ウィリアム・カペル
Willam Kapell
(1922-1953)
   私がはじめてカペルの演奏に接したのは高校3年の頃RCAから復刻されたハチャトゥリアンのピアノ協奏曲とショパンの作品集だった。当時、ハイフェッツにはまっていてRCAの復刻でヴィエニャフスキの2番の協奏曲を購入した際一緒に買ったのがカペルのハチャトゥリアンであった。まったくなんの知識もなく買ったのだが一緒にカップリングされていたプロコフィエフの第3協奏曲、リストのメフィストワルツを1回聴いただけですっかりカペルにはまってしまい、すぐにハチャトゥリアンとプロコフィエフの楽譜を買いに走った覚えがある。メフィストワルツもコーダをブゾーニ版で演奏しているのだが、当時はそんなものが存在することすらしらずカペルによるコーダだとすっかり思いこんでいた。それからは中古レコード屋に行くと必ず探す名前にカペルが入り、2、3枚見つけて買ったがどれも非常に高かったと記憶している。しかし、当時CDになっていなかったベートーヴェンの第2協奏曲やラフマニノフのパガニーニラプソディはレコードが傷つかないようにテープにおとして何回も聴いた演奏だった。その後カペルのライヴ盤のCDが出て、つい最近RCAからカペルの集大成が出たため手軽にCDで聴けるようになったのは嬉しいが、かつて中古レコード屋を探して歩いていた頃を思い出すとなんだか、複雑な気持ちである。
 カペルのレパートリーは割に広く当時のアメリカの現代作品も録音している。ショスタコーヴィチやコープランドの作品や左のLPではパーマーの「トッカータ・オスティナート」を演奏している。ほかにもアルベニスのイベリアなどがレパートリーに入っていたという。
 カペルについては昔からリパッティと並んで「夭折の天才」というイメージがついてまわる(リパッティは白血病、カペルは飛行機事故)。カペルの魅力はなんといっても健康的なピアノを鳴らしきる技量であろう。ハチャトゥリアンの協奏曲でバリバリ鳴らされるピアノを聴いたときの戦慄は、ホロヴィッツをはじめて聴いたときを思い出させる。事実カペルは第2のホロヴィッツといわれていたそうだが、ホロヴィッツよりも現代的な「若い」演奏に感じられた。メフィストワルツのゆっくりとした部分の歌いまわしいも十分で、ショパンのソナタ3番の1楽章のロマンティックな表現はまさにカペル節ではないだろうか。RCAの集成に収録されたバッハやモーツァルトでも端正でありながら決して曇りのないピアニズムを聴くことが出来る。ライヴの音質の悪い録音にもかかわらずラフマニノフの第3協奏曲の演奏はものすごい炸裂を見せている。今や古いピアニストであるがやはり20世紀の重要なピアニストの一人であったと私は思っている。手軽にカペルが聴ける時代になって嬉しいが、やはりレコード屋を回った私としてはなんだか複雑な気分である。  

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