「おねーさん?」

「つばきちゃん 見て」



――――― 眠れないからお話しない?

      慰問に来てくれたお姉さんがそう言うから来たのに。
      どうして、この人も居るの?
      それよりも、どうしてお姉さんの髪が外れるの?
      それに、さっきまでと違う声?



「緑の家」と名付けられた児童擁護施設に、
桜ヶ丘高校の演劇部が1泊2日で慰問に来ていた。
20人の児童は、部員達に親しげに懐いていたが、
つばきという歌の上手な少女は、糸だけを無視していた。

それは、糸が見てしまったつばきの歌う姿に感動し、
他人の介入を望まないつばきの心に深入りし過ぎてしまったからなのかもしれない。
つばきは自分の境遇に遠慮して、才能を開花させる道は勿論、
歌手への夢を諦める準備をしていたところだったのだから。

真琴は、自己嫌悪に陥りそうになる糸はもちろん、
自分の境遇をわきまえ過ぎることで夢を捨てようと大人の顔色を伺うつばきに、
いつしか自分を重ねていたのかもしれない。

そんな糸と真琴の思惑があって、皆が眠る夜更けに、
つばきは真琴に声をかけられたのだ。




淡い月の光の中で、つばきが頭の中を整理しようと一生懸命になっていた。
目の前には、さっきまでお姉さんと信じきっていた人が長い金髪のウィッグを外し、
その奥には、自分を苛立たせてばかりの糸が机に腰かけていた。


「・・・え 声・・・」

「男だよ いつも女のフリしてるけど 秘密を知ってるのはあたしだけ」

つばきが糸の補足も信じられないというように、真に戻った姿の体をぺたぺたと触った。

「誰にも男とバレずに高校生活を女で通せたら役者の道に進んでもいいって親が出した条件なんだ

 でも まわりに男だとバレたら夢を諦めて家を継ぐ約束になってる」

「何でそんな あたしなんかに バラしたら」

そんな秘密をあたしなんかに話していいの?とつばきの表情に表れる。

「知って欲しかったんだよ つばきちゃんに」 

「自分から諦めたら夢はそこで終わってしまうんだ オレは 諦める前にできるだけの事はしようと思う

「少しでも望みがあるなら可能性があるなら夢は諦めちゃいけない 自分に負けたら駄目だ」

「・・・おっ 男の人なのに嫌になったりしないの!?」

頬を包むように大きな手のひら抱かれて、急に恥ずかしくなったつばきがとっさに問い掛ける。

「たしかに女装はね」

真が外したウィッグを手ににっこり微笑む。

「でもこの生活のおかげで二つの希望を見つけたから 諦めないで良かったと思うよ」






真の話に納得したのか、つばきは静かに自分の部屋に戻って行った。



「・・・これで考え直してくれるといいけど」

どすっ!糸が真の頭を蹴った。

「そんな事より良かったのかよ 全部バラしちゃって もしも明日!施設中に広まってたら!!」

「だから先に許してって言ったじゃん」

「あのな」

「・・・・・・・・・・ あの子は言いふらすような子じゃないよ」


「まっ・・・ 真琴?」

行儀悪く机に座る糸の腰に、真が抱きついた。

「自分でも なんで自ら暴露してるのかなって思うよ でも 夢を諦めて欲しくなかったから」

「こんな風に抱きついて来たのは初めてだな・・・甘えてる?」

「いいじゃん たまには逆でも     ・・・居てくれてありがとう」



糸は優しく真の頭を抱き抱えた。

使われていない部屋のせいか、閉じられていないカーテンによって遮られることなく、
柔らかい月明かりが入り込む。
少しうつむいた視界に広がる月光に照らされる真の頭は、
金色の野原のように穏やかだった。
そっと抱き締めているその金色の髪に顔を埋めると、
心地良い真の香りが彼への愛しさを倍増させる。

自らを危険にさらしてまで、ひとりの少女の夢を繋ごうとしている真の温かさが伝わって来る。

お前はあたしが守るから

糸の腰に回していた真の腕に、少し力が入った。

どのくらいの時を静かに抱き合っていただろう。
窓から覗く月の位置が少し動いた。

糸は真の顔を少し持ち上げて、見えた白い額に唇を寄せた。
糸からの小さなキスに驚いた真がもう少し顔を上げると、
糸は待ちきれないように真の瞼や眉間やこめかみに・・・・・・、
まだ触れていないところはどこかと探すことが難しい程に、
真の顔中にキスの雨を降らせていた。

真のことがただただ愛しくてたまらなかった。

それだけだった。
糸は彼の顔にキスをし続けながら、細そうに見えて実はがっしりした彼の腰に手を回す。
少しでも長く真に触れていたかった。
触れていない場所が真の唇だけになった頃、真の方から糸の唇を塞いで来た。
いや、殆ど同時に求め合ったのかもしれない。

