クロード・エルフェ
Claude Helffer
(1922-2004)
    現代もののスペシャリスト、フランスのピアニスト、クロード・エルフェについて。
 現代もののスペシャリストと書いたが、本当はそういう訳でもなくベートーヴェン、アルベニス、ドビュッシー、バルトークが最も得意だそうだ(世間ではベートーヴェン以外は現代音楽かもしれないが)。とはいえ、現代音楽に感心のあるピアノ弾きには超有名人であることには間違いない。エルフェに捧げられた曲もアンリ・ディティユー、ベッツィー・ジョラスをはじめ数多い。クセナキスからの信頼も厚くピアノと弦楽器の作品集のピアノ曲、伴奏はエルフェを指名したというほどである(残念ながら演奏のほうは少々いい加減であるが)。

 実際にあって感じたのはなんとも洒脱なフランス紳士であり、決して自身のダンディズムを崩さぬ人であった。必ず夕方散歩に出るのであるが雨が降っていても決して傘はささず、それがフランス流といって聞かず、関係者を冷や冷やさせた。
(写真は神戸でのリサイタルの後のパーティでの一席)

 私は大学卒業後すぐにエルフェのレッスンを受けたことがあるが、とにかく、元気というか、激しいというか、本当にすごい演奏をする老人である。クセナキスの「ヘルマ」の譜捲りをさせてもらったが、あまりの速さについて行けないほどだった。実際のところ演奏家としてのエルフェは絶頂期を過ぎかなり怪しい演奏ではあったのであるがブーレーズ、シュトックハウゼン、ベリオ、クセナキス、ブークリシュリエフ、ジョラス等の現代作品では否応無く聴く者の胸座をつかんで引き寄せるようなカリスマでったことには異論はないだろう。いかなる現代音楽でも歌えれば弾けるという説を持っておりクセナキスやブーレーズを歌いながら弾きまくる姿はなかなか壮絶なものがあった。
 エルフェのリハーサル中、ホールの外で聴いていたがハノンに始まり、バッハ、ベートーヴェン、ショパン、バルトーク等をどんどん弾いていくのも興味深い。確かポリーニやアムランのリハーサルも全然関係ない曲を弾きまくったというが、エルフェもそれにもれず関係ない曲ばかり弾いていた。
 最近は現代音楽に興味を持つ人が増えてきたと喜んでおられたが、現実にはまだまだだというのが本当のところであろう。エルフェの「私にとってベートーヴェンやブーレーズは同じ音楽であるだけです。まじめに練習すれば必ず弾けるようになる。」という言葉は忘れられない言葉である。
 

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