★★★★交歓[ゑひもせず]★★★★







「糸さん。いい?」



真は糸の目を覗き込みながら囁いた。糸の目元はまだ腫れていて赤い。上半身を起き上がらせ、彼女の上に馬乗りになった状態で自分が着ているシャツをたくし上げて首から抜き取る。



「うわっ、なんで脱いでる?」

「熱くなるからね。」



上半身だけ裸になった真はもう一度糸の目を覗き込んだ。



「糸さんこそ、何寝ぼけてんの?オレ達が今からする事わかってるでしょ?」



返事を待たずに、そのまま手を伸ばして糸が着ているコットンセーターのボタンを外し始める。

襟元のボタンは多くないのですぐに全て外れた。糸の浮き出ている鎖骨を見やりながら、それに噛み付きたい衝動を抑える。



「ってか、あたしは熱くない。」

「もしも・・・」

「ん?」



真は恥ずかしがって目を背ける糸の首に手を伸ばし、喉頭隆起の部分を撫ぜた。ここは強く打たれると呼吸困難に陥る。女性の場合は目立たないのであまり狙われないが、人間の急所のひとつであることには変わらない。



糸は居心地悪そうに身じろぎをした。



「もしも私の卑しい手が、聖なる神殿、貴女を汚してしまったら・・・。」



糸は目を見開いて真を見上げる。聞き覚えのあるフレーズ。



「The gentle fine is this : My lips, two blushing pilgrims, ready stand to smooth that rough touch with a tender kiss.」



真はそっと、触っていた箇所に唇を押し当て、糸が静かに息を呑んだのを感じた。

ロミオがジュリエットに最初に出会ったときのセリフを言い終え、真が彼女の首に押し当てた唇で更に強く吸いつこうとした時。



「巡礼たちの唇は祈りの言葉をいうためのもの。」



さすがは演劇部女子部長。途中からわざと原語にしたにも関わらず、糸は見事に切り返してきた。それに気付いた真は微笑しながら返事を返す。



「では聖者よ。手がなすことを唇にもなさしめたまえ。信頼が絶望へと変わらぬよう、このように唇で祈りましょう。」(無駄な抵抗をしても、この会話の行き着く先は糸さんも知ってるはずだよ。)



「あなたの祈りを許しても聖者は動きませぬ。」

「そのまま静かに。いずれ祈りの効果が現れましょうから。」



ゆっくりと沈黙した彼女の首を堪能した後、真は半そでのセーターをめくりあげ、首下まで現れた彼女の肌に目を落とした。そのまま糸の背中に両手を回して下着のホックを外す。



「まこ!?」

「そのまま静かに。」



気おされる様に黙った糸を愛しく感じながら、緩んだブラジャーを上にずらす。

その下から現れた柔らかい乳房にほお擦りをすると、糸はピクリと身体を震わせた。

普段からカジュアルな服装に身を包み、友人達と大声で喋ったり、男友達にとび蹴りをして遊んでいる彼女からは容易に想像できない美しい身体。



糸の左の乳首に近い場所にほくろが2個並んでいる。うっすらとしていて、目立たないが形は綺麗だ。それらに軽くキスをすると、こらえるようなくぐもった音が聞こえた。



(止められない。止めたくない。)



そのまま唇を這わし、近くの乳首にもキスをすると、伸び上がって彼女の顔を見下ろした。糸は顔を赤くしていたが、嫌がっているようには見えなかった。



「あらかじめ謝っておくよ。糸さんが嫌がっても止めない。」

「ま・・・。」



何かを言いかけた糸に構わず、真は彼女に口付けた。糸の口腔内に忍び込ませた舌を彼女のそれに絡ませたら、逆に絡んできた。ちょっと驚いて口を離したら、糸が真っ赤になりながらも真を睨みながら言葉を吐き捨てた。



