クリープショー

1982

監督

  ジョージ・A・ロメロ
製作
  リチャード・P・ルビンシュタイン
脚本
  スティーヴン・キング
出演
 

エド・ハリス
ジョン・ローマー
レスリー・ニールセン

スティーヴン・キング

E.G.マーシャル

ジョー・キング
トム・サビーニ

     
 

 私が小学生の頃テレビのCMで突然ゴキブリが大写しになった。女性の声で「見に来てね」と言うや否や白手袋が搏殺する・・・。虫嫌いの私はゾッとしたが、それが本作「クリープショー」のテレビCMであった。今では考えられないCMだ。

 オムニバスホラーの本作はなんといってもCMにもなった第5話のゴキブリ大逆襲のグロテスクさ、悪趣味度の高さに目がいってしまうが改めて見直すと80年代に量産されたホラー映画の中でも傑作の一つである。
 私は映画館では見ていないが中学生になってレンタルビデオ見た。その時は勿論ホラー映画、怖い映画と思って見ていたが第5話の生理的嫌悪を除けばそんなに怖い映画ではなく、第2話のキングの怪演も手伝ってバカな映画という印象すら持った。村上春樹の「‘THE SCRAP’―懐かしの1980年代」の中で本作について恐怖を追及すると案外怖くない、といった記述もあり更にその感想を強めたのであった。
 しかし改めて見ると本作は「怖い映画」を目指しておらず、50年代の「E.Cコミック」へのオマージュである事がわかる。「E.Cコミック」は俗悪、扇情的な作風で非難され子供が読んではいけない「悪書」とされたホラー、犯罪を扱ったコミックである。ホラー作家キングは己の原点とも云うべき「E.Cコミック」に本作を捧げたのである。そう思って見ると第5話も如何にも子供の好きそうなゴキブリの逆襲という内容である。
 ロメロの演出もそのマンガチックな手法が冴えており同じくアメリカンコミックを映像的に再現した「ディック・トレイシー」よりも成功していると思う。ロメロは「ゾンビ」が代表作だが政治的な暗喩を含む「ゾンビ」よりも本作の方が伸び伸びとしている。

 出演者も「裸の銃を持つ男」でブレークする前のレスリー・ニールセンの「真面目」な演技やキングの「アホ」な演技、果てはキングの実子、トム・サビーニまでが見られる。特筆すべきはやはり第5話のE.C.マーシャルで、単身ゴキブリの大群と奮戦している。初見の際「役者は大変だなぁ」と思ったものである。公開時のパンフレットによるとマーシャルの上にゴキブリを這わせないという契約であったという。掲載されているシーンもよく見ると作りもののゴキブリである。しかしマーシャルは現場でゴキブリを見ると「私はニューヨークの人間だよ。ゴキブリなんかそこら中にいるさ!」と言ったという。なんせ3万匹も集めたというゴキブリ軍団は有無を言わせぬグロテスクさである。そのゴキブリ達は撮影後毒ガスで処理されという。少し可愛そうな気もする。

 傑作には間違いないが問題の第5話のおかげで「試聴要注意」であるのが残念な作品である。

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