんな人が」「あっ、こんな人が」「おお、あの人の話題も」と、過去の小説のイメージがひろがって得した気分になるんだ。だけど、ちょっと待てよ、それは読者サービスの振りをした作者の怠慢なんじゃないかって気がする。
喜多:で、このオールスターゲームは凡戦だったのか?
弥次:うーん。期待ワクワクで見に行ったけど、肩すかしをくらった「マジンガーZ 対 ゲッターロボ」みたいな感じかな。
喜多:わかりにくい例えだなあ。
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