「まこのアホっ!返事ぐらい聞けっ。」

「・・・。」

「こういった事は共同作業だから!あたしはまこと一緒なら嫌じゃねーよ。えーと・・・、なにぶん、経験がないから上手く出来るか不安だけど・・・。」



最初は勢い良かったセリフがどんどん不安そうに小さくなる。真はこらえきれずに吹き出した。



「あっ!何故そこで笑う?人が一生懸命・・・。」

「うん、一生懸命だね。」



真は糸を思いっきり抱きしめ、くすくす笑った。



「苦しー」

「糸さんといると和むなー、わざわざの同意感謝。」



糸の両手が伸び、真の顔をはさむ。そのまま引き寄せてキスする。



(これはすごい。彼女の方から積極的にキスしてくるなんて、今日はいい日だ。)



でも、すぐに離してそのまま真の頭を抱きしめてくる。



(残念、30点。)と点数を付け、真は糸の腕を振りほどき、逆に彼女に口付けた。

彼女が離れるのを許さず、そのまま数回角度を変えた後、舌を侵入させる。

舌と共に唾液も少し入れてしまったが、構わずに流し込む。



彼女の口腔内をあちこち探索しながら、右手を先ほどキスした彼女の左乳首に這わせる。

眉間にしわを寄せて開けた糸の目を至近距離で見つめる。



キスしながら自分を観察する真の目に気付くと、糸は目つきを鋭くして睨んできた。

涼しい目で見返しながら(やっぱり、反応が普通の子と違うよな。)と考える真。

糸の乳房をゆっくりと撫でながら、時々乳首の表面を引っかく事を繰返す。



「んっ・・・。」



乳首への刺激があるごとに彼女の表情が変わる。感じやすい身体のようだ。彼女の左乳首がすっかり硬くなった頃には彼女の目からは先ほど見せた強さは消えていた。



「糸さん、ここ硬くなったよ。感じてる?」



わざと口に出しながらその部分を指先で弾くと糸はうめいた。



「ねえ、返事は?」



糸の反応を見ながら硬くなって掴みやすくなった乳首を引っ張り出し、苦しげに反応を抑えている糸に追い討ちをかける。二本の指で摘まれた乳首はそのまま転がされる。



「まこっ!あ・・・」

「オレ待ってるんだけど。」

「こっ・・・こんな事されてたら返事が出来ないだろうがっ!」



とうとう切れた糸が吼えると同時に電話が鳴った。2人はびくっと動きを止めた。





**************************************************************





真は眉をひそめたまま立ち上がり、受話器をとる。

真の下敷き状態から開放された糸はほっと息をついた。



「はい、天野です。」



今まで行っていた行為を考えたら、異常なほど冷静な声で対応している。



電話の会話を耳にしながら糸は竦みあがった自分の心臓がバクバクと脈打ってる事を強く意識した。ほんの少し真の相手をしただけでこうなってしまう自分が情けない。

やはり、色事で真に対峙する事は現在の彼女にとってハードルが高すぎるのではないだろうか?一旦は決心したけれど、全開の真はやっぱり怖い。



(うん。今日はやっぱり逃げよう。)



真が話している間に服を整え、上着とバッグが置いてある場所へそっと歩いた。



「いや、これから外出しますので配達は明日の夕方にお願いします。」



(えっ?)



妙な事を聞いた気分で振り返ると、真が糸を見ながら受話器を置いたところだった。

狭い部屋の中、数歩で距離を詰め、あっと思った時にはすくう様に糸を抱き上げ、眉を八の字にしながら囁いた。



「糸さん、逃げちゃダメだよ。」



そのまま、数歩歩いてベッドの上に糸を降ろす。



「人をその気にさせといて、逃げようとするなんて。」

「まこ、えーと。」



そのまま再度押し倒されて、手をとって押さえ込まれた。不利な体勢をとらされているせいもあるが、糸は全く動けない自分に気付いて青ざめた。にこやかだが真が怒っている事は経験上・・・わかる。



