003 『弟を殺した彼と、僕』原田正治/ポプラ社 
自分がもし家族を殺されたら、その加害者を死刑にしたいと思うか。当然、死刑にしたいと答える。この著者も家族を殺され、当初はその加害者を死刑にしたいと憎んだ。しかし、時が経つに連れ、死刑にならずに償い続けて欲しいと考えるようになった。その心境は、我々部外者に理解はできる。しかし、わからない。この本は、なんて奥が深く考えさせられる本なんだ…と思ってたら、この著者、死刑廃止の市民運動に関わり、奥さんとは離婚、家庭は崩壊。あらら。オイラの持論、「市民運動は宗教だ!」。主義者ってほら、宗教にはまってる人に似てるじゃないですか。自分の家庭ひとつ守れない人が、己の主義主張を守れるというのか。自分の家庭ひとつ是正できない人が、国や社会を是正できるというのか。“私はこうしてイエスの教えに目覚めた”的な本が好きな人におすすめ!
2005.5.27

002 『半島を出よ(上・下)』村上龍/幻冬社  
「えーと、下巻の残り1/4から面白くなります!」って、それは面白くないと同じか。世界情勢、政治、経済、軍事、作者が一生懸命学んだことすべてを披露したいがため、小説としてのリズムや奥行きが失われている。北朝鮮という、身近なようで遠い。遠いようで身近だが、よくわからない国の人物がたくさん登場するため、読んでいても上手くイメージ化できない。それは読者の知識量のなさか? 圧倒的な破壊を書かせたら右に出る者のいない村上龍。世界を破壊するのは得意だが、世界を構築するのは苦手。飲み屋で彼女や部下に、アジア情勢を知ってるつもりしたい人におすすめ!
2005.4.22

001 『となり町戦争』三崎亜記/集英社 
書店や書評では好評のようだが、中身の薄さ=作者の言いたいことの薄さに萎える。今、最も気になる言葉のひとつ『戦争』をアイコンにしているため、手に取る人も多いだろうが、戦争については何も書かれていない。書いていなくても、フツー、小説とは行間から感じられるものだが、それがない。つまり、作者にも戦争についての具体的イメージや主張はないんだろうな。なんとなく戦争、なんとなく恋愛小説、なんとなく自分探し。のこのこイラクに出掛けていって人質になりたい人におすすめ!
2005.4.22

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