「へえ そんなことがあったんだ」
「お― まこがいない間 大変だったんだぜー」
「良かったね あのふたり仲直りできて」
5日間の写真集撮影を終えてバリから帰った真を、空港まで迎えに行った糸。
夢を叶える途中に居るふたりは、それなりに世間にも有名になり、
迂闊に素顔をさらせない状況になっていた。
当然、お互いの夢を叶えるまで、ふたりの関係はごく一部の親しい人達以外には封印してあった。
だからこそ、糸は変装して真を迎えに行ったのに、
当の真まで真琴に変身してくれていたのだ。
考えることは、籍を入れて一緒に暮らしている今でも変わらない。
糸も真も、一瞬にして相方の変装を見抜いたのだった。
久しぶりの再会を果たした糸と真は、ふたりの暮らす家路へと急いでいた。
はずだった。
少なくとも、糸の頭の中でだけは。
「?」
糸の目に前に流れる景色が、家路と異なって見えた。
「あれ?」
不思議そうに窓の外に集中し出した糸を、真は見逃さない。
「ねえ 糸さん」
「なんだ?」
糸は窓から目を離さずに隣に座る真に答える。
「寄り道していかない?」
「え?」
そう言われて、やっと糸は真の方に顔を向けた。
「何処行くんだ?」
「○○ホテル」
「へ?」
「5日ぶりに糸さんを見たら 我慢できなくなっちゃったんだよね」
「は?」
真は真琴の姿で優しげに微笑みながら説明した。
「5日ぶりだから 糸さんとゆっくり過ごしたいと思って」
「あたしと一緒になら 家でいーだろ?」
「家に着く時間が勿体無いし」
「!!!」
やっと事情が飲み込めた糸が、慌てふためいた。
用意周到な真に、またしても一杯食わされたのだ。
「ちょっと待て!」
「あたし 何の用意もしてないし それに一慶だってうちに居るし…」
「一慶なら 今頃は茜姉さんとクリスさんが糸さんの実家に連れてってくれてるよ」
「!」
( なんて手回しのいい…… )
「糸さんと早くふたりきりになりたかったから」
糸は、真琴の笑顔を見つめたまま絶句してしまった。
大きなシティホテルの一室に案内された糸と真琴は、まずはお互いの変装を解いていた。
糸は、ほぼ1週間ぶりに会った真の顔を、しげしげと見つめた。
「ちょっと焼けたか?」
「う―ん ずいぶん気をつけて撮影してたんだけど 少しは焼けちゃってるかな?」
「ふ―ん」
自分から質問したにも関わらず、気の無い返事をした糸は柄にも無く口篭る。
「訊きたいのは違うことでしょ?」
「え?」
真はぎゅっと強く糸を抱き寄せた。
「……大丈夫 脱がされてないから」
「え? あっ!」
「これは全部糸さんのものだから」
真は糸の手を取って、その甲に指に口付けをする。
「でも 充電切れちゃったみたい」
糸の手に唇を寄せたままで囁く真の熱い息遣いと声が、糸の手の肌に振動となって伝わる。
真っ赤になって自分を見つめる糸の額にキスをする。
柔らかい肌と唇が、音を立てて何度も触れ合った。
「だから 今すぐ 全部ちょうだい?」
糸の返事も聞かないまま、真は糸を大きなダブルベッドに押し倒した。
――――― 会いたかった
――――― 欲しかった
糸の滑らかな肌を自分の肌で感じながら、真は一心不乱に糸を求めた。
真が糸と離れて暮らすことは、初めてでは無かった。
もっと長い期間を離れ離れになったこともあった。
それでも、何度同じ経験を重ねても、
糸を欲する気持ちに、変化も衰えも感じることは無かった。
遠い異国の地で独り眠る夜に、何度傍らに眠る糸の幻を見ただろう?
何度この温もりに手を伸ばしては、空を掴む感覚に目覚めては溜息をついただろう?