「ちょっとむかついたな。ねえ、糸さん?」

「ごめん。やっぱり、今日は帰ったほうがいいかな?」

「却下。」



真は再度糸の先ほど外したセーターのボタンを外して、覗いた鎖骨に舌を這わせた。



「ここ噛んでみようか?糸さん、痛くされるの好きみたいだから喜んでもらえるかな?」

「え?何言ってんの?・・・きゃっ!」



軽く鎖骨を噛まれた糸が驚く。怒りが遠慮をそぎ落としていく。



「それともキスマークの方がいいかな?」

「冗談。だめ・・・。」

「ふーん、噛まれるほうがいいのか。」

「あっ!やめ、まこっ。」



一瞬強く噛まれた糸が悲鳴を上げかけた。その口を手のひらで塞いで真が糸の耳元で囁く。



「痕がつくような噛み方はしないよ。安心して。」



そのまま彼女の耳に軽くキスをすると、コットンセーターの裾をめくる。



「はい、万歳。」



条件反射で万歳をした途端にセーターを頭から抜かれた糸は呆然とした。



「糸さん、かわいー。」



糸のブラジャーを手際よく外しながら真が吹き出す。



「ほら、オレ達、同じような格好になった。」



上半身裸になった状態で見つめ合う。

糸は言葉もなく、真の視線にさらされている自分の身体を腕で隠そうとした。

その両手首を左手で握って、彼女の頭上に縫いつけながら真は糸の上半身を観察する。

噛まれた鎖骨は少しだけ赤くなっている。乳房は美しかった。

大きくないが、小さくもない。とても形が良い。そっと顔を近づけて先ほどまで触れていた左乳首に舌を這わせると糸がぶるっと身体を振るわせた。



キスをし、歯をあて、軽く甘噛みし、糸の身体に緊張が走るのを楽しむ。

もう一つの乳首に口を寄せて嬲りながら、右手を左乳首に這わせる。



「さっきは中断したけど、感じてる?ここ、又硬くなってきたよ。」



糸は頬を赤くしながらも返答に窮している。



(いじめすぎてるかな?)



でも、糸が感じている事は乳首どころか乳輪までも硬くさせている事で見て取れるので、攻める方向として間違っているとは思えない。



(綺麗なピンクだな。第二次性徴期は終えてるはずなのにまだこんな色なんだ。)



糸の乳首を執拗に弄びながら、真はその美しい乳房の形状や色などを惚れ惚れと観察していた。



「糸さんって着痩せするのかな?服着たら胸は目立たないよね。」

「え?何?」

「脱がせてびっくり。結構大きいし、形もいいし。」

「きゃ!・・・」



今まで優しく弄んでいた乳首を摘み、急にきつく捻ったら糸が悲鳴を上げそうになった。

それを予想していた真にすかさず唇で塞がれ、悲鳴は消えていった。

しばらく彼女の口腔内を味わった後、口を離して涙が少し溜まった糸の目を覗き込みながら優しく笑う。



「ね。なんだかもっと硬くなったよ。やっぱり感じてるんでしょ?」



どう返事をしたらいいのかわからなくなっている糸のわき腹に人差し指を当てて、真はしばらくの間しみ一つない肌を検分していたが、やがてその指を糸の臍を通らせ、下腹部に向けて滑らせながら笑った。



「糸さんの身体に直接訊くことにしたから返事しなくていいよ。」

「まこ・・・。」

「何?」



糸のズボンのボタンを外し、チャックを下げながら返事する。



「ぜってーお前、普通よりスケベだ。」

「前にも言ったけど、男なんてこんなもんだよ。好きな子のことはどんなに小さな事でも探りたいものさ。」

「行為が変態くさいぞ。」

「それが何?拘束してるわけではないから、嫌なら逃げたら?」



言いながら、真の両手は糸のズボンの両端にかかっている。

(絶対逃がすつもりはないけど。)



「はい、お尻あげて。」

「あっ!」



思わず尻を浮かせた途端にズボンが下げられ、糸は己の愚かさを呪った。

真はけらけら笑いながら糸の腰を握っている。



「糸さんって素直!もー可愛すぎる。」

「くそ・・・笑ってろ。」

「やっぱり感じてたね。」

「!」



一段と低くした声で指摘し、糸の下着の股間部分に触った真がにやりと笑う。

真っ赤になった糸が自分の腰を引き寄せて露出した下着の上から股間を撫でている真を押しのけようとしたが、叶わなかった。



「下着の上からもはっきりわかるほど濡れてるね。かなり感じたってことだ。これって、痛くされたから?それとも乳首がよかった?」



再び、伸び上がって糸の顔を至近距離から見つめながら微笑む。目を逸らす糸の耳に唇を這わせるとびくっと反応する。そのまま下着の上から糸の股間に軽く指を這わせながら、耳たぶを舐る。唇や指を動かすたびに糸の身体は面白いように反応する。



