フ リ ー ク ス

―秘められた自己の神話とイメージ―

レスリー・フィードラー
(伊藤俊治・旦敬介・大場正明 訳、青土社、1986)

 

「フリーク」は現在、麻薬常用者の意味でも使われますが、本来は奇人変人、酔狂といった意味で、また奇形・変種を指す場合もあります。本書は小人症、巨人症、病的肥満、多毛症、重度の奇形、結合双生児(シャム双生児)、両性具有などに関する歴史的・文献的・神話論的考察です。これらの奇形の存在は、大人と子ども、人間と動物、自己と他者、男と女といった二分法に対する挑戦であり、それゆえに見るものを不安に陥れるというのです。たしかに、本書に収められた多くの写真や絵はどれもショッキングです。

昔の王侯貴族といった特権階級は、小人をペットのように侍らせ、慰み物としていたようです。また、人間と動物の雑種のように思われた多毛症や奇形の原因として、妊娠中の母親がその動物を見て驚いたから、などという説明がよくなされたそうです。古来これらのフリークは、宗教的に特別の存在であると同時に縁日の見せ物にされることが多く、近代以降は文学の主題になると同時にサーカスの「サイドショー」に登場しましたが、中には偽物も多かったとのこと。

そして現代においては、彼らの多くは「治療」の対象になると同時に、一部を除いて一般庶民の目に広く曝されることは少なくなりました。その分だけ、私たちがこれら異形の存在者たちにまつわる想像の世界に足を踏み入れることもなくなったわけですが、そのことを著者は心から惜しんでいるのでしょう。われわれは一体何者なのか、という問いを忘れた現代人・・・

考察の対象範囲はほぼキリスト教世界に限られていますが、歴史の記録に残されたこれらの人々の境遇は、哀れであると同時に、社会の変化を映し出している点で興味深いものです。