ぬるっとした滑らかな感触に指先が包まれた。
閉じた瞼の向こうには、まだ見たことの無い筈の白い肌が広がる。
真はパジャマの下に手を入れたまま寝返りを打つと、深い深呼吸をした。
周囲からの微かなダリの残り香を、空気と一緒に吸い込む。
糸の下着姿を見たのは初めてではない。
まだ自分を男と知らずにいた頃、ふたりきりの部室で着替えを披露してくれたのだから。
「お前 女か?」
「どれ もいっぺん触らせてみろ?」
「なんか 体やわらかくねー?」
糸の身体に触れて、性別を確かめようとしたあの見知らぬ男達を思い出す。
その光景を思い出すだけで、嫉妬と羨望が入り混じっているようなどろどろな気分に襲われる。
――――― まだオレも触ったこと無いのに・・・・・・
無抵抗な糸の胸や身体をべたべたと触ったあの男達への複雑な感情が込み上げる。
――――― 糸さんの身体は どんなに柔らかかったのだろう?
まだ自分が触れてはいけない領域に簡単に踏み込んでいたあの男達が、憎らしくも羨ましい。
糸を抱き締めたり、口付けを交わしたことはあっても、
衣服の下に隠れた肌に直に触れたことなどは無い。
卒業して本来の男の姿に戻るまでは、その一線を越えてはいけない。
だからこそ、今日は誕生日の贈り物に重ねての愛の告白を避けたのだ。
今の歯痒い立場を越えられない真なりの決意もあったのかもしれないし、
それ程までに糸を大切な女の子として扱っていたのかもしれない。
寝返りを打ち、シーツのまだ触れていない冷たい場所に顔を置くと、
白い布が火照った熱を吸い取ってくれるような気がした。
だが、高くなっている体温が、すぐにシーツを温めてしまう。
真は自分の体温と、抱き締めた時の糸の体温を重ねて思い出す。
その記憶の中にはある筈の無い糸の素肌の感触が、体の中に甦って来る。
ほの温かく心地良い自分より少し高いらしい糸の体温。
痩せているのにふっくらと感じられる柔らかい自分には無いしっとりとした肌。
そして、いつも真っ直ぐに自分を見つめていてくれる深く濃い褐色の瞳。
瞬きするその僅かな時間すらスロー再生されているように、
真には糸の睫毛の長さすらはっきりと見える。
自分を呼ぶ糸の声が、いつもより甘く聞こえる。
真の中心がどんどん高ぶりながら、糸を求めて固く膨れ上がって行く。
欲しいモノを目の前にして涎を垂らすように、その固い先の割れた口から溢れる白い液体。
彼女のしなやかな肌に抱かれたら、どんなに幸せな気分になれるだろう?
そう考えただけで、真の芯が我慢できない駄々っ子のように奮い反り勃つ。
「 ・・・う・・・・・・ 」
糸への想いを詰め込み、届けといわんばかりに太く長く成長した真の分身が、
糸の体内を求めてそそり勃つ。
あまりの急な育ちぶりに驚き思わず指で支える。
「 あ・・・・・・ 」
自分の指が触れているのに、糸の肌に触れられているような錯覚に陥った。
この中にある想いの総てを、解き放ちたい。
この中にある総ての想いを、糸の中に届けたい。
僅かな甘い香りが鼻腔を通り抜けた。
何も身に付けていない糸が、今にも泣きそうな切なそうな顔で自分を見つめている。
潤んだ目でじっと自分を見上げている糸が、自分を迎えるようにゆっくりと両手を広げて少し微笑んだ。
糸の白いなだらかな丘が、緩やかな曲線をいくつか描いて真の面前に広がっていた。
――――― まこと・・・・・
真の総てを許す意を込めたような糸の声が、荒い息の向こうから聞こえた。
その声を頼りに、白い丘の一つを選んで草むらに割り込み、自分の身体をその間に埋め込む。
それまで聴いたことも無いような糸の、甘く切なく甘美で痛々しい喘ぎ声に包まれて。
それまで感じたことも無いような糸の、熱く強くねっとりと締め付ける肉体に包まれて。
真から零れ出る液が、糸の中で真を待ち焦がれ溢れる出る液と交じり合う水音が聞こえる。
真から流れる汗が、糸の汗とじっとりと混ざり合う音よりも濃く聞こえる。
そんな願いを叶えたいと思えば思うほど、真の指は膨れ上がった棹とその先頭を刺激した。
真が自分で自分を高みへ追い詰めているのを忘れかけた頃、
糸への一方的な気持ちが絶頂に達し、想いの総てを外に噴き出した。
生ぬるくねばついた白い液が、真を刺激していた自身の手のひら全てを覆った。
うっすらと記憶に残るダリの香りが、今よりも強く自分と糸を結び付けてくれるに違いない。
明日からは糸と同じ香りを纏うことができる筈だ。
今は自分の香りでしかないこの香りが、これからは彼女の香りと重なって一体になる。
真は、大きく一息吐くと、いつか糸にこの想いの総てを送り届ける日が来ることを信じて、
静かに目を閉じた。
< ―― 欲 ―― >
<管理人より>
書き逃げ。
(2007.02.03)