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三浦家の本家の母屋で、廊下を歩く糸と真。
糸はついさっき仕事を終えて、予定よりも早く、真が待つこの家に着いたところだった。


真は当然のように糸の荷物を持ち、糸の細い腰を抱いて自分たちの泊まる部屋へと誘う。



「何笑ってんだ?」

「糸さんだなと思って」

「なんだそれ?」


待ち兼ねた糸の体温を確かめるように、
真は糸の唇に自分の唇を重ねる。

そうだ、この体温を感じられなかったから、
ずっと調子が悪かったんだ。

真は改めて、どんなに糸が大切で必要な存在かを思い知ったのだ。
糸の荷物を持ったまま、ふたりにあてがわれた部屋に入る。

真が部屋の隅に荷物を置くと同時に、糸を抱き締めた。


「まこ?」

「待ちくたびれたよ」

「ほんとうに?」


珍しく弱音を吐く真に、糸はからかうように笑って見せる。


「ほんとうに………」


真は糸を畳に直に押し倒した。


「まこ?」

「糸さんが足りない」

「………ばか」



そう言うと小さく笑って、糸は真の頭を優しく抱き締めた。















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「糸ねえさま まこ義兄さま 浴衣持って来たんだけど………」


糸と真の部屋の前で、エチケットとしてノックをする巴に中からの返事は無い。


――――― もしかして、散歩にでも行ったのかしら?

――――― だったら、この浴衣をお部屋に置いて行ってもいいかしら?


巴は、糸と真に着てもらいたいと、素直な厚意で持って来た2着の浴衣を、
(勿論、これも巴が縫ったものなのだが)
無人の部屋に置いて行くつもりで、するすると戸を引いた。





そこには、壁の力を頼りながらも、立ったままで愛し合う糸と真の姿があった。



糸は、壁にすがるように両腕の肘から指先までを張り付けている。
その壁に向かう糸の細い腰を支えて、後ろから真がおぶさるように重なっている。



――――― ?



巴には、目の前で何が起こっているのか、すぐには理解できなかった。


――――― なに? これ?


――――― こんな糸ねえさまもまこ義兄さまも見たことない………














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真は、自分の頭を優しく抱いている糸を壁に押し付け、油断しきって小さく空いている隙間を狙って、その口に舌をねじ込む。

舌を絡められながらも抵抗する気の無い糸を良いことに、
壁に押し付けたまま、真は糸の上着を脱がし、下のシャツを首下までたくし上げ、
自分のシャツの前ボタンも全て外し、糸の肌と自分の肌が直に触れるようにしていた。

糸の唇を塞いだまま、その下半身を隠す短パンを小さな下着ごとずり下ろすと、
真にも見えないところで外に曝された糸の陰部に向かって、太腿の間にしなやかに手を滑り込ませる。

真の指先は、すぐにぬるっと湿った箇所に誘われ、
吸い込まれるように見えていない割れ目に飲み込まれて行く。


「んっ あっ」


糸が真に塞がれた状態の合間を縫って、甘い声を漏らす。

真は、ぐりぐりと糸の中をまさぐっていた指が、熱い粘膜に包まれることをじっくり確かめると、
糸の中から自分の指を抜くと同時に、糸の体を反転させた。
糸は思わず予期せぬ自分の動きと勢いを抑えるかのように、壁に両手を付いた。
真は、それまで重ねられていた自分の胸と糸の胸という組み合わせが、
自分の胸と糸の背中という組み合わせに変わっことを感じた途端、
今度は後ろから糸の両太腿の間を通り抜けさせて、さっきまで糸と繋がっていた穴に、
もう一度同じ指を食い込ませる。


「あああっ!」


体位を変えられた途端に起こった、繰り返される下半身への凌辱に糸の声が零れる。


真は、糸の中に片手の指を飲み含ませながら、
もう片方の手で、糸の乳房や贅肉のない腹部を愛おしそうに、時には揉み、時には撫で回した。


「やっ まこ……」


真が見えない状態の糸の不安を余所に、真はじっとりと濡れた糸の陰部から舐められたように濡れた指を抜くと、
同じ場所に、今度はいつの間にか外に出されていた真自身を、ずぶずぶと食い込ませた。
さっきまでの細く長い指とは違う、太く堅く長いモノが自分の中にどこまでも入って来る感覚に、
糸は意識を飛ばしそうになっていた。


