「乱髪〜Rum-Parts

全作品収録

(2000.2.5)


DIRTY DANDY


春よ!冬を滅ぼした勢いで俺の驕慢を囓ってみよ

堅実は怯の様式 斥けて一気ばらまく梅桃杏

異端道二段にあれば大空の羽目のはずれの曙光選るべし

貴下に問う朝陽ななめの淋しさを顔を洗って励ましうるか

乱髪は東国ひがしの意匠 偏狭に際立たせけり俺の囲繞を

敗け蛙死ぬなよ高温多湿午後手向け一首のそそり立つまで

高空がぐひと割れたる失調に荒々しきまま歌結ばんと

刃に切ればいささか青き血を噴くか雅び男俺の途中経過も

俺は文句を言わなかっただからと言って副詞ではないぞ

刀術は断言に似る きょうきょうと夜に割り込むdandyの振り


DIRTY DATA


「閉じよ胡麻」「開け胡麻」とは言わざるも俺には俺のcode decode

冬に接ぐ春は早熟 おお転瞬 一斉放水の白木蓮なり

ああ身性みじょう!白木蓮の驕羞とそれに耐えざるわが網膜と

青葉ども勇気と夢と憧れの傾くまでの「きらり」を生きよ

直覚は研がれて痩せて細ければさて然るべし情熱の補佐

藤垂れて胸奥微部きょうおうびぶに風沁みてわが劣性の遺伝子揺らぐ

空は紫紺特異性こそ浮上せよそこばく夢のある世界ゆえ

しょぼくれんじゃねえ勝利の女神いやさ貧乏神がほほえまねえそれだけのことで

肩口に枝垂れ桜の緑りょくながれ認めてしまえ!奴の強運

かの人のボンジュウルはや錆び湧きて悲壮無双の徒桜なる

引き合いて宙に番わん二魂ふただまの離れ離れに眠る今宵や

時は春紫爪むらさきづめに引き裂きし恋慕に似たる不機嫌ひとつ

雲消えて相対死あいたいじには成り立たずさても白きは予の蹄かな

直線の竹の匂いは突き上がり汚ねえ空を少し鎮めぬ

朱の燕低く飛ぶのだぞ低くだぞ羽を朱にして夕を飛ぶのだぞ

修羅鳥は貴なる異常値dirty data空の阿呆海の阿呆にも染まずただ酔う


DIRTY POESY


暮れ残る男心の残塁や見よう見まねに八分了えたる

剥き出しの悲傷に風が沁みるゆえ有明の脳を固く巻き直す

諦念わりきりは小池光の呼気のルビ 咽喉の形に溜飲赤し

寸鉄の寸を帯びつつ憧れん大荒神おおあらがみの旬の斬り技

鼻柱に水当ててみる 倣岸を冷やして何が生まれるものか

キャンバスが俺に嘆けというからに朱をうすめゆく海星の色まで

優腕は無聊でならず夏月の端のこぼれを研ぎ直すかな

右左 方から先に俺はなく 正面遠く滝陸離たる

風媒の植物殖えよ切れ切れに分かたれてしまった過去の慰謝までに

悲しみが自重じじゅうで沈む君は泣く何と妙齢の白雲だろう

見送りし夢の数数その中に春に喪くせる完熟の恋

微生物よわたしの短歌はよい短歌意味なく意図なく浮遊あるのみ

払暁ぞ 穂孕むものの緑いろそれの淡さに目つむるもよし

海平らか余人はしらずこの仁は劇の不在を悲しむばかり

海際も晴れて曇れる行き掛かり詩歌は凛個乎アブストラクト

剃刀に蚊の脚裂かん細心はつねづね俺の禍となる


沈  思


遠巻きの誹謗の青が切なくて海にわが躯の柱を倒す

冴えすぎて裂けたる星の実在は傍証もなく消えてうせたる

わが腕わんは抗いに遇い疲れけり初夏の女神じょしんを倒し切れずに

剛刀をわが負う夢のうら枯れし朝に啖える銀の茶漬けぞ

おそるおそる名札をつけていたりける幼年の日の胸の花火や

俺の願俺の気合を霧と吹く真白の雲は組みつほつれつ

わたくしの膝ほどにある生き物も眼をみひらきて海にみとれつ

川筋のうねりの形の愛情はついに誰にも与えられざる

伊達好きの直線好きのかなしみを電ぶっ切れし闇に思えよ

