斑女

1961

監督

  中村登
製作
  深沢猛
原作
  村松梢風
脚色
  権藤利英
出演
 

岡田茉莉子

山村聰

佐々木功
芳村真理

 

 村松梢風の原作を中村登が映像化した松竹メロドラマの一編。岡田茉莉子と佐々木功の駆け落ちに始まり画家山村聰が絡みホステスとなった岡田茉莉子を中心に様々な人間模様が描かれる。物語は少々逸脱しがちだが昭和30年代の「古くて新しい」東京を舞台としている点でも貴重な作品といえよう。映画冒頭山村聰が当時出来たばかりの東京タワーを描くシーンはまさに象徴的なシーンである。
 オープニングは和田誠のイラストに谷川俊太郎作詞、武満徹作曲と最強ともいえるトリオで作られている。主題歌「恋のかくれんぼ」は現在合唱曲として聴く事が出来るがオリジナルの本作品では軽妙洒脱なアレンジでペギー葉山の歌唱も印象的である。

 当HPでは初登場の中村登監督であるが実は私はかなり好きな監督の一人である。おそらく「修繕寺物語」や「紀ノ川」「古都」などで有名な監督であろうがその手堅い演出、ゆっくりと移動するカメラワークの素晴らしさなどは松竹で数多く取られたメロドラマでも如何なく発揮されている。


 私が中村登の作品に興味を覚えたのは武満徹が多くサントラを手がけているからである。しかしその多くはビデオ、DVD化されておらず音源を聴くのみであった。本作の「恋のかくれんぼ」も合唱曲でしか聴いた事がなく是非オリジナルを聴いてみたい作品であった。図らずも2002年の中村登回顧上映で武満の実質の映画音楽一人立ちである「朱と緑」や「河口」「波の塔」などを見て中村登の作品に魅了されたのであった。その大半が松竹メロドラマプログラムピクチャーであるが中村登の手腕は素晴らしく心酔したものである。後に「ニコニコ大会」というオムニバス喜劇を見たが中村登とともに川島雄三もメガホンをとっていた。戦後映画全盛期の極めて高技術の職人監督の一人であったのあろう。要再評価監督の一人であると思う。

 

山村聰、東京タワー、岡田茉莉子

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