「良かった―――――
 劇 止められそうになった時はどーしよーと思ったよ〜〜〜」
「駆け落ちしないで済んだね」
「まったく」

深夜の体育館。
糸が真琴の正体を知っていると気付いた椿を説得するために、茜の協力を得て文字通り一芝居打ったところだった。
椿に認めてもらった糸と真は、それまでの緊張を打ち消した安心感を胸に、ステージの上に寝転がっていた。

「やっぱり卒業した後も、糸さんとこうして芝居をしたいと思ったよ。広い広い劇場でいつか・・・・・」

糸は、さっきまで自分が衣装として身に付けていたベールを頭から被ったまま、真の想いを聴いていた。
(あたしもそう思う・・・・・・。)

「何だ こんな時間に誰かいるのか?」
「!!」

当直の教師が、人の気配に気付いたのか、見回りに入って来た。
がばっと起き上がり、寄り添って息を潜める糸と真。
こんな危うい状況の中にもかかわらず、真は思わず糸の額に口付ける。
つい、笑ってしまう糸。
はにかんだその笑顔に真も微笑む。

カツコツカツコツカツコツ・・・・・・・・
靴音が小さくなり、やがて体育館の扉が、元通りに閉まった。

糸の額に触れていた真の唇は、そのまま糸の頬を伝って唇にたどり着いていた。
(また一緒に居られる)
ふたりの想いが重なる。

―――――あたしは まこの為だったら何でもするし いつでも覚悟はできてる―――――

絶対絶命と覚悟したあの時、保健室で聞いた糸の言葉が真の脳裏に甦る。
(――絶対に離さない――)

糸の柔らかく甘い唇の感触を楽しんでいた真の唇が、いつしか熱い舌を伴って、
糸の口をそっと開けさせていた。
糸の並びの良い歯を真の舌が滑りながら、奥へと入って行く。
そして、そこに糸の舌を見つけた途端、自分の舌を絡ませる。
「あ・・・」
糸の口から思わず声が漏れる。
真の右手は糸の肩に、左手は糸の頬に触れている。
真に触られている部分が、熱くて心地良かった。
更に、糸の口の中の全ての感覚が真を感じている。
いつしか糸の舌も真の中に吸い寄せられていた。

どのくらい時間が経ったのか・・・・・。
真の右手が糸の胸の上にあった。
薄いタンクトップの上から、糸の胸を形良く覆っている。
糸の真の腕を掴んだ手に、少し力が入る。
それを感じた真は名残惜しそうに、糸から唇を離す。
まだ酔っているような糸に、今度は何度も唇だけの軽いキスをしてから、
そっと背中に手を回し、さっきまで横たわっていたステージに静かに糸を倒していく。
糸と床の間にさり気なくベールを敷きながら。
そして、そのまま糸の体に自分の体を重ねる。
体重がかかりすぎないように、細心の注意を払いながら。

「まこ・・・・・」
小さな声で真を呼んだ糸の腕は、無意識に真の背を抱いていた。
真はそのぬくもりに確信を持って、糸のタンクトップをするりと脱がせると、自分もTシャツを脱いだ。
糸の腰をそっと浮かせて、ブラのホックを難なく外す。
僅かに入り込む月明かりが、糸の白い乳房を一層白く浮かび上がらせている。
さっきのキスからほんのり形を作り出した糸の乳首に誘われるように、真はその片方に吸い付いた。
それは真の口の中で、面白いように形をはっきりさせていく。
もう片方は、真の長い指でいじられ、同じように立ち上がろうとしていた。
「あ・・・」
思いがけない気持ち良さに、糸は体をよじらせた。

糸の乳首を十分に味わった真は、糸の短パンに両手をかけ、ゆっくり静かに下ろす。
糸は真に全てを委ね、されるがままになっていた。
糸の最後の下着も外した真は、自分も全て脱ぎ払っていた。
何も身にまとわない状態で、優しく強く糸を抱きしめる真。
糸のこらえたような吐息が真の髪に、さっき育てた乳首が胸に当たる。
糸はお腹の下に、熱くなったもうひとりの真を直に感じていた。
その真は本当の真と同様に、糸の中に入りたくてたまらない感情をみなぎらせている。

(もういい・・・・・)
どちらからとも無く誘い合う糸と真。
真は糸への入り口を指でそっと確認すると、もうひとりの自分を入れ始めた。
糸の体温と同じ温度で、糸の体液が真の侵入を快く迎えている。
だが糸は、まず痛みを感じて顔を歪める。
そんな糸の顔を真は大きくしなやかな手で優しく撫でながら、もっと奥へ沈み込んで行く。

「あん・・・・・」
真が深く入って来るほどに、糸の小さな痛みは大きな快感に変わっていった。
糸の顔から苦悩の色が消えたのを確かめるように、糸の髪に頬に瞼に唇に真の唇が触れる。
そして我慢できなくなったように、真は糸の腰を抱いたまま激しく動いた。
そんな真を、糸は強くしっとりと受け入れる。
糸の中で真がどんどん大きく膨らんでいくのがわかる。
その分、糸の意識は言い知れない官能に支配されて、小さく消え入りそうになっていった。













―――――その後

ある日の教室にて。

「あたし まこのアパート当分行かないから」
「え」
「ほとぼり冷めるまで自粛する」

「だから休みはまこが家に遊びに来い」
「なにそれ 命令?」
「おう 命令」

にっこり笑い合う糸と真琴。
いつもの風景。




またふたり、一緒に居られる。
そう、きっとずっとふたりで居られる・・・・・。






<球技大会後>