夏帝なつていの雷の切れ味見果てたる昧爽までの俺の沈思や


男 度 胸


Shading
 techniqueなど持つまいよ灰色嫌えの自在天目

のっぺりと陽がぶらさがるやむを得まい眉吊る者は死に絶えに絶え

せめて下の下の下の歌を焙るより今荒男いまあらしおの益体はなし

読了せり毒毒しくも美しく急通過せるダリの歌集を

久久にも抜き身のわたしだみ赤き陽をひた慕う心持よく

ゆらのとや「曾丹」「仁丹」括ろうか丹の括弧の曾にプラス仁(因数分解)

どこにある男度胸の隆隆の強い流れに茎浸す奇花は

徳目は潔さのみ第五指に僅かに残る握力の悔い

わが脳を雷つん抜けるその折に火柱となれよ狂歌一本

不抜の 忍苦の故に大波は白,際立つとホホ敬って申す


女 類 秀 麗


何はさておき沽券コケンというものを大事にしなくちゃいけねえ

夜更けぞ 怒涛のきしみいや増されば換わり映えせよ朕の詩倉も

構えこそ私の城 変転の苦にがの躯幹を入り組ませつつ

断裂のおとな心を繕わん金銀杏きんぎんなんの直散ひたちりの上

素浪人しゃくり上げたる痩せ肩は乱東京らんとうきょうに跡形もなし

雨に張る茶の肩肘ぞひたひたと命脈はある皮下潜流に

われの庭の椿の白の片優かたまさり ひょうううと鳴るくちびる笛や

焼け焦げをひとつ残して消えんかな今日現在も異類一流

苦戯れを噛みつつ弱き男胸だんきょうに「強」「驕」「矯」を張るよしもがな

歌嵐予を突き抜けし一刹那乾坤至純女類秀麗


六 段 の 雲


双拳は禽とりのぬくみをひた恋いつ空手使いと呼ばれて以来

空手衣に通さば直き白腕びゃくわんぞあわれニ尺は理非を悟らず

千貫の空気を突けばこめかみの百の管より土用汗どようあせ噴く

てのひらの二枚の砦恃みつつ左に回る喜色なりけり

美美しき美美美美美しき回路ならん貴公ひた蹴る指令器官は

弱年の脇に花血はなぢのかがよえば三日月蹴りは掠めがたしも

準殺気擬殺気否ぞ本殺気たたらは陣鼓肺は陣幕

裂帛の歌ならざれば蛮声に是や非やと突くいささ驕慢

不逞雲ふていぐも青春の日の残塁の崩れ残りに除く白奇花びゃくぎか

手の槍をコロンにまぶし突かんかな歌降る里の六段の雲


速 射 の 美

 

思い出せよ決起集中反転のきびきびとせる時機の仕組みを

春の海ときおりきらりぎらりかなmastmustなからしめんと

父と子の急の目覚めの悲しさや お花なに花 瞬時消失

夜のindigo明けのpinkのないまぜの小巾を振る女一人

感傷は胸垂直に生まれきて黒豹の尾を立てて失せたる

割れやすき脳にてあればさびしげの女の膝に浅く沈めき

俺の生のハードコピーに過ぎざるう歌の喘ぎはひとつの事実

御用心君のうしろの海面からそれに接するリアス式まで

花の香に用意じゃあねえ嵐吹き俺に涙のあられたばしる

春が死ぬこの事後処理を如何にする速射の美あれ緑陰のテル


気 の 流 鏑 馬

 

標的にほとほと逸る歌ごころ予の振り打ちは流鏑馬である

この道は慈悲の心のやさ心拝み手なりの手刀烈風

上膊に麻痺を残して消え去りし尺の弧はあり飛燕土用の

構えれば白虎の位身の丈の白に背かぬ男たるべし

折々は身を捨ててこそなんとやら脾腹明けたる諸手突きなり

死せば塊かい生きても塊のこの肉を宙に飛ばして砂袋を蹴る

合目的神経系の働きの狙い一点仮想敵赤壁

ご覧ぜよ暴虎馮河の人生の不具合の形廉潔の技

延髄の先端焦がす腹立ちに掠めて切りし枇杷の葉尖

今はまた飛び切りの海金銀波 馬具美具武具の驕の語感や


速 射 の 美

 

