「これ・・・・・中学時代のマコト君が映ってるわ 

 私がいちばん見て来た彼を あなたにあげる」


「隆世ちゃん!」


「でもお別れは言わないわ 2人の初舞台のときは必ず招待して―――・・・」


「・・・ありがと  あたし

 隆世ちゃんの事

 嫌いじゃなかったよ・・・」


そう心から告げる糸に、はにかんだ微笑を残して小さく手を振る隆世。

彼女は、既に元の学校へ戻る意志を固めていることも糸に告げていた。



糸は、隆世を疎ましく感じたことはあっても、嫌ったことは無かった。


すべては真という男性。

ふたりにとっての共通点は彼が唯一全てだったのだから・・・・・。


       あたしの知らない真を隆世ちゃんが知っている。

       隆世ちゃんの知らない真をあたしが知っている。



ここまでは、ふたりは何もかも同じだったかもしれない。





       あたしは、ただ、夢を追う真琴の力になりたいと思った。

       真を異性と感じ出したのはその後だった。

       隆世ちゃんは、ただ、真を好きだった。

       真をずっと異性として好きだった。

       想いに重さがあるとしたら、その重さを計れるとしたら、

       あたしは隆世ちゃんには勝てないかもしれない。

       それほどに隆世ちゃんの愛は強くて真っ直ぐだったと思う。





突然のスコールにずぶぬれのまま、後夜祭を終えた糸と真琴は部室で着替えていた。
他の部員はもう既に着替え終えて、時が用意した花火を後夜祭で打ち上げていた。

ロッカーを隔てて着替えていた筈の糸の背に、真琴が音を立てずに静かに近付き抱きつく。

「!?」

うっすら濡れた下着しか身に付けていない糸がこわばる。

――自分の知らない真琴――

この言葉が糸の心に黒い魔法のように渦巻いていた。

確かに真琴は隆世ちゃんを大切にしていただろう。

真琴は今の自分も大切にしてくれる。


―――じゃあ、真琴にとって隆世ちゃんもあたしも同じなのか?―――


そんな言われも無い不安が糸の全身を少しずつ凍らせる。





「糸さん?」

抱き締めているのに何の反応もしない糸を不思議がる真琴が声をかけた。


糸の鼓動が一気に荒くなる。

「       隆世ちゃんでもいいんじゃないか?         」

「え?」

「   隆世ちゃんはまこのことが本当に好きだってあたしにもわかった

 それに    」


真琴の顔が糸の見えないところで冷たくこわばった。


「   まこだって隆世ちゃんのこと嫌いじゃないだろ?   」


   あたしが嫌いになれない隆世ちゃんを真琴が嫌いになりきれる筈がない。


糸の悲しい確信がそこにあった。



「・・・それって オレが糸さんより隆世ちゃんを好きだっていうこと?」

「   ちがう     あたしと隆世ちゃんを同じくらい    」


「糸さん・・・・・?」


今俺が欲しいのも
そばに居て欲しいのも
糸さんの方だって、糸さんだけなんだって・・・・・・・。

―――どうしたらわかってくれる?


真琴は糸を力の限り抱き締める。


濡れた繊維を隔ててもお互いの体温がぬるく伝わる。
それはやがて狂おしいほどの熱に変化しつつあった。


「今だけじゃなくて 俺がこうしたいと思うのもこうするのも糸さんだけだ」

真琴から糸の表情は見えない。

真琴は脅かそうと後ろから抱き締めたことを後悔していた。
だが、今の糸の表情がさっきの会話から垣間見えた気がしていつになく萎縮してしまっていた。


糸は自分の中に渦巻く不安と邪念と親愛の波に揉まれていた。
感情の抑制がまだできない。
それ故に、疑念を抱きながらも最愛の真琴を振り払うことなどできる筈も無かった。

―――どうしたらわかってくれるの?

