ポール・ジェイコブズ
Paul Jacobs
(1930 - 1983)
   以前Sony Classicalからバースタインの古い録音がCD化された際リゲティやフェルドマンといったバーンスタインには珍しいレパートリーの作品集がでて結構話題になった。その中でメシアンの「神の現存のための3つの小典礼」でピアノパートを弾いていたのがポール・ジェイコブズである。ジェイコブズはニューヨーク・フィルのピアノ奏者であったから弾いていても当然なのだがメシアンの神秘的な作品の中でも独特の清潔なピアノを披露している。私がはじめてジェイコブズの演奏を聴いたのはノンサッチのドビュッシー「前奏曲集」の録音であった。その演奏は色彩的なドビュッシーではなく、なんとも清潔な少し涼しげな演奏でそれまでのドビュッシー像とは全然違い一時よく聴いたものだった。ノンサッチから出ていたジェイコブズの録音は以後中古レコード屋でのチェック項目に入り集めていったが現在はほとんどがCD化されているようである。
 現代ものが得意な人だけあってやはりバルトーク、ストラヴィンスキー、メシアンの演奏はすばらしい。またブゾーニのソナチネ全集も肥大したロマン派のブゾーニではなく洗練された近代的なブゾーニ像を描いている。私が中でも好きなレコードは20世紀のピアノ音楽集「ピアノのためのブルース、バラード、ラグ」である。ウィリアム・ボルコム「3つのゴースト・ラグ」、アーロン・コープランド「4つのピアノ・ブルース」、フリデリック・ジェフスキ「ノース・アメリカン・バラード」とジャズ系クラシックの好きな人にはたまらない曲目である。ジェイコブズのアルバムは選曲のセンスも絶妙である。先のバルトーク、ストラヴィンスキー、メシアンは20世紀の練習曲のアルバムである。
 残念ながらジェイコブズは53歳の若さで夭逝する。死因は確かエイズではなかったろうか。
 

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