――― たった数日会えなかっただけで、この有様
糸は、とまどいながらも、力任せの抱擁に身を任せる心地良さを感じていた。
――― この有様………なのは、あたしの方か……
二十歳を越える糸と真は、すでに籍を入れた状態で、お互いの夢でもあった芸能界への入口に立っていた。
それぞれに目指す道を歩いていた糸と真は、【グランドサン】の映画で、初めての共演を果たす。
この映画のヒットにより、テレビドラマ化が決定した途端、真は、糸との婚姻を隠すための別居を申し出た。
真の言うことに全て納得しながら実家に留まりながらも、真と会えない時間の中に不安しか生み出せない糸。
【グランドサン】の撮影もバラバラのまま。
そんな不安定な糸を、突然楽屋に現れた真が後ろから抱き締めたのだった。
――― あの時も何日も会えなかったっけ……
真が実家に捕らわれの身となったあの時。
真は交通事故に遭ったお母さんの状態を気にして見舞いに行った。
実家に、というより、親父さんに会いたくなかった真の背中を押したのは、
紛れも無くあたしだった。
真には大切な人を突然に失って、その人に心を残すような痛みを、
絶対に味わって欲しくなかったから。
幸いにもお母さんの容態は、芳しかったので、真はすぐにあたしの元に戻って来るつもりだった。
はずなのに。
あの親父さんが、真を引き留めた。
後でお義母さんに聴いた話から考えれば、
親父さんがどんなに真を愛していたかが解る気がするけど。
伝わりにくい愛情表現の一例かもな。
そんな成田家の騒動を全く知らないまま、
真に会いたいがために実家に辿り着いたあたしは、
親父さんと真琴の実践を目の当たりにしてしまった訳で。
その呼吸すら忘れそうな一騎打ちは、あたしが真に惚れ直す一因にもなったのかもしれない。
茜さんの機転で、成田家に潜り込めたあたしは、
真琴からの伝言で、早朝の公園に呼び出された。
あの親父さんに見つからなかったのは、今考えれば奇跡に近いような気がする。
普段なら起きたことも無いような早朝に起きて、指定された公園に着いたあたしは、
――― 本当にこんなところに来んのかよーっ!?
と心の中で絶叫していた。
疑心暗鬼の中に居たあたしの前に、
何事も無かったかのように真琴は現れてくれたのだった。
あたしは、思わず抱きついた真琴の体温を感じて幸せな気分になっていたので、
――― 学校をサボったついでに、大道芸を観に行こう♪
というお気楽な誘いにも、ついつい乗っかってしまったのだ。
――― この手は不思議なチカラを持っている
歩道橋の上で、あたしは真に手を取られキスをされた。
こんな気障なことをやってくれる真琴を恥ずかしく思いながらも、
嬉しい想いは隠せない。
真琴に肩を抱かれたまま、あたしは真に部屋に帰っていた。
部屋に入って鍵をかけるや否や、真は、今まで散々我慢していたかのように、
あたしの唇に唇を重ねて来た。
何度も知っているはずのその温度と柔らかさに、体が熱くなる。
拒む理由が無いあたしは、押し付けられるその感触だけを味わっている。
――― このまま時が止まればいいのに
そんなことは、真にキスをされる度に考えることだ。
このまま真とずっと繋がっていたいと考えるのだ。
しばらく帰っていない筈の真の部屋なのに、懐かしい匂いは変わっていない。
玄関を入って鍵をかけたとほぼ同時に真に抱きすくめられたあたしは、
この部屋の主を失っていた冷たい床に押し倒されていた。
背中に感じる無機質な冷たさと硬さが、体の前面に感じる熱い温度を際立たせてくれる。
あたしの顔を覆っていた大きな手は、あたしが抵抗しないことを確信したように、
シャツの下からあたしの素肌をまさぐって来た、
あたしの口は真の口によって塞がれたままで、熱い舌の感触を味わうことに夢中になっている。
それなのに、あたしの下腹部から胸に向かって登って来る真琴の長い指の感触も感じてしまう。
とうとう、あたしの胸の突起まで真の指が辿り着いて、
その硬くなった先を熱い指先でつぶされた途端に、塞がれたはずの口から、声にならない声が出た。
その声が聞こえているのかいないのか、
真の指はあたしの胸を大きな手のひらでゆっくり強く揉みしだき、指先はあたしの硬くなった突起を摘み弄ぶ。
両方の乳房を真に触られ続けるうちに、あたしは自分が何処で何をしているのか、
何をされているのか、何もかもを見失う程の気持ち良さに沈みそうになっていた。
どこを触られているのか解らなくなりかけた時に、真の手があたしの下腹部の下へと動いて行った。
ぐちゅうう
――― え?
