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| 伴正一著『ボランティア・スピリット』(講談社、1977年) 復刻版 以下のHPで全文の閲覧が可能。 http://village.infoweb.ne.jp/~fwnp3224/v-spirit/ |
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良くも悪くも青年海外協力隊の根底にある思想がどのようなものであるかがよくわかる本。 著者の故伴正一氏は2代目の協力隊事務局長であった。現在の協力隊の長所も短所も、元をたどればこの本で描かれたような協力隊のあり方に起因するといえばいいすぎだろうか。 協力隊訓練所の個人の部屋に備え付けの図書となっているので、協力隊参加者は一度は手に取ったことがあるはずである。 |
| 石橋慶子著『青年海外協力隊の虚像』(健友館、1997年) | ![]() |
| 青年海外協力隊の、ネガティブな一面を捉えた異色の著作。 題名および副題から受ける印象からは青年協力隊の活動全体についての批判書かと思われるが、実際は、青年海外協力隊に参加した著者の体験を主観的に描いたものである。 筆者の置かれた状況は協力隊員なら誰でも陥る可能性のあるものである。SEとして要請されながら、壊れたコンピューターしかない配属先に派遣されるという要請における問題点やJOCV現地事務所における対応の杜撰さなどは、隊員ならば多かれ少なかれ心当たりのあるものだろう。また、著者の見聞した隊員の活動のあり方の中には公費を用いたボランティアとして、確かに逸脱した行動も見受けられる。 しかしながら、ここに描かれた状況はあくまで筆者が体験した出来事の範疇にとどまり、普遍性を持たない。筆者の置かれた難しい状況下の中で、彼女の主観的な観点からみた協力隊活動がどのようなものであったのかは理解できるが、それは必ずしも他の関係者にとっての協力隊活動とイコールではない。 この意味で、筆者あるいは出版社の意図とは異なり、青年海外協力隊の活動そのものに対する正当な批判とは、残念ながらなり得ていない。「虚像」とは結局のところ、青年海外協力隊に参加する前の著者が持っていたものであり、これに対する「事実」というのも、あくまで「著者の体験した」事実にすぎない。 ただ、それだけに文章にリアリティがあり、読み応えはある。もっともそのリアリティは、いうならば隊員の愚痴のもつリアリティと同様のものかもしれないが。 協力隊参加者ならば、筆者のあまりにネガティブな視点に対して抵抗を持つかもしれないが、活動が思うようにいかないときには、誰もがときとして同じような思いを持つことはあることは考えにいれておく必要があるように思う。 これから協力隊を受験する人に対してと言うより、現在活動中の隊員にとって、自分の体験をより良いものにするために、自分が陥りかねない状況に対する自戒の念を呼び起こすために読んで欲しい本だと思う。 |
| 吉岡逸夫著『青年海外協力隊の正体』(三省堂、1998年) | ![]() |
| 上述の2冊が協力隊のポジティブな面とネガティブな面をそれぞれ代表しているとするならば、この本はジャーナリストとして活躍する協力隊OBの手によって、青年海外協力隊とは何かという問いに真っ向から取り組んだ本である。 しかしながら、過去30数年の歴史をもち、数万人の参加者を数えるようになった協力隊活動をひとくくりにまとめようとすること自体、無理があるように思う。 現役の協力隊員に対する取材から見えてくるものは、あるべき姿と実際の活動のギャップに悩む青年たちの姿であるが、そこには筆者の求める答えはなかった。 次に筆者は日系移民との比較を試みるが、近代日本の成立期以来、その矛盾を背負って異国の地に生活を築き上げた移民の生活史と重なるものはほとんどないといって良いだろう。 結局、最終的に筆者の取った手法は自分自身にとっての協力隊の日々をとらえ直すことだった。叙情的に語られるかつての恋人との再会のエピソードは、現在の筆者と、かつての若かりし日々との間に横たわる越えられない壁を象徴しているかのようである。 協力隊に参加するものは多かれ少なかれ、一つのイデオロギーとしての開発あるいはボランティアというものに出会う。筆者が問題としたかったのは協力隊のイメージが、活動の現場からどのように生み出されてきたかであった。それがとらえきれなかったのは協力隊とは何かという問いが、必然的にそれらのイデオロギーに対する疑問にまで至るからだろう。これらのイデオロギーが、自明のものとしてもはやとらえられない世界にいる場合には、個人としてこれらのイデオロギーと格闘する他はない。一人一人が自分にとっての開発やボランティアの意義を問い直していくほかはないということである。 急速にグローバル化が進む今日、もはや大学生活とはなにか何かという問いが成立しないのと同様に、協力隊活動とはなにかという問いそのものが、成立しないような時代に僕たちは足を踏み入れつつあるのかもしれない。 |
| その他 | ||
| 『世界に夢架け―青年海外協力隊員の活躍』 富山県青年海外協力隊を育てる会 (編さん), 青年海外協力隊富山県OB会 (編さ ん) 単行本 (2002/02/01) 北日本新聞社 |
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| 『海をこえるボランティア先生―青年海外協力隊から見た世界』 協力隊を育てる会 (編集) 単行本 (2002/02/01) 協力隊を育てる会 |
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| 『アラブの水を飲んだ者は―青年海外協力隊の現場から』 大久保 純夫 (著) 単行本 (1998/12/01) 東京新聞出版局 |
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| 『海の向こうの宝物―青年海外協力隊日誌』 富山県青年海外協力隊を育てる会 (編集), 青年海外協力隊富山県OB会 (編集) 単行本 (1998/06/01) シー・エー・ピー |
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| 『ブータンに図書館をつくる―青年海外協力隊隊員の730日』 石田 孝夫 (著) 単行本 (1993/10/01) 明石書店 |
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| 『黄金の果実―青年海外協力隊奮戦記』 大蔵省印刷局 (編集) 単行本 (1992/08/01) 大蔵省印刷局 |
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| 『体育とスポーツの国際協力―君もなれる青年海外協力隊』 松浪 健四郎 (著) 単行本 (1991/04/01) ベースボール・マガジン社 |
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| 『アグネス・チャンと世界を語ろう―青年海外協力隊の異文化体験』 協力隊を育てる会 (著) 単行本 (1987/12/01) 三修社 |
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| 『青年海外協力隊 オールガイダンス〈’86~’87年〉』 筒井 光昭 (編集) 単行本 (1986/09/01) 三修社 |
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| 『青年海外協力隊―地球サイズの青春』 青年海外協力隊事務局 (編集) 文庫 (1985/05/01) 三修社 |
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| 『これが青年海外協力隊だ―国際協力にかける青春』 協力隊の歴史を語りつぐグループ (著) 単行本 (1983/01/01) 三修社 |
村落開発
| 参加型開発と国際協力―変わるのはわたしたち
明石ライブラリー〈24〉 ロバート チェンバース (著), その他 単行本 (2000/06/01) 明石書店 |
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| ロバート・チェンバース著『第三世界の農村開発 貧困の解決−私たちにできること』 | ||
教育開発関連
| 『国際教育協力論』 SEKAISHISO SEMINAR 内海 成治 (著) 単行本 - 192 p (2001/11/01) 世界思想社 ; ISBN: 4790709108 |
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