真琴の苦しそうにかすれた声が熱い息となって糸の耳に降り注ぐ。


       こんなことが前にもあったっけ・・・。


その熱い吐息が不意に糸に過去の記憶を思い起こさせた。


       そうだ。ばーちゃんちであたしが監禁されて人質になって悠斗兄が守ってくれた時。
       母さんとの約束で、あたしを守ってくれたのは兄ちゃん達だったけど、
       これからは真琴が守るって言ってくれた。

       だから、あたしは母さんにも報告できたんだ。


       ―――母さん あたしは守ってくれる人を見つけたよ―――



糸の心から、誰にも見えない呪縛がほどけようとしていた。



「まもってくれるんだよな?」

くぐもった声で糸は顔の見えない後ろの真琴に問い掛けた。


「え?」

きちんと聞こえなかったらしい真琴に向かって、顔だけを後ろに向けて繰り返す。


「あたしをまもってくれるんだよな?」


真琴は糸の精一杯の涙声に真琴は鳥肌が立つのを感じた。

こんなに強く激しい想いの確信を求められたのは初めてだった。

真琴は迷わず、糸を改めて後ろから抱き締めた。


「糸さんは俺がずっと守るから」




「・・・・・・まこ・・・  まこ・・・・・」



糸は真琴の正面に向き直ると同時に、その首にしがみついた。
堰を切ったように激しく泣き叫ぶ糸を、真琴が当然のように固く抱き締める。
糸の嗚咽と涙が、切れかけた絆を繋ぎ直そうとしていることを示していた。



―――このぬくもりを絶対に離さない―――



互いの唾液をも飲み込み合うような口付けを重ねながら、
これから必要の無い衣服をどちらからともなく剥がし合って行く。

恥ずかしげに横たえた糸の露わになった狭そうな入り口。

その穴を通って糸の中に自分を埋め行く真。

そこは周りの黒い茂みに負けないほどに熱く濡れながら強く脈打っていた。
まるで糸の心臓がその部屋の隣にあるかのような鼓動が真に直に響いていた。

真は自分の襞と糸の襞が心地良く刺激し合うように腰を動かす。
それは自分のすべてを糸の体に溶け込ませようとする行為のようでもあった。

「あっ・・・・・ぅあっっ・・・・・・・」

途切れ途切れに聞こえる糸の喘ぎ声で、自分の動きに感じてくれていることが真に伝わる。

うっすらと汗ばむ目の前の白い肌すら、悲しいくらいにいとおしかった。

真を受け入れ存在を感じながらも、
糸は貪欲に真のキスを求めた。
受け入れられる場所すべてから真を感じていたいと思った。

体の芯で真の分身を捉えて離さないように、
濡れた舌を絡めて真の舌を自分の口内に引き止めようと必死だった。

真の頭を抱き締めるた時のさらさらで柔らかい金の髪の感触に温度が上がる。
真を自分だけのものにしたいという欲望と衝動に涙が溢れる。

真はそんな糸の心情を察してなのか、溢れる涙も温かい指で拭い続けてくれる。


       真を信じよう


       あたしは もう真が居ないと生きていけないのかもしれない



そんな心の声が聞こえたのか



       俺にも 糸さんのかわりなんて居ないんだからね








糸の赤く尖った乳首がびくんと揺れた。





それが糸からの返事だったのかもしれない。

































===== あとがき ======













お初の皆さま、はじめまして(*'-'*)
毎度の皆さま、ご無沙汰しております<(_ _)>

久々の裏更新が、自称エロリストの存在を問われるようなエロですみません。

気持ちを前面に出して追い詰められるような切迫した感じを書いてみたかったらしいです。
↑すでに過去形なのは逃げの体勢ですので。

いえ、責任取ります。・・・・・・どうやって??(おずおず)


いつもあっけらかんとまこりんを愛し続ける糸さんにも葛藤が何度もあるはずっ!

まこりんに惚れていればいるほどっ!

こんな妄想で本編スタートしておりますが、表世界を引きずっての私内隆世ちゃん祭りらしいです(←誰も知らない;笑)。

で、この話は糸さんサイドっぽいですが、途中でまこりんサイドでもいーかなー?
という非常に揺らいだ気分で書き連ねてしまった話でございますので、
どっちにも入り込みにくいような世界になっておりますが、
他の話に負けないくらい私の萌えが詰まっておりますので読後感が苦くてもご勘弁ください。


お付き合いありがとうございましたっvv
いつものことですが、何度でも心より御礼申し上げます。


・・・・・・・あとがきを先に読んでおられたりしないですよねっ!?(汗)





(2006.01.25)