海の 僕だけのための真っ昼間にonly oneの歌よ出て来い

シャルマンな海の横顔 思案顔の僕は太刀打ちの対象になりえない

鳥の黒 海のはじまる境にて悲しみにけり手刀の秒速を

たちどころ煙は生えてその下の赤き夢みは安らぎにけり

視野は悉く直線 制御系と日射との出会いはあり得ない

絶望的絶望を平手打ちにて平らげて猛食欲やわが離陸take of

異なればそのままそれが寸法ぞこれでいいのさ貴公も俺も

言葉ではいじれにものが俺に吹くただ受けておる素手と髪とで

はらばいて(地球酔ちきゅうよいなる午後三時)背に青空をひたり当てていん

有明に一心不乱の星死してその朝以来歌の降る里

 


私史は中葉

 

昨日より無念でならず白雲の灰汁を飲み切りかわうそよ死ね

かわうそに擬したる夢を放つかな振り向くまいぞ尽未来際

予の淵に棲みて久しきかわうそやののしり騒ぐ酔狂のidイド

唇は永劫高貴 水に触れそよ風に触れ生命に触れ

いま前の無念でならずちらりゆさ硝子コップの水の雄心

俳聖にかぶりの白の単調やそもさん柔き人心の極は

不安雲酒しゅに交わりて眠りこけ新規を見たりき死後直後じきのち

蓚酸の陰りをときに佳しとする貴様の父はそういう父だ

眼の幅に汝の宇宙 その口に「雄叫び草」の種子を贈るぞ

かれもよしこれもよしとう大まかの徳知らぬまま私史は中葉


びゃくはん

白    斑

 

ふゆ空に嵌め殺されし白月びゃくげつやおのがままとは寒き極刑

早婚に疲れ果てたる寒眉さむまゆを荒げ緩めし月国の武者

驕心の輻射は伸びて紺空こんくうの白円盤びゃくえんばんを微か掠めつ

白雲びゃくうんの滴る朝をはすかいにすうと下りて鳥歌とりうた及ぶ

ささやかな業火なるべしそよ風につつかれて立つ焚火二千度

この今はただうなだれん弱冬陽よわふゆび予の秘蔵せる白花びゃっか枯れたる

南南西に向けねばならぬ復讐ぞなんなんなつめ俺の揺曳

紅炎の昂ぶりに似てあらあらと額を過ぎし須臾の白欲びゃくよく

血をたどりけものの傷に及ぶように俺のノートをつきとめし女もの

そのときの口火の湿りうわ言に吐き尽くしたる恋ではなかったか

渾身の雨中突破の強引に白恋びゃくれんひとつ溶けていしかな

私の少し寂しき頂に戴冠なせる如月じょげつの葵

痛心と枯葉は池にひたと落ちみずがね寒き如月の座なる

水滴に映り転がる硬骨の白我白自我びゃくがびゃくじがとめどもあらず

邪呪文じゃじゅもんにコロナ滅ぼす心算もややさびれたる衣通姫や

白亜の 迎賓館の天は冷え井然とせる冬galaxy


一 握 の 砂 利

 

いよいよに満月輪まんげつりんの耀えば一駒駆け出す不安の一駒

空に星 反逆の理は蒼き花 桜おう素晴らしや風の一触

否定癖流転鏤骨の境涯に花咲き添えよ蒼白の花

起きぬけの心に甘き傷ひとつ かみなり竜の胸にありしような

春の極み 男らしさは人らしさこの角膜の主の哀愁

一握の砂利を花壇にぶん投げる指に僅かのやさしさ残る

やさしくしておこう つい、ほろびるかもしれないから

煙草吹くほろほろほろり徒人や紫煙は縁者今しばらくの

紅を重ね合わせて塗るときにかき消されたる先の紅

泥酔の目覚めるほどに青ければ胸底ひくく

朱の塩を振る懐のたとえようなき淋しさは 青びいだまのあの膚ざわり

袋多き木の実の苦み悩み食う果たし得ざりし激越その日

ふりがなの小さき明るさ幼年の髄に漸く精気うごめき

稚児ちびの掌にたたきこみたる袈裟掛けに夕虹立てよいやさオーロラ

風に飛べ塩辛色の歌一首何ぞや俺の生きは蒼白

紺段段白一皺はくいっしゅうの静かさや陽の直撃ひたうちは弱小にして


思 弁 的 整 合

 

