高橋アキ
Aki Takahashi
   私が高橋アキさんの演奏を初めて聴いたのは高校3 年の頃だったろうか。それまで現代音楽はなんとなく聴いてたが、せいぜいメシアンぐらいで他によく聴いていたのはリゲティ(「2001年宇宙の旅」のサントラ)ぐらいだった。大阪の某中古レコード屋で3枚組の「高橋アキの世界」を見つけたときも曲目を見て「現代音楽ばっかりだな」と思ったのだがなぜか買ってしまった。どうしてこのレコードを買ったのか当時の心境は覚えてないが初めて針を落としたその時の衝撃は相当大きかったことは覚えている。それは、それまで私が抱いてきた現代音楽のイメージ「汚い(和音がね)、暗い、怖い」の3Kをまったく覆す演奏だったからだ。中でも湯浅譲二の「オン・ザ・キーボード」や一柳慧の「ピアノ・メディア」、シュットクハウゼンの「ピアノ曲11番」ブーレーズの「ソナタ1番」などの演奏は目の覚めるような鮮やかなテクニックと明確な輪郭で少しも難解なところはなく、「現代音楽って楽しい」と開眼した瞬間だった。以来高橋アキさんのレコード、CDは見つけるたびに買っているが、残念ながらあまり多くはCD化されていないようだ(現在ではかなりCD化されたものの市場に出回った数は少ないようである)。
  高橋アキさんの魅力は、どんなに音が錯綜する個所でもペダルで濁したりしない明快さにあるだろう。。これはブーレーズやクセナキスの「ヘルマ」で生かされている。そして、武満作品やヴェーベルンの「変奏曲」では過剰に感情的にならず、少し醒めたようなそれでいて柔らかな印象の、高橋アキさん独特の世界を聴くことが出来る。数年前、大阪でベリオの「セクエンツァ4」を聴いたときもやはり同じ印象を受けた。右のレコードでは甲斐説宗の「ピアノのための音楽」の演奏が収録されている。楽譜に書かれた最後の壮絶な特殊奏法の嵐を見事に演奏しているのだが、そこには不確定性を超えた必然性を感じさせるほどの揺るぎない音が出ている。それはケージの作品などでも発揮されている。
 そして、最大の魅力は高橋アキさんが誰にも似ていないことだろう。クセナキスやブーレーズのような比較的録音数の多い作品で聴き比べて見ればわかるが、高橋アキさんの音は誰にも似ていず最も説得力を持っている。「わかりやすい現代音楽」というと変だが、高橋アキさんの弾く作品を私は一度も「わからない」と思ったことはない。
 ぜひ、多くの人に高橋アキさんの演奏を聴いてもらいたい。

 なお本HPのタイトルは高橋アキさんのレコード「高橋アキの世界 Piano Space」からとらしていただいてます。

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