「こんにちは 今日もよろしく」


こんな他愛ない挨拶を、糸さんに何食わぬ顔でするオレ。
こんな風に平静を装うのが、どんなに難しいのか解ってる?
どんなに手を伸ばして抱き締めたいのか解ってる?

でも、糸さんをオレの事情に巻き込んで傷付けるのは絶対にイヤだったから。
いつか、正々堂々とオレの隣に糸さんを紹介するまでは、覚悟しなくちゃ。

その肌に どんなに直に触れたいか

その唇に どんなに直に触れたいか

その声に どんなに直に触れたいか


ねえ どのくらい解ってる?

ほんの少し手を伸ばせば届くのに ―――――








         「こんにちは 今日もよろしく」


急に離れて暮らすことになったのに、現場で会う真はいつも涼しげに挨拶をしてくる。
ココでは、ただの共演者として過ごさなければならないのだから当然と言えば当然だけど。
あたしの愚痴を聞いてくれる茜さんにも、真は顔に出さないだけだから彼なりに色々と考えていると諭された。
それでも、常にあたしの方が真に会いたがっているんじゃないだろうか?
真に言うとあいつを喜ばすだけで悔しいから、絶対に言わないけど。

それでも、あたしだけに向けてくれる声すらも聞けないことが、やっぱり悲しい。
共演者として一人の役者として認めて接してくれるのは嬉しいけど、やっぱり淋しい。

その手が触れるだけで どんなにドキドキするか

その髪が揺れるだけで どんなにドキドキするか

その声が聞けるだけで どんなにドキドキするか


なあ ちょっとでも気付いてくれてるか?

目で追うのが精一杯だなんて ―――――











        「あたしと会えなくて淋しかったのか?」
        「そりゃ当然 仕事に身が入らなかったよ」

        「そ―んな風には見えなかったけどな―」
        「痛い痛い」

        「ホントに」


真の頬を摘んで意地悪をしている間に、あたしの方が耐えられなくなった。

いつもは、真からしてしてくれるキスも、
きっともう少しだけ待っていればしてくれた筈なのに、今は待ちきれない。

あたしは初めて真の唇を奪った。

真の思いがけないことに驚く顔が新鮮で嬉しい。

あたしは真を愛している。

声に出して言うことはなかなか出来ないけど、真の総てを愛している。

真もう絶対に離れたくないと思いながら、あたしはもう一度顔を寄せて唇を重ねた。



        「・・・けっこう 淋しかった?」


なんで そんなに静かに笑っていられるんだ?

あたしがこんなに会いたかったのに、
またあたしだけが一方的に会いたがっていただけなのか?

そんな疑問も吹き飛ぶくらいに、変わらず綺麗な真の笑顔にあたしは見とれてしまっていた。








        「・・・けっこう 淋しかった?」


淋しかったのはオレの方だよ?
顔に出ないだけだって、前にも言ったじゃない?

だから糸さんからのキスは、嬉しくて本当にドキドキしたんだ。
自分からオレの唇を奪っておいて、恥ずかしそうにしている糸さんはやっぱり可愛い。
そう、いつだってオレの前の糸さんは何をやっても可愛くてたまらないんだ。

糸さんを守る為に離れて暮らしてみたけど ・・・・・・独りではぐっすり眠れなかった。

これまでも離れていることはあっても、そんな時には、予め充電していたからこそ耐えることができたんだ。
それが、今回は予想もしないことで突然に糸さんと離れ離れになって。

オレは糸さんが居ないと、本当にダメみたいだ。
改めて思い知らされたよ。

せめて、糸さんには、こんな辛い思いをさせたくない。

そう思って、普段は出来ない指輪をはめてみた。

これは今はふたりきりで家に居る時でしか表せない、オレが糸さんのモノだという証しだから。

糸さんにはオレがはめてあげるからね。























     ほんの数日、家を離れて過ごしただけなのに―――――


     会いたくて会いたくてたまらなかった。
     声が聴きたくてたまらなかった。

     その愛しいお互いが目の前に居た。

     仕事の上では、共演者として毎日顔を合わせてはいた。
     だが、共演者以上でも以下でもない存在として、お互いと並んでいなければいけない。

     真と同じ役者を目指す糸には、真が所属する事務所の言い分は良く解っていた。
     真は、独身の俳優として売り出されている。
     その真の陰に糸の姿が垣間見えては上手くない。
     それは糸にしても同じことである。
     糸の方から真との関係を暴かれることも避けなければならない。 


     だからこそ、ふたりきりで家に居る間は、誰にも邪魔されずに真と過ごせる大切な時間なのだ。


     今日はクリスマスイブ。
     出会ってから初めて、ふたりきりで過ごせる筈だったクリスマス。
     それが、思わぬ事態によって、叶わない夢に終わるところだったのだ。 
   

     糸から不意のキスを受けた真は、一度は驚きながらも、
     嬉しくて求められるままそのぬくもりに酔っていた。

     数日ぶりに触れた糸の身体は柔らかく、その唇も温かく滑らかだった。
     自分の頬に添えられた糸の掌から伝わる独占欲も、真には至福の行為に感じられていた。

 

