ウラディミール・アシュケナージ |
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アシュケナージとオグドン。ともに1962年チャイコフスキーコンクールにで同時1位を分かち合い、その後明と暗に分かれた感のある二人である。
ピアノの初学者や音大生に人気のあるアシュケナージだが、ピアノのマニア方面では全然人気がない。まぁ確かに最近の彼の演奏(特にショパン全集以降)はなにやら開き直ったようなふてぶてしさが感じられて私も決して好きではないのだが、彼のレパートリーの膨大さとライブでたまに見せる凄い演奏があるという事は評価されてもいいのではないだろうか。例えば一回目のベートーヴェンの「ハンマークラヴィア」。若々しい溌剌とした演奏で昔よく聴いたものだった。リスト作品集、ショパン練習曲のメロディア録音、リャードフ、ボロディン、タネイエフといった録音も決して悪いものではないと思う。1回目のラフマニノフのピアノ協奏曲3番も今とはまったく違う演奏だった。またラフマニノフの「コレルリ変奏曲」も今なお名盤として聴かれるに値する演奏であろう。またアンドレ・プレヴィンのピアノ協奏曲はアシュケナージに捧げられており初演、録音も行っている。 |
一方ジョン・オグドンを語るとき絶えず付きまとうのは冒頭でもあげた1962年チャイコフスキーコンクールにおけるアシュケナージと一位を分け合ったという言葉であろう。アシュケナージがその後クラシックの表舞台を「正統的」に歩んで行くのに対してオグドンは精神を病み、それでもなおアルカン、ブゾーニ、シェーンベルグ、メシアン、スティーブンソン、ソラブジといった複雑にして超絶技巧を要する作品に取り組み、1988年ソラブジの大作「Opus
Clavicembalisticum」の演奏、録音を行い翌年肺炎のため急逝した。その後の録音予定にはソラブジの「100の超絶技巧練習曲」が入っていたという。ブゾーニの大作「ピアノ協奏曲」で国際的評価を得、ソラブジに行きついたその人生は何やらアシュケナージと反対の道を辿っていったオグドンらしく、興味深い。また自身も作曲もこなし「ソナタ」や「ピアノ協奏曲」の演奏、録音もある。 アシュケナージとオグドン。この相反するような二人であるが実際のところは仲がよかったようでオグドンは自作の「変奏曲」をアシュケナージに捧げている。現在アシュケナージは「オグドン協会」に支援を行っているということである。 |
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