ああ爆弾

1968

監督・脚本

  岡本喜八
製作
  田中友幸
原作
  コーレル・ウールリッチ
音楽
  佐藤勝
出演
 

伊藤雄之助
砂塚秀夫

越路吹雪
中谷一郎
天本英世

 


 

 岡本喜八監督によるハチャメチャミュージカル喜劇の傑作。なんといってもこの作品の見所は狂言舞台の如き監獄の中での伊藤雄之助と砂塚秀夫の立ち回りに始まる種々雑多、ありとあらゆる音楽を使いまくる佐藤勝のサントラに尽きるであろう。ストーリーは獄中のヤクザの親分(伊藤雄之助)と爆弾の犯人(砂塚秀夫)が出所するところから始まる。出所したもののどうも勝手が違う、組に帰ればすっかり企業化しており違う社長までいる始末、自分の居場所も無く、やけくそになった伊藤雄之助と砂塚秀夫が「ボールペン爆弾」で社長を木っ端微塵に企てるという支離滅裂な話である。しかも全編ミュージカル調のノリで進められ見ているものはどこまで本気なのかよくわからないという問題作である。更にこの作品、併映が勅使河原宏の「砂の女」一体当時の聴衆はどのように受け取ったのであろうか?
 とはいえ、今では「鴛鴦歌合戦」と並ぶ堂々たる和製ミュージカルのカルトと化している作品である。確かに見ごたえは十分であろう。私自身初見の際のショックが大きく続けて3度見たほどであった。

 主演の伊藤雄之助がとにかく素晴らしい。川島雄三の「しとやかな獣」、増村保造の「巨人と玩具」でのカメラマン、鈴木清順の「関東無宿」と画面に出るだけで強烈な印象を残す俳優だがこの作品の演技は完全にイっている。そしてそれをサポートする砂塚秀夫も秀逸である。砂塚秀夫はやはり岡本作品「殺人狂時代」で仲代達矢とともに天本英世に立ち向かうのだが、とにかくエキセントリックな爆弾犯を度のきついメガネをかけての熱演である。ラストシーン、爆発した車から飛び落ちて来て「間にあったぁ〜」の一言、画面奥へ地平線へと狂言風のサントラをバックに歩いていくシーンは感動すら覚える名シーンである。

 岡本喜八は東宝では実に多彩な作品を撮り上げていた。その中でも本作品は異色中の異色作であろう(勿論「ブルークリスマス」という違う意味での異色作もあるにはあるが)。

 

 


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