My favourite scores
 

Liszt 3 Notturnos "Liebestraume"
リスト 3つの夜想曲《愛の夢》 全音

 リストの「愛の夢」全3曲の楽譜自体は珍しいものではない。ほとんど演奏される事のない第1曲、第2曲も楽譜は様々なエディションが存在し入手出来る。しかしどれだけの人が原曲の歌曲の楽譜、更にその歌詞を読んだ事があるであろうか。2008年に刊行されたこの全音版では歌詞の全訳に加え、詳細な校訂、演奏への助言、今まで出版された「原典版」への批判とまさに「愛の夢」の決定版とも言える楽譜である。一つ残念な事は原曲の歌曲版の楽譜が第3曲しか収録されていないことであり、出来れば第1曲、第2曲の歌曲楽譜も収録して欲しいものである。
 最も演奏される機会の多い第3曲、「愛の夢第3番」の解説及び歌曲版の楽譜は演奏者必読の内容である。歌詞、そしてゲッレリヒによるリスト本人のレッスン内容の報告を読むと恐らく大半の人が「愛の夢第3番」のイメージを変えざる得ないであろう。本来歌詞は皮肉を込めた内容であり、リスト自身がこの作品に対して「軽はずみ」「軽率」「道化芝居」と語ったとは想像も出来ないのではないだろうか。
 必ずしも作者が最も良い解釈者である訳ではないし、一旦作品として作者の手を離れたならばどのように解釈されても構わないだろう。しかしリスト本人のイメージを知っておくことは無駄ではなかろう。「詩の内容を理解して演奏すると、また楽しさが増すだろう」と校訂者の野本由紀夫氏は書いている。「愛の夢第3番」のような「通俗名曲」こそこのような解説の充実したエディションが求められると思う。

My favourite scores

Music index

Home