唇を濡らすだけでは物足りずに、
真の舌が糸の口中を動き回る。

糸は何の抵抗もできずに、真の舌に自分の舌を絡め取られる。
舌と舌が纏わりつくにつれて、
糸の体が疼いて行く。
もっと触れて欲しい。
もっと触れていたい。

真の手が糸の股間に触れた時、そこは既にじんわりと湿っていた。

恥ずかしさよりも、欲求の方が勝っていることがわかる。

糸は真のことが欲しくてたまらなくなっていた。


真の手が糸の柔らかな胸に伸びて、
その形を確かめるように外側から何度も指を扇のようにまとめている。

下着とシャツを隔てているのに、糸には真の指の動きが手に取るように伝わる。
真は、シャツの上から糸の乳房を刺激し高台を作り上げて行った。
糸の体が真の手の動きのままに開発されて行くようだった。

「・・・・・糸さん」


「・・・・・ん・・・・・まこ」


酔ったような糸の声を聞いた真は、
糸のシャツの前をはだけさせ、下着を首の方へ押しやり既に尖っていた乳首に吸い付いた。

「・・・・・やっ・・・・あ・・・・・」


思わず快感の声を真に浴びせてしまう糸。

真は糸の硬くなろうとしている乳首に吸い付いたまま、糸の股間に手を伸ばし、
布の上から敏感になっている割れ目を忠実になぞった。

「・・・・・・あん・・・・」

おそらく糸本人も気付いていないであろう程の、艶めかしい声が漏れ聞こえる。

真は糸の乳首に吸い付いたままで、糸を座っていた机に押し倒した。

姿勢が変わったことで、少しだけ自分を取り戻した糸が真を制する。

「・・・・だれか 来る」

糸の不安気な言葉に真は全く動ずることなく答えた。

「だれも来ないよ」


そう、真はつばきを送り出した時点で、この部屋の鍵をかけていた。
鍵のかかる建物の中でも比較的人の通らない部屋を見つけておいたのだ。

卒業するまで、たとえ卒業したとしても、糸とこんな深夜にふたりきりになれることが、
この先いつ訪れるだろう?
そうとっさに考えた真の用意周到さも見事であった。


真の言葉に安心したかのように、糸の緊張がほどける。
自分のズボンを下ろそうとする真のために腰を浮かすほどに。


「・・・・・糸さん」

「・・・・あ・・・・」

押し倒した糸の乳房に執拗に吸い付きながら、下着も下ろされた茂みに手を伸ばすと、
その割れ目は驚くほどに濡れていた。

「・・・・ん・・・・・」

こんなに濡れてるなんて。
糸の感じように動揺しながらも、その茂みを伴う割れ目に指を入れてみる。

「・・・あああっ」

入り口でたゆたゆになっていた液が、真の指の刺激に耐え切れず溢れ流れた。
それと同時に糸が体を仰け反らせた。

「・・・・やっっ・・・・・ああっ・・・・・」


真は堪えていた自分の下半身を解放すると、糸の両足を開いた。
白い月の光に照らされた黒い艶やかな茂みが、間違いなく真だけを誘っていた。


糸はあられもない格好でいる恥ずかしさで錯乱しそうになりながらも、
月明かりに照らされながら自分を見つめる真の姿から目をそらせずにいた。

真っ直ぐな偽りの無い瞳がそこにあった。


そんな清らかな光の中の真の総てを、受け留め受け入れ抱き締めたかった。








――――― オレが望むものは二つだけだよ

――――― 一つは もちろん役者になること

――――― あとの望みは糸 君の総てを









真琴の秘密を知ってしまったあの少女が、真琴を慕うようになってしまったことを、
薄い月光の中で真の吐息を体中に感じている糸には、微塵も予測できる筈が無かった。













<―- 月光 ――>



















===== どーでもいい創作裏話

毎度のお付き合いありがとうございました。
お初で、ここまで一気にいらした方、お疲れ様です。(笑)

入院した頃の書類の整理をしていたら、
出て来ました、この話の断片が!
どうやら、ここからエロ発進しようとして挫折したらしいのですが、
途中から自分の字が、本当にミ○ズ(←この世でいちばん大嫌い)に見えて来まして。
もう解読も解明も諦めて新たな気持ちで突き進んでみました。
誰かに「これ読める?」と訊ける内容じゃないことだけは解りましたので。
信じるのは自分だけ。


本編からの展開は想像&妄想が尽きないので、とてもとても楽しいvv
のが、世界で私だけでもいーです。(開き直り)


2007年4月14日にWジュリ番外編第7弾〜真澄パパ&理紗ママ編〜が発表され、
こんなことやってる場合じゃなくて感想文を!
という時なのですが、こうしてこの世界を更新できるのもWジュリパワーの賜物ですvv

萌えのベクトルが、いつも微妙に方向ズレしているようですが、気のせいです。


では、また新しいところから熱い世界に突入できました際には、
お目通しいただけますように。

糸まこ萌えをお求めの皆さまに、素敵な妄想ネタを提供できれば本望ですvv





(2007.04.18)