いよいよに満無用鳩むようばと無用春陽無用風未桜いまだざくらと無用の私

大鏃にとまりていたる庫裡の鳩細きかな首、その命脈も

闇よ詩よ俺の心を聴くものは火の同類でなければならぬ

吹き荒れし風の翌日溝中にようやく俺の名をし拾える

はらはらと空の破片の降る春ぞはらはらと降れ俺は不承知

ひとひらは悪意を含む言い草のその突端の山桜なる

春神はるがみの髪のたなびく様相や相ともに飯 汗が光る

はくれんの唇裂きてなだれ来し萌黄のいろの神語りかな

強引に生きたるものの呼び名なる「押勝」何と泣かせるじゃあねえか

かちどきの色の淋しさかちどきは誠に負けの仕損いなる

花吹雪「だから女あいつは駄目なんだ」ひらひらひらら一斉に雨後

この湖は川の切れはしわたくしは時の切れはしふうっつうりと

サングラス右に握れば左手は淋しき限り是非なし、握る

手すさびの追体験の為に買う牙と胸筋そして自刃

指五本人間病にんげんびょうに細りけり暗暗俺の心臓ヘルツむら雲

その腕の力弱さとその言の晦渋により君を愛せり


積    弱

 

雅び男のわが吐く息の歌繭の黄ばみに気づくわが積弱や

堀波の青は綺綺羅羅さんざめき夏の劣化は信じがたしも

攻勢の果ての敗れのうらぶれのこのひそやかを「美愁」と呼ばん

生来の独狼として独飲せる多年のありてかかる積弱

片男波沈むのならばとことんに沈んでしまえ底の底まで

幼児よりのぼれる音の確かさは細胞セルがおのれを生み分かつ音

俺は研ぐ俺一流の剛胆を わが身辺にシェルターなければ

「ぼうやの父とうはほんとうにのたれじにしたのねえ りっぱねえ」と言えよ青鳩

おまえには窮余の瞳その敵を食い千切るべき俺の爪牙ぞ

外剛のキャタピラ外し月を見るなす術もない野武士のように

中世の痛み悲しく負うたまま耳の高さを吹き抜けしもの

永遠の守りは不能 伊豆海も遂には風にこじ開けられて

私の失調に寄る青鳩よ「見詰めてはならぬ太陽と死は」

たてがみに孤神憑依のうそ寒さ俺は余儀なく瞑らんとする

海際に雄姿ならざる予の影を立たしめてみる脚は立刀

遠空に白き貴婦人てんいたち魚竜剣竜かみなり竜や


衒 い 心 は あ り あ り て

 

男子詠だんじえいすくと立つ夢見定めしかの時以来波は業物

秀眉もつ極左でありし友もまた肩の荷重き東国ひがしの凡夫

平凡に背広着るこそあわれなれ雨いちどきに空を覆うよ

雁の肌間近に身しは冬の日の和み心の一片であった

けり鳧鳧 鳧をつけたく思えども眼の前はただ雪柳なる

偶然の支配に慣れてありければ薔薇の襞に賽をうずめる

開拓の余地なき時代の筋骨は新さらの心のもてあましもの

鼻緒にも雨は降るなり買い継ぎし煙草を持てば更に降るなり

唇に衒い心はありあれど気概貧しく蕎麦を食いおる

鋼鉄は鍛えられたるその故にひどくあわれみたくなるのである

川を見る集落が見える橋が見える なぜまぶしいか既知の真理が

春昼を居合腰にて立ちければ踵うしろの蟻地獄かな

眼を閉じて胸裡の偶像イドラつぶしつつざくと噛むなり知恵の木の実を

白雷は博物館の上に飛び動き難かるわが自同律

脾肉あり陋説踏みて立たんとも 退かんともああ雷吹雪らいふぶき

早朝に衒い心はありありて顔より高き鉄線花蹴る

 


お  月

 

