Love song 〜我が愛しき人よ・・・〜



第1話  逢いたい・・・


夢を見た・・・。


流れるような美しい金髪。
透きとおる白い肌。
まぶしい笑顔。
女らしいのにどこかそれを感じさせない瞳。

近づこうとすればすっといなくなってしまう君。
なのに気づくとそばで優しく微笑んでいる。
とても不思議な子だ。

男にしか興味の無い僕がどうして君に惹かれたのだろう。
そう・・・君の夢を見るほどに───。



秋から冬へと確実に変わりつつある11月の末、この季節にしては珍しく暖かい日差しが差し込んでいる。
その気持ちいい日差しを浴びながら、一条は大学の中庭で木に寄りかかり本を読んでいた。
前の時間は突然の休講になり、かといって外に出るのが面倒だったので珍しくここにきたのだ。
だが広げた本からいつの間にか目をはなし、ぼうっと考え事をしていた。
それはここ最近毎夜見てしまう夢のこと。
最後に君に逢ったのはいつだろう・・・。
自分のことが一番だったのに、気づいたらいつも君のことを考えてしまう・・・。
我ながらなんてことだ・・・。
一条は自嘲気味に笑みを浮かべた。
「・・・条、一条!」
呼ばれていることに気がついて、声のするほうに顔を向けた。
そこにいたのは後輩の時操央。
「・・・時、どうしたんだ?」
本を閉じ、何事もなかったかのように返事をする。
「今度の週末あいてるか?」
時はタバコをふかしながら尋ねた。
同じ大学であり同じ劇団に所属しているこの二人。
派手な容姿やちょっと変わった性格で大学内ではかなりの有名人だ。
その一方で一条は若手ナンバーワンと言われる実力の持ち主の役者である。
「週末か・・・舞台は入ってないし特に予定はないが・・・?」
一条はスケジュール帳を見ながら予定を確認する。
「また桜高の演劇指導を頼まれたんだが、一緒に行かねーか? 真琴さんに会いたがってただろう」
桜高──正式名、桜ヶ丘高校と言い、時が通っていた高校である。
過去に一条は時に誘われて、ここの演劇部の演劇指導に行った事があった。
その時に出逢った一人の女性・・・天野真琴。
桜高一の美女であり、人気もあり人望も厚い。
その天野真琴こそ、今現在一条が最も気になる人物であった。
だが実は一条はゲイであり、女性が好きな身体をしているのではない。
その証拠に自分好みの美少年を見ると反応するのである。
というか、男にしか反応しない。
なのになぜか初めて会った真琴に対して、一条はこの本能が働いたのだった。
「しかし、彼女は文化祭が終わって部活を引退したはずだろう」
役者ならではなのか、感情を出さずに言う。
だが心の中では逢いたい気持ちが湧き出ていた。
「それなら、役者を目指してるから卒業までいるような事言ってたぞ」
「なるほど」
「まあ、俺は部長交代したから気合入れに行くのが目的なんだけどよ」
そう言って時はタバコの煙をゆっくりと吐いた。
「で、どうする?」
「・・・そうだな、付き合うよ」
自然と口元が上がっていた。

君に逢えるのなら・・・どんな目的でもかまわない。


・・・ただ君に逢いたかった。