「んあっ!」


真は糸の細く折れそうな腰を支えて、更に自分を糸の一部にするかのように押し込むと、
交わる場所からぐちゅぐちゅと音が聞こえるように、腰を回しながら打ち込むように前後に動かした。


「やっ!いやっ!」


糸の素肌を愛でるように撫で回していた真の片手が、
突然、糸の口を静かに塞いだ。
糸は自分を少しだけ息苦しくする真の掌の熱を唇に感じながら、
熱い息を止められないままに苦しそうに声を漏らしている。


糸が何の抵抗できないまま、真を吸い込んでいるところに、すっと巴が現れた。
だが、後ろの真ではなく、目の前の壁を見つめるだけが精一杯の糸は、
その状況を微塵も感じてはいなかった。


中途半端にふすまを開けたまま、凍りついている巴に向かって、
真は糸を自分に繋ぎ止めたまま、
汗ばんだ顔だけを巴に向けて、まるで口止めをするかのように、
人差し指を立てて自分の唇に当てると、声も無いままニヤっと微笑んだ。


真は、糸との情事を見られてしまったことを、むしろ喜んでいるかのように、
巴に口外を禁じつつも、その性の営みを中断する様子は無かった。
糸が今、明らかに自分のものになっているという事実を見せつけるかのように、
真は後ろから繋がったまま、糸の顔や体をまさぐり続けた。


「ああ まこ……」


真に弄ばれる糸の声が、紛れもないオンナの喘ぎ声だと直感した巴は、
開いていたふすまから廊下に身を翻すと同時に、ばしっ!と後ろ手にふすまを閉めた。





初めて見る男女の性の営みが、まさか、こんなに身近なふたりによって現実のものとされてしまうとは。


巴は自分が見たもの全てが受け入れられないまま、その場に立ちすくんでいたが、
背中から聞こえてくる自分の知らない糸の声に、言い表しようの無い切なさと憤りを感じていた。





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巴が凍りついたように立ち尽くしていると、
真が今にも崩れそうな糸を片手で抱き支えながら、
空いた方の手の人差し指を立てて、そっと自分の唇に当てた。



――――― 内緒だよ?



声になっていない筈の真の声が、巴には確かにそう聞こえた。


そう聞こえたと信じた途端、巴は我に返り、
真っ赤になるとほぼ同時に部屋を出て、後ろ手に戸を閉めた。



いつかの時には、糸を自分のものにしたいとも思っていたこともあった巴には、
余りにも残酷な場面であったかもしれない。

だが、自分のことを真正面から受け止めてくれる真には、
今や何の嫌悪感も対立心も生まれては来なかった。


ただただ、見たこともないとろけそうな女としての糸の姿を、一瞬でも見てしまった衝撃は、
しばらく巴の中からは消えることは無いと思われた。


あんな風に糸を酔わせる真を、素直に男の一面として尊敬しながら、
あんな風に酔わされてみたいとも、心のどこかで思うのだった。





背中のふすまの向こうで今も愛し合っているであろう糸と真のことを考えただけで、
体の芯が熱くなる感覚を知ってしまった巴は、
いつのまにかしっかりと抱き締めてしまっていた糸と真の為にあつらえた2着の浴衣を、
そっと音をたてないように廊下に置いた。





そして、ほんの少し前に交わした真との秘密を誰にも悟られないよう、
ゆっくり深呼吸を一回してから、静かにその場を立ち去って行った。












































【管理人より】




…………つづく……かも?

と、この前のWジュリUの新作萌えで叫んでおりましたが、
こんな展開で続いておりました。

私は、巴ちゃんがとっても好きなのですが、本当に好きらしいです。(←再認識)
巴ちゃんを男としてのパラレルを、昔描いたことがあるくらいです(笑)。

それにしても、いくら好きだからってこの所業は?

だって、こんな場面だったら、巴ちゃんになりたくないですかっ!?
↑久々のお友達無くし宣言でございます。



でもって、これは私的に巴ちゃんにとって【迷い道】なので、
糸まこにとっては日常茶飯事の行為でございますが、
あえて【迷い道】に収納しております。

これまでの、尋常じゃないっぽい【迷い道】を想像なさっておられた皆さま、
どうぞ寛大にお許しを<(_ _)>

お付き合い、ありがとうございましたw



(2009.09.09)