「ここも弱いね。糸さんって感じやすいのかな?ねえ。」



無理に目を合わせて愉快そうに尋ねる。



「直接触って欲しい?」



その瞬間、ぶるっと大きく糸は震えた。これ以上、自分の身体の反応を隠しておくことは不可能だ。



優しく微笑みながらも自分の反応を細かく観察している真の視線。

最初は冷たいと感じたその眼差しは実際には興奮した男の視線だった。

糸の一挙手一投足を確認し、先を読み、入手しようとしている。



果たして、男全般がこのような状況に立った時にこうなるのかどうかは糸にはわからない。しかし、少なくとも真に関してはその獰猛さを隠す努力を放棄し、糸を欲望の対象として見ていることを隠そうともしない。



真の視線の意味を理解した時から糸は性的な刺激を受け続けていた。

真が怖いが、触って欲しい。矛盾した感情が自分を引き裂いていく。



「下着なんて意味ないほど濡れてるね。やっぱり、脱がしちゃおう。」



一呼吸であっさりと糸の下着はズボンと同じ場所まで落とされた。下着は粘液の糸を引きながら身体から離れた。



「すごいね、糸さんのここ。」



真が嬉しそうに糸に囁く。



「オレの指をすごくお気に召していただけたようだね。」



うっとりするような優しい眼差しで糸を見つめ、糸の腿の位置に留まっていたズボンと下着をまとめて下ろし、足から抜いた。ついでにソックスも脱がせる。

全裸になった糸の閉じた足首を掴んで開き、その間に真は自分の身体を入れると糸を抱きしめた。



上半身だけでも素晴らしかったが、こうして全裸にすると息を呑むほどに美しい身体だ。

すっきりと伸びた長い脚。空手で鍛えられた柔軟さと姿勢の良さがその美しい肢体を更に際立たせている。この身体が陸上選手並みの瞬発力を備えている事を真はよく知っている。

演劇がなければ、間違いなくどこかの運動部に所属していただろう。

実際のところ、入学した当初は色々な運動部からスカウトされたという話は聞いた。

それらを全て蹴って、よくぞ演劇部に所属してくれていた。さもないと、転校早々の出会いはなかったかもしれない。



全てが偶然のようでいて、必然だったに違いない。

これほど愛せる女性に人生のこんな早い時期に出会えるなんて、奇跡のようだ。



そっと糸の頭を押さえて彼女の目元にキスをする。

性的な接触を予想して構えていた糸が驚いたように目を上げた。

彼女を形作るもの全てが愛しい。その短い髪を撫で、唇をついばみ、首、胸、お腹と優しく触っていく。ゆっくりと下腹を手のひら全体で触った後、その手を股間に滑り込ませた。

小さく上げられた糸の悲鳴さえも愛おしい。彼女のクリトリスをかすらせて、膣の中に指を差し込むとそこは既に熟しきっていた。以前触ったときよりもっと濡れている。



「糸さんのここ、気持ちいいね。温かくて。」



糸からの返答はない。顔を見たら真っ赤になって顔を背けている。

ゆっくりと指を出し入れすると、湿った音に混じって、抑えた糸のうめき声が密やかに漏れた。



指で中の形状を軽く確認する。結構、しっかりとした処女膜である事は以前確認した通りだ。どんなに濡らしても初回は傷つけるだろう。

なるべく痛みを与えないように気をつけても出血は免れないし、完全に道が出来上がるまで数回かかるかもしれない。真は自分の相反する矛盾にも気付いていた。

痛みを与えたくないと考えている自分と最初の男としての痛みを与えられる喜びを感じている自分。(どちらにしろ、最初で最後の男さ。)



処女の相手など面倒なだけと考えていたが、相手が糸だと思うだけで息が止まりそうな幸福感。



「糸さん、こっち向いて。」



ゆっくりと糸に口付けながら、真