女は二度生まれる

1961

監督

  川島雄三
製作
  川崎治雄
原作
  富田常雄
脚本
  井手俊郎
川島雄三
出演
 

若尾文子

フランキー堺
山村聰
山茶花究
山岡久乃
江波杏子

 

 

 川島雄三、若尾文子コンビによる第1作。製作に際し川島は大映首脳陣に「若尾を女にしてみせる」と言ったと云う。その言葉どおり若尾文子の魅力を存分に引き出し、可愛らしくいじらしい芸者「小えん」を明るく描き出した。以後「雁の寺」「しとやかな獣」と川島、若尾コンビは映画史に残る傑作を作り上げてゆく。

 小えんと様々な男たちとの情事を通じ、小えんの心理を描き出す手腕は川島雄三の面目躍如たる所でフランキー堺、山村聰、山茶花究といった個性的な男性陣とのやり取りも面白い。山村聰がいそいそとエプロン姿ですき焼きを準備するシーンはいかにも川島雄三らしく笑いを禁じえないであろう。

 冒頭山村聰と布団の上で話す若尾文子に時刻を知らせる靖国神社の太鼓が轟く。また他のシーンでも靖国神社の太鼓が大砲の如く鳴り響く。この描写は川島の反戦思想を反映していると言われるが私はそれと共に小えんを束縛するもの、ひとつは「性」そして「時間」を暗示しているように思う。
 映画終盤で若尾は男たちを失いそして故郷へと赴く。同伴した少年と別れ駅舎でひとり座る若尾。先ほどまであれほど観光客で賑わっていた駅はバスが出て、静寂の中にある。腕時計で時刻表を確認しようとすると、時計は少年にやってしまった事を思い出す。「性」も「時間」ももはや彼女を束縛していない。その時彼女は本当に一人である。人間の孤独感、疎外感を軽く描き出す川島雄三の忘れがたいシーンである。

 

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