ピエール・ブーレーズ
昔はえらく戦闘的な演奏でおもしろい「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」や
ドビュッシーの「海」他、かけがえのない理知的で、知的好奇心をくすぐる上に切れ味抜群な
演奏をしていました。が、以上のような曲の新録は初心者に勧めるには最高ですが、
ラディカルな面白さは明らかに後退しております。
バルトークの中国の不思議な役人や管弦楽のための協奏曲も
ラトルの方がおもしろいですが、現代管弦楽演奏の極致を見せてくれます。
マーラーは今までわかりにくいとされてきた第6,7番にすっきりした佳演がありますが、第5番は
つまらねぇー駄演です。ヴィーンフィルが好き勝ってやってます。指揮者がいないみたいです。
ヴィーンフィルファンには素の音が聞けていいかもしれません。
春の祭典を並べてもO.R.T.Fとのものが、怪しさ、ダイナミズム、やっていることの独自性
全てで一番で、クリーブランドとの1枚目、2枚目、と順におとなしくなっていきます。
(東京でのライブは良かったですけど。溶けそうで)
年は取りたくないねぇ、と思っていました。
が、しかし、シカゴとのマーラーの第9番はやってくれました。久しぶりに万人に理解されない、
譜面をひっくり返して読ませまくるようなブーレーズの登場です。第1楽章の死の動機が
もっとも盛り上がるところのトロンボーンが、fffからffへ音量を下げるところ等、今までなかったです。
これは凄い。第3楽章もまさに現代管弦楽演奏の極致です。第4楽章も最近の歌謡調を
捨ててすっきりと歌い上げてます。泣き叫ばない方が悲しいという美しい演奏です。
この情報量がブーレーズなんですよ。