泣き飽きてお月に化けているとかやしろじろお月波の上なる

横たわる一冬の影長きかな遥遥赤し西の陰りは

午後三時枯れ枝軽む日比谷濠肩幅迄の男盛りよ

臙脂なる心ひとつを捨てかねつ悲しむための臓器なれども

勝ち残る今日にはあれどひとりにて不安不運の不縁なるかな

爪までが私の城 宇宙中に冷えつつぞあるわが体温は

女立つ初秋愁訴の瞳孔に怨えんあかぎれはちちと震えつ

曲折に耐え難ければ心臓に無限軌道を装着せんよ

目を閉じてただ過ぎてゆく風を聞け俺の子細は判るまいから

幼き 心の窓はいぶかりぬ億の苦悩のはじめのものを

梟雄の名前騙りにやや飽きて机上に顎を乗せたる次第

直情のこんこんちきの俺なれど真黄まきい変異を酌み考える

遠峰に雷らいの焼け焦げ 予の肝に恋の急火や立たずもあらまし

矢雲行く侠気の沙汰は雲次第次第次第に融けて延延

肝消えの朝の緑夢を振り払い産業世界のもののふとなる

アアいやだ寝ても覚めてもこの世界Oh狂歌rum poem Ah奇妙篇rum parts


そ う ら 空 は 夕 焼 け だ

 

忝けなきは母なる母の好高気こうきあつ涙T世るいいっせいの出所進退

水の密度ぎちと耳まで押し寄せてわが泳法は苦難なるかな

死ぬな死ぬなおまえは死ぬな捩じ花の細い怒りの渦巻く上は

何と これが私への仕打ち おお神は世間のように温かい

押されて カタと鳴る胸郭ああおまえは疲れているんだな

疲れて カタと鳴る侠客ああ俺も長くはないんだな

俺の驕慢は そうは潰えぬ そうらそらは夕焼けだ

遺言の文案 辞世の練習 陽はなかぞら 沁みるほど石榴が美事

兄者よ 短歌は屁か?いくら生きているからといってあんなに撒き散らしていいのか?

いちじくの一果離散の芳香にはるばる来たぜ美羽の黒鳥


曼 珠 沙 華

 

****男が咲かす死に花は花なら赤い彼岸花《愛誦歌

 

じりじりと僭越灼くや 項の陽 やや俯けるkiss義仲の

ノアの舟締切り過ぎて空はあり割り込まんかな飢餓の余輩も

山に立つ虹は「ものの負」山国の御大将の鈍にびの虹彩

瑠璃色の義仲ひらりhilltop背というものは充分驕慢

りょくと朱にTomoe転ずる太刀葵おお夏草と秋草の間

もとともに歯をきしませて火語ひごを食う悔いてはならじTYらは

王水に大太刀溶けし午睡より立ちては断たん間夫も匹夫も

心臓から血が出ぬように刺して消せよ 是非なきものはまこと是非なし

胃水には溶け残りたる朱花弁ぞ雲絞める声や飛鳥哀調

曼珠沙華咲き添いたれば破竹川恋恋として今を流れず


青 由 比

 

この日頃凄い凄みは見せなくて狂歌親しむ秋とは申す

紅苦労べにぐろうやや分厚めの哀あいなれどよせよ言うのは女じゃあるめえし

驕に矯重ねし日日のはかなさや自転嫌いのかの日かの俺

青由比あおゆいや洒落と自滅は紙一重銑ずく千万の左脳なり

そもそも 花は鋭利でありえたか冷え冷え冷えて俺のありし間

胸中に愁いを五キロ押ししずめ黄色おうしょくの秋を食いいたりけり

華やがん「華よりもなお華やかに」馬にも乗れぬ男なれども

そよ風に和して悲しき美なるかな悍馬の脚も父の流転も

矢面に一度も立たぬ男にて大海の尾を踏みつけにけり

風に媚態しなぴぴと鳴く鳥ちちと鳴き銹び初めたるや愛顧の史都も


意地ずくはいじめられなくなるまでだ

 