「……ぅあっっっ」
「…まこっ……」
今この手に肌に触れる糸の体と体温が、また消えてしまうような気がして、
消えてしまうことが怖くて、真は糸の体を撫でながら濡れた舌を這わせた。
「んぅんっ……」
どちらから発せられたのか判らないくらいの、声にならない深い息が、繰り返し漏れ続ける。
糸の足を割ってその体を収めた真は、太く熱く育ちつつある自分の分身を、
糸の中心を目指す入り口の草むらに幾度も擦りつけていた。
その度に、糸の腰が前後しながら真を受け入れるべく水を生み出していた。
「ああああっっ!」
糸の準備が整わないうちに、堪えきれなくなっら真が糸の中に一気に突っ込んだ。
「んんああああっっ!」
何度も受け入れている筈の真なのに、まだいつもより激しく濡れていなかったせいなのか、
いつもよりも熱く太く感じてしまう。
糸は、思わず腰を浮かせて衝撃を軽くしようとしたが、
それは真にとっての挿入の手助けにしかならず、
更に奥へと真を導くための行為にしかなっていなかった。
「はあっ……」
糸に全てを飲み込ませた真が、荒い息遣いの下から懇願するように言葉を吐いた。
「糸さん オレを呼んで」
「………あ……」
「まこと……」
糸が自分の中で脈打つ真を感じたまま、ゆっくりと名を呼んでから真の首に腕に絡ませた。
――――― ずっとこのままでいられたら
何度も何度も考えたことを、また今も懲りずに考えてしまう。
――――― このままずっと繋がっていられたら
――――― 心だけでなく、体も繋がっていられたら
そんな切ない想いが重なった瞬間、真の全てが糸の中に放出された。
「……糸さんもイって」
糸の中に自分を刻み込んだ真が、糸の中から自分を抜き出さないまま、
糸を折れそうな程に強く抱き締める。
絶頂を迎える間際だった糸の体は、真に抱き締められながら汗を交わらせただけで悶え震える。
固く赤く立っている乳頭を、ざらついた舌で舐め絡め捕らえられ口に含まれた途端、
その真に捉われたままの細い肢体を、本能のままに思いっきり反らせた。
閉ざされた部屋の中で、糸と真は、唯一無二であるお互いの存在を確かめ合うように、
何度も何度も唇を、肌を、汗を、温もりを重ね合わせ続けていた。
糸の舌が、声が、真を求め、真の舌が、指が、糸を求めた。
繋がり合う隙間を、互いから溢れ出すねばついた水音が埋め尽くした。
ふたりを閉じ込めたぶ厚いカーテンをも通過する日差しが、薄暗い部屋の中に差し込むまで。
ほんの少しだけ開いていたらしいカーテンの向こうから真っ直ぐに届いた陽の光が、
まどろむ糸の目を覚まさせた。
「おはよう 糸さん」
隣で上半身を起こして微笑みかける真に、安心して糸も微笑みながら体を起こした。
「……! つぅっっ!」
糸の下半身は、自分のものとは思えない程に重く気だるい。
「ま〜こ〜〜〜」
恨めしそうに真を見上げる糸に、真は満足そうに朝の挨拶を唇でするのだった。
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〜Wジュリ番外編第9弾に寄せて〜
2007年末に発表された、【Wジュリ番外編第9弾】からの妄想発車でした。
今回の本編の主役は、与四郎&美咲というCPですので、
このふたりの週3日の若々しい性生活(新年から露骨)については、ご自由におのおので妄想して悶えてください。
私の上記の戯言は、原作を読んでいなかったら、さっぱりわからん話と思いますが、
原作を読まれた方に、「そーよっ!」と、一部でも共感して楽しんで頂けたら本望です。
私の中の糸まこは、いつも初々しくかわゆいですvv
もし、そう見えなかったとしたら、私の文章力と表現力不足です。
愛だけじゃあダメなんだよおっっ!(←自覚はあるけど くじけない)
白状すると、今回の創作のネタもとはSさんです。
Sさん、プロットありがとうございましたvv
もしかして、くれるつもりじゃなかったなら、ごめんなさい。
もう手遅れなので、諦めてください。(確信犯)
ありがとうございました。
では、この世界に何度も足を運んでくださる皆さまにとって、
「今年は良かったよねーーーーーっ!」
と、今年の年末に、迷い無く力強く叫べる一年になりますようお祈りいたしつつ撤収。
お付き合いありがとうございました。
今年も、許せる方のみどうぞよろしくですm(_ _"m)
(2008.01.03)