■グァテマラの言語および語族Idiomas de Gatemala | |
グァテマラには24の言語があり、そのうち21の言語がマヤ起源の言語とされている。残りの3つのうち一つはカステリャーノCastellano、つまりスペイン語であり、残りはメキシコ起源とされるシンカXinka、およびアフロアメリカン起源のガリフナGarifunaである。 マヤ系の言語はグァテマラ、メキシコ、ホンジュラス、エルサルバドル、ベリーズなどに分布し、いずれも共通の言語体系を持っている。 マヤ系の言語はさらに6つの分派に分けることができる。 (ユカテコ系yukateka、チョル系chol、カンホバル系q'anjob'al、マム系mam、キチェ系k'iche'、ワステコ系wasteka) マヤ系言語は全部で30程度あると言われ、そのうちの21がグァテマラに、9つがメキシコに分布する。以下の表はグァテマラに存在する21のマヤ系言語の概説である。 注 あるいは分類方法によっては大きく3つに分ける場合もある。(小泉潤二) @ マヤ地域よりはるか北方の、ベラクルス州方面のワステコ系(Huastecan, ワステコなど) A マヤ低地のユカテコ系(Yucatecan, ユカテコ、ラカンドンなど) B それら以外の主として高地マヤ、すなわちチョル系(Cholan, チョル、チョンタル、チョルティなど)、ツェルタル系(Tzeltalan、ツェルタル、ツォツィルなど)、大カンホバル系(Greater Kanjobal, カンホバル、ハカルテコ、チュフ、トホラバルなど)、マム系(Mamean, マム、イシル、アグアテカなど)、大キチェ系(Greater Quichean, キチェ、カクチケル、ツトゥヒル、ポコマム、ウスパンテコ、ケクチなど)である。 ここでは、グァテマラ二言語文化局の分類法である前者に従って分類する。 |
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■IDIOMAS DE ORIGEN MAYA | ||||
人口 | ||||
ユカテコ系 RAMA YUKARWCA |
01. | モパンMopan | 5,000 | ペテンの4町村、ドラレス、サン・ルイス、ポプトゥンおよびメルチョル・デ・メンコス周辺で用いられる。33の書記素からなる。 |
02. | Itza' | 2,000 | かつてメキシコにおいてチェチェン・イツァを拠点に勢力を伸ばしたが、勢力争いに敗れて後、ペテン州へ移動した。 | |
チョル系 RAMA CH'OL |
03. | チョルティCh'orti' | 52,000↓ | グァテマラ東部で話される。近年スペイン語化が進み、この言語を使用する人々の数は減っている。 かつて古典期マヤには中心的言語のひとつとして栄えた。この言語の話される地域には古典期マヤの代表的遺跡であるコパン遺跡(ホンジュラス)がある。 |
カンホバル系 RAMA Q'ANJOB'AL |
04. | チュフ Chuj |
85,000 | |
05. | アカテコ Akateko |
39,826 | ||
06. | カンホバル Q'anjob'al |
205,670 | ||
07. | ポプティ Popt'i(jakalteko) |
83,814 | ハカルテナンゴで使われている。 以前はハカルテコと呼ばれていた。ポプティの意味は「私たちの言葉」 |
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マム系 RAMA MAM |
08. | マム Mam |
1,094,926↑ | グァテマラ北西部高地を中心に険しい山岳地帯の農村に住み、マヤ系原住民の中でも文化的保守性の強いことで知られる語族。マム語は東方のアワカテコ(Awakateko)やイシル(Ixil)に関係が深く、南部・北部・西部マムの3系統に分かれる。 ウェウェテナンゴの16町村、ケツアルテナンゴの12町村およびサン・マルコスの28町村で話されている。 |
09. | アワカテコ Awakateko |
34,476 | ウェウェテナンゴ県アグアカタンで話されている。 | |
10. | イシル Ixil |
71,000 | キチェ県チャフル、サン・フアン・コツァルおよびネバフで話される。 これらの地域はいずれも美しい織物で知られている。 |
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11. | Teko(tekiteko) | 2,500 | 現在ほとんど消えかけている言語のひとつ。ウェウェテナンゴ県テクティタンで主として話される。 | |
キチェ系 RAMA K'ICHE' |
12. | ウスパンテコ Uspanteko |
21,399↑ | キチェ県ウスパンタンを中心に話されている。この言葉をはなす語族はかつて1524年、キチェ王国がスペイン人に征服された後もイシルとともに抵抗を続け、1530年に征服された。 |
13. | キチェ K'iche' |
1,842,115↑ | スペイン人の征服時にもっとも頑強に反抗した当時最大の勢力を誇った部族によって話されている言語。この語族はグァテマラの中西部高地に、チチカステナンゴやカンテルやモモステナンゴやナワラを始めとする数多くの共同体を形成する。言語学的には大キチェ系に属し、とくに同じキチェ系のカクチケルとツトゥヒルとは、地理的に隣接し、文化的にも類似する。マヤの神話「ポポル・ヴフ」はキチェ語で書かれた。 | |
14. | カクチケル Kaqchikel |
405,000↓ | スペイン人進入当時、キチェと並び大きな勢力を誇った語族。スペイン人征服時にはスペインと手を結んでキチェと戦ったが、後に征服された。当時の首都は現在のテクパン市付近に存在した。『カクチケル年代記』等で知られる。 | |
15. | ツトゥヒル Tz'utujil |
80,000 | アティトラン湖南岸で主に使われている。 | |
16. | サカプルテコ Sakapulteko |
42,204 | ||
17. | シパカペンセ Sipakapense |
3,000 | ||
18. | ポコムチ Poqomchi' |
259,168↑ | アルタベラパスからバハベラパス地方にかけてのポロチック川流域において、主にはなされている。ポコマムとともに比較的古い時代に栄えていたと考えられる。 | |
19. | ポコマム Poqomam |
127,206 | かつて王国が形成されていたミシュク・ビエホを中心に話されている。ポコムチとともに近縁関係にあり、ポコムと総称される。 | |
20. | ケクチ Q'eqchi' |
711,523↑ | ベラパス地方北部およびペテンで話されている。比較的後の時代に勢力を伸ばした形跡が見られる。キチェ族の神話『ポポル・ブフ』において、宿敵イツァ族とともに地下の王国シバルバーの入り口に住むとされた民族。 居住地域はアルタベラパス州を中心に広がり、現在ではキチェやマムと並ぶ大きな勢力となっている。 |
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21. | アチ Achi' |
58,000 | バハベラパス西部、クブルコ、ラビナル、サン・ミゲル・チカフ、サラマおよびサン・ヘロニモで話される。32の書記素から形成される。 | |
ワステコ系 RAMA WASTEKA |
Según el Acuerdo Gubernativo No.1046-87,
de fecha 23 de noviembre de 1987, en el territorio
nacional se hablan 22 idiomas indígenas.
『文化人類学事典』弘文堂