こわもてのための浅剃り風に当て一岳に向くニ岳を背負い

力ずく得てみしものはいっぽんのすみれの首のか細なりけん

背中せなにこそ雄の力はあるものを余程の雨に立ち尽くすなり

草地に驚天動地打つ杭のただ黒である黒のかなしさ

追憶をその先端に懸けたればくらり危うき時間軸なり

反骨は紫の咳ときどきは月を突き刺す地よりの飛電

男星chirachira眠るその真下闇を作りて手の影を消す

意地ずくはいじめられなくなるまでだ胡蝶よ百合よ俺の朋輩

笑うなよ 俺は今、地殻とdebateしているのだ

剛法は生家の秘伝玉虫を打ち落としたる祖母も含めて


阿 形 像

 

男にて偏たり巍巍たり毅然たり遺憾とはせじさばさばの今日を

方影や銀月輪ぎんげつりんの剃り跡は痛痛にして狂歌したたる

花吹雪は百毀千謗ふりかかり我や客気の直往勇往

またたけば無策の春は散り果てて七五七七残る訓戒

花中の六歳童子ただただただ修羅場に耐える男を望むぞよ

双手にて端をつかみて膝を当ておおぼっきりと俺の名を折れり

軟風に少し蒸れたる胸座むなぐらや中に追慕のほのみどり髪

わが中に不争の徳は咲き初めぬ上然如水冗談邪推

空し手の手のさばさばに風当るしばらく飛ばぬ俺の一匕や

海吠えや少真似たる阿形像木のぼり小僧今だに自用

強悍罪きょうかんざい夕焼け空は顰蹙しわが胸腔のインバランスや

風に飛ぶネクタイ一尾今少し黄の驕泰を仕るまで

大口の鯉を刺し抜く風であれ風にも芯はなければならぬ

女女しさの霧ろろろろの六本木要らざるものは鬼と金棒

その通り強い男は死に絶えて生きてはいても要らぬばかりよ

撫で肩の時に遭いたる不運にてわが研ぐものは脆ぜいの短槍


白 牙 白 爪

 

蒼獅子を墨に刺したる伊豆海は暮れごと夜ごと白花びゃっかに恋恋

不発弾俺の寒さやさざんかや口髭もなき一国の拒否

乱髪のふふそそと立つ頂や父祖と呼ばれん後日危うきに

古傷は男子の左券由由しくも血流れていることの確かさ

解き放つおれの山犬かくまでも月見に痩せて歌見に痩せれば

世の中は遊惰淫逸いやな朱の色だ おのれは剛中の剛足腰が塁だ

汝等は女化めかせばよかろ大海の青のごときが俺のdomain

兆の葉の炎舞金踊えんぶきんよう鳴り止みてひそとささめく夜が落ちる

待ってたぜ やっとことっちゃ運は天そろそろ見えしエピロー愚かな

純銀河都空離れたる殷賑や縦論横説白牙白爪びゃくがびゃくそう


青 流 転

 

予の脳は一兆輪のかすみ草そよぎ止まざる志とも

そうなのか雲一片を踏み外し鷹には鷹の青流転あおるてんある

おいおいにそれと知られる致命傷わが一行を呻き切れずに

太陽は朱の鳧けり巨巨と西を占めぬ たゆたい果てし虎の春歌わざうた

負の域に及び至らぬ思想かな韓からくれないのわが対数の

西雲は果敢に熟れてぼくを招く兜緒赤き夏至の父かな

佯狂の額やわらげて雨一滴 何とぞ俺に俺に豪宕ごうとう

吠え死にを漠を定めて走り継ぎ走り来たりし一思いかな

あらくれの悔いぞ美美しき鳥類の爪ほど苦き失意なりしが

以下余白しがねえ俺のほの語りほととぎす恋うほととぎす恋い


み 吉 野

 

薄片に腹蔵はなし黄の時刻ほぼ水平に飛桜ひおう軟軟

ぎちぎちと集約集中然れども花咲く沙汰は由来拡散

横死だ兆片の花びらの横死だ吉野黄の午後思い半ばの

倒木と唐変木のなれそめの仲介たりき九寸虎杖

桜吠さくらぼえ音なき吠えの痛切のひたひたとして俺に迫るも

早咲きが遅咲きに抵触するのださよう遅咲きは早咲きを無視する

黄小鳥きごとりの三角形の桃色の舌よりいでし春語りかな

山肌に円く占めたるその者らはしろじろ花ばなの母と子と父

足許に桜手さくらで及ぶ坂の途次傾くものを絶景と呼ぶ

腹に呑む桜を一斗ニ斗四斗傾く俺よ絶倫であれ