あたしが気付かないうちに真琴に触れられていることで、
あたしの体は真琴を求め欲していたらしい。
ぐちゅうううう
いつの間にかズボンの中の、更に下の下着の中にまで手を入れられていた。
あたしの体に真琴の指が静かに強く食い込む。
見えない濡れた黒い草むらの中に真の指が埋まって行くのか解った。
その衝撃に思わず反り返るあたしの体を、真が愛おしそうに舐めて来る。
――― いやあああああ
今置かれている自分の恥ずかしさで、本当は全く思っていない拒絶の声が出る。
首までたくし上げられたシャツとブラの存在をうっとうしいと思っているのに、
あたしの総てを手に入れようとする貪欲な真を止めることはできない。
――― いやあ まこ?
――― こんなところで………??
精一杯の抵抗を試みる。
鍵ひとつで外界と隔たれた場所である。
合鍵を持った誰かが、いきなり入って来ないとも限らない。
――― 誰に見られてもいいよ
――― え?
――― なんて?
――― 糸さんがオレのものだって証明できるから、誰に見られたっていいよ
――― ええ??
――― こいつは何を言ってるんだ??
――― なんてね
仰向けのままで脱力した動けない糸に覆いかぶさった真が悪戯っぽく笑う。
――― こんなかわいい糸さんを見ていいのは、オレだけでしょ?
あたしの耳元で真が囁いた。
あたしは最高の性感帯を抑えられて、ただただ息が荒くなるだけだった。
――― どうしよう
――― どうしようもない
――― あたしは真琴を待っている
あたしの顔や体中に何度もキスを落としながら、
あたしの中に指を押し込み続ける真が、
あたしの中心に真自身を埋め込んでくれる瞬間を待っている。
あたしは真の首に手を回した。
真はそれを合図と解ってくれただろうか?
やっとうっすら明けた視界の向こうには、
見慣れた真の優しい笑顔だけが広がっている。
安心した瞬間、開かれた糸の両足の間から何かが食い込んで来た。
――― っあああああああ
熱く固く強いものが、糸を貫く。
覚悟をしていた筈の糸ですら、その痛みに声を荒げる。
――― ……糸さん?
――― ………だいじょう…ぶ?
痛みとショックに喘いでいた糸の耳元に、呼吸を整えきれない真の声が聞こえた。
――― ……だいじょうぶ
真琴の息の荒れながらも優しい声に安心した糸は、
自分の中に入ってくる真琴を、体中の全てで受け入れていた。
立ち上がる乳首も、
濡れ続ける股の谷間も、糸の真への愛情表現のひとつだった。
胸に触れ擦れる真の肌と弾力と体温を感じることも、
糸の中で動く真を、逃がさないようにと締め付ける力に変わった。
重なり合う肌と肌の間から交わる汗の音よりも、
密着重した下半身から聞こえる音の方が大きいことが恥ずかしい。
糸の中で強く熱く激しく蠢く真を、
糸はその動きに全く逆らわずに真の愛に溺れていた。
【管理人より】
ご来訪、ありがとうございます。
あまりにも久しぶりの更新なので、
全部が「一見さん」だったらどうしようっ!?免疫ないでしょっ!?
ひーはー☆
もしかして、もしかしなくても、一年以上ぶりの自力更新でございます。
道理で、エロの書き方を忘れている筈でございます(大恥)。
この話は、【WジュリU】から【Wジュリ】へ繋がる話となっております。
まだ単行本になっていない【WジュリU】からなので、
想像のままにお楽しみください(^^)
新婚さんがやっちゃうのは、
至極当然ですので、それはそれで色んな状況が楽しめますが、
矢張り、行間を遊びたい(行間を萌えで埋め尽くしたい)私は、このような妄想を書いてしまいますです。
私の絵は残念ながらエロくないのですが、
こっちの拍手絵を兼ねてのエロマンガも描きたいと常々思っておりますので、
まったりゆるゆるとお付き合いいただけると、とっても嬉しいですw
お付き合いありがとうございました♪
今度は年をまたがないうちに、新しいエロ世界を提供いたしたいと思いますです!
(2009.08.03)