     真に触れている場所は勿論、真に触れられている場所からも伝わる熱が糸の理性を破壊する。


     ――――― 真に 抱かれたい

     そんな声にならない思いが通じたのか、

     ――――― オレには 糸さんだけだよ
  
     何度言われても初めてのように胸が締め付けられる真の言葉が、糸の耳に聞こえた。

     ――――― オレが抱きたいのは 糸さんだけだから

   
     真は優しく強く糸を抱き寄せて、紅潮した糸の頬に自分の頬をすり寄せた。
     触れ合う滑らかな肌で、忘れそうになっていたお互いの熱を確かめ合う。
   
     糸は真の頬に添えていた手のやり場に困りながらも、真に抱き締められ続けていた。
     頬に吸い付くように寄せられた真の顔から、熱い吐息が糸の髪と耳にかかった。
     その瞬間、糸は更に強く抱き締められると同時に、自分の身体に真の一部が固く当たるのを感じた。
     真の理性との戦いを知った糸は、自分の身体も十分に火照っていることを認めていた。

     糸が真の想いを肯定するかのように、行き場を失っていた腕を真の頭に絡ませる。
   
     「まこと・・・・・」
     耳を澄ましていなければ聞き逃すような小さな声で、糸は真を促した。
     糸のふたつの膨らみも、固く跳ね上がったまま真の胸板に押し付けられている。 
       
     真は糸の声を合図に、その華奢な身体を壁に押し当てて腰を浮かせた。
   
     下着を半端にはだけさせたまま、白く艶かしい太腿の間に割って入る。

     「あ・・・・・」
  
     内股に真の体温を感じただけで、糸の身体は善がってしまう。
     真は自分の上着と糸の上着をたくし上げて、直に肌を重ねた。
     糸の白く艶やかなふたつの膨らみが真の逞しい胸板に押し潰され、その綺麗な形を変えてしまっていた。

     真は糸の上の口を舌でまさぐり、下の口を指で確かめていた。

     「・・・ん・・・・ふぅ・・・・・・」
   
     既に細く零れている愛液を伴った真の分身が、糸への入り口辺りを動き回り刺激する。
     真を抱き締める糸の腕に力がこもった。
   
     「・・・・・まこ・・・・・」

     溢れそうな愛液で濡れそぼっている茂みから糸の中にぬるりと入って来る真が、待ち焦がれた糸の全ての感覚を刺激した。
     糸の腰を支えながら糸の重さを使って、真がより奥へと侵入して行く。

     「・・・・・あぁ・・・・・・」
     この世で唯一真しか聞くことのできない糸の甘い喘ぎ声に誘われるように、
     糸の細い身体を貫くかと思うような太く固く長い意志で、真が糸の一部になろうとしていた。
     一緒に暮らすようになってから、今までに何度も交わった筈なのに、
     糸の身体はまるで処女のように真を締め付けて離さない。
     そのために少し腰を動かしただけで、真は意識が飛びそうな程に快感に襲われた。
     真の襞と糸の襞が、弛まなく流れ続ける体液の中で、何度も何度も擦れ合う音だけが、
     雪に包まれた部屋の沈黙を破っていた。

   
     このままずっと離れずにいられたら・・・・・・・。








      「・・・・・糸さんが側にいてくれれば それでいいよ・・・・・・・」


     真を受け入れ抱き締める糸の目から、喜びの涙がつーっとこぼれた。
   
   






     ふたりの願いは、いつも同じ場所に重なっている。









     そう、ふたりで天使の雪像を作り、同じ願いを重ねたあの時と変わることなく――――――――











     Merry Christmas ・・・・・    Be happy ・・・・・




















<番外編・第6弾に寄せて>





















<あとがき>


性懲りも無く、【Wジュリ】番外編に寄せて一気に書いてます。
恐るべしワンパターン・・・・・・・・(自覚あります)。
読んでくださった方に、心より御礼申し上げます。
ありがとうございました。(礼)

表での感想もまだアップしていないのに、辛抱たまらん状態で裏で叫びますっ!

いーんだ。もともと裏をやりたくてサイトを作ったんだから。
↑初心に帰って開き直ってみる。

【WジュリU】1巻発売と【番外編】が同時に読めて、何か天誅とか落ちるんじゃないかしら??
こんな世界を構築している私は、少しばかり不安にもなりますが、
それよりも、「【Wジュリ】が大好きだーっ!萌えてるんだーっ!」
このように世界中に向けて絶叫するイタイ人に成り下がっております。


さてさて。
今回の【Wジュリ番外編】。
表での感想は「いつまでもラヴラヴv きゅ〜〜〜★」
でしたが、
裏での感想は「勃っちゃうよ?」
の一言に尽きました。(R15)

・・・・・ああ、スゴイ勢いで潮が引いて行く音が聞こえるようです。爽やかだわ〜。



今回は久しぶりに、糸さんとまこりんの両側から並行して書いてみる気満々だったのですが、
予想通りに途中でへこたれまして。
非常にあやふやな切り込み部隊と化しており、読み辛くて申し訳ありません。



今回の番外編は、いつも以上に、糸さんとまこりんに限らず、いろんな台詞で悶えましたvv

そして、度を越えて可愛くなる巴ちゃんvv
彼女(彼?)が可愛くなればなるほど、私の中の妄想パラレルの巴ちゃんは、強く逞しい彼になって行くのですvv
まこりんの最大の恋敵は、実は本家の跡取り巴ちゃんなのです。(←そっとしておいてやってください。)



毎度毎度ですが、Wジュリばんざい!
心優しい皆さまにも穏やかな幸福が訪れ続けますようにvv

Merry Christmas ...........





(2006.12.24. 管理人拝)