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===空白のとき===[エピローグ]===
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「ねえ 糸さん」
「うん?」
糸が、けだるそうにシーツの上で、真の方に顔と体を向けた。
「本当に何も覚えてないの?」
「何度も訊くなよ」
糸には数ヶ月間の記憶喪失だった期間の記憶が無かった。
「あたしが まこのこともみんなのことも全部忘れてたってことだろ?」
「おぼえてない」
「じゃあ しょうがないね」
「その間 オレがどんなに辛かったか もっとわかってもらわなきゃ」
「え?」
「ちょ ちょっと まこ?」
つい数十分前に、糸は真に抱かれたばかりだった。
久しぶりのHは、糸の体をぐったり疲れさせていた。
無論、記憶を無くしていた糸には、
真との交わりはそんなに時を隔ててはいない感覚だったのだが、
体はまるで初めてのように反応し、すっかり疲れ果ててしまっているようだった。
それを知ってか知らずか、さっきと同様に、真が糸に覆い被さる。
「今度何が起こっても 糸さんがオレのことを忘れないようにしなくちゃね」
真が糸の顔を包んで唇を重ねた。
何度か唇を交わすようなキスをした後、
真は舌で自分と糸の唇を濡らしながら舐めるようなキスを続けた。
糸は、真が求めるがままにされながら上下の唇を離した途端に、ヌルついた舌をねじ込まれた。
「んっ」
糸は侵入して来た真の舌をどうすることもできずに、ただ行き場の無い自分の舌のやり場に困っていた。
真は、おどおどしている糸の舌を自分の舌に絡ませ強く吸い込み、一息ついて解放した。
「はっっ」
苦しそうな酔っていそうな糸の顔を見ながら、真はその高揚した頬に唇をなぞらせる。
いつの間にか糸の背に回した真の腕と手が、糸の滑らかな背骨の線を確かめながら抱き締めていた。
回した腕が余るほどに細い糸の腰が、切ないくらいに愛おしくて狂おしいほどに独り占めしたくなる。
頬から白い首筋に唇を移動させ、誰も知らないであろう、
糸の女性としての象徴である胸の頂に辿り着く。
「・・・・・・ぃやっ」
赤い頂を舌で舐め吸い付きながら、その合間に糸の苦痛にならない程度の強さで、
白いなだらかな乳房に歯形を残す。
糸に気付かれないように、緩やかな甘噛みの中で、幾つも幾つも幾つも幾つも。
糸が真のものであるという、儚い証拠を残すかのように。
真の執拗な愛撫に、糸は何度も意識を失いそうになっていた。
それでも、糸の抑制も空しく、真を求める足の間からは温い水が流れ出ようとしていた。
真を肌で舌で感じて逆らおうとしていても、糸の芯からが真を求めているのに違いないのかもしれない。
どんなに真を求めて濡れていることを察しても、糸自身から露に足を広げることは躊躇われた。
だが、糸の温い水は止め処なく溢れているような気がするくらいに股間はヌルついている。
真は糸の足の間に手を入れた時から、糸が自分の行為に反応している確信を持っていた。
それ故に、糸への入り口の茂みから先へは侵入せずに、
その入り口の茂みが生える膨らんだ丘で、糸の感情が盛り上がる様を観察していた。
だが、糸の悩ましい表情や、糸の入り口を撫で遊ぶ自分の手をねっとり濡らしてくれる液に、
真自身が冷静を装って反応せずにいられる筈も無かった。
真は自分の中心を、いつでも糸の中に埋め尽くせる準備を整え尽くしていた。
「いやあ……まこ……」
糸の体に触りまくり舌を遊ばせながら、なかなか侵入して来ない真。
「まこ……」
「……来て」
糸がとうとう根負けして、真を誘った。
真はこの時のために我慢をし尽くしていたのだ。
「糸さん?」
「オレが欲しい?」
「……ばか」
真は、糸を軽々とうつ伏せにして、その後ろから育ちきった自分の分身を突っ込んだ。
「あああああっっっx!」
待ち望んだ快感と、何とも言えない異物感の侵入に、
糸の鳥肌が立ちそうな悲しくも甘い声がほとばしる。
「…んぅ…ぁああっっ……」
糸の中で、浅い川に溺れるように真の竿が何度も回転するように動き抗う。
流れに逆らうように動く度に、竿の先が糸の中を刺激し、
その刺激はそのまま真の竿の先へ激しく連なった。
「… んぁっ …ゃあああっっっx」
糸の乳首を噛む真の頭を抱き締めながら、糸は忘れかけていた欲情だけに身を任せるのだった。
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ココを書きたいがために。
2年近い空白のときを経ました。(笑)
こんな奥深くまでのお付き合い、ありがとうございました。
(2008.02.08)