古事記
於母陀琉神オモダル
阿夜訶志古泥神アヤカシコデ

日本書紀
面足尊オモタル、青橿城根尊アオカシキネ、吾屋橿城根尊アヤカシキネ、沫蕩尊アワナギ(阿和那伎)
惶根尊カシコネ、吾屋惶根尊アヤカシコネ、忌橿城尊イミカシキ(妹橿城尊の変形でしょう)

先代旧事本紀(伊勢神宮文庫本)
青橿城根尊アオカシキネ、沫蕩尊アワナギ、面足尊オモタル
妹吾屋惶城根尊イモアヤカシコキネ、惶根尊カシコネ、蚊鴈姫尊カカリ
(他に橿を樟とする写本あり、妹吾屋惶城根尊の惶を橿とする写本などあり)
(橿は温暖系の木で樟も同じく、大陸では中国南部〜インドシナ半島)

ウエツフミ
於母陀琉尊オモダル
妹阿夜訶志古泥尊イモアヤカシコデ

妹や姫で分けている場合を除けばどれが女性神かは明確ではありません。
魏志倭人伝に貴人を拝するするときにアアと声を出すとあります。
青と吾屋はその感嘆詞?を文字で表しているとみることができそうです。

カシキ、カシコ、これらは同系でしょう。
「惶」はカシキネ→カシコネ、畏れる恐れるの意。
シンプルに状況を表す「橿城根」から、意識を表す新しい当て字(高級化)が「惶」ではないでしょうか。

しかし、オモタルやアワナギはまったくの別名、少なくとも3系列の神名があるということになりそうです。


歴史的に縄文はBC2000頃からの寒冷化で崩壊し(洪水など世界的に大文明が崩壊する時代)、BC1000頃から再び温暖化がはじまり各地に新文化が登場しはじめます。
伊弉諾伊弉冉神話の新しい島々や神々の登場も、縄文海退による陸地の誕生と温暖化による復興がはじまることを表すと考えています。
ならば、第六天神は縄文崩壊の時代を切り抜けた人々に相当するわけで、弥生初期の人々が祖先神として祀る可能性は十分あると思います。

「沫蕩」アワナギの文字を用いた人が単なる当て字ではなく意味を持たせているとするなら、揺れ動く水とその飛沫。
伊弉諾伊弉冉神の沼矛によって漂える国を修し固める、その漂える国の状態を表すとみることができるでしょう。
大昔に洪水があってたいへんだったんだよ・・こういう形で伝えられて後に文字に表した、その可能性はありそうです。

面足の名称由来は見当もつきません。
語り部の伝承は丸暗記であって、意味を理解していなくても発音(言葉)だけは伝承されるはずです。
於母陀琉オモダルという万葉的な当て字は、意味不明となった発音の伝承に当て字したものと考えています。

先代旧事本紀の「蚊鴈姫尊」(カカリ、カガリ)の呼称は他にはみえず興味深いです。
万葉では蚊は「カ」、鴈はそのままカリですから「カ・カリ・ヒメ」でよいと思います(鴈は雁に同じ)。
カカリヒメ、これに似た神名が書紀一書に登場しています。
伊弉諾尊と伊弉冉尊が黄泉の国で夫婦喧嘩をしたとき、その仲裁にはいる「菊理姫」ククリヒメです。

ククリの意味には諸説ありますが、
万葉2790
「玉の緒の久栗(くくり)縁(よ)せつつ末終(すえつい)に去きは別れず同じ緒にあらむ」

糸や紐を編んで縫い合わせる「綴る」カカリ、カガリの意とみることができます。
ククリであれカカリであれ夫婦喧嘩の仲裁を表すにはぴたりの名であり、伊弉諾伊弉冉神の先代(第六代)の女性神(おばあちゃん)が仲裁したのであればすべてが重なり合ってきます。

第六天神には白山神社のありようも加えて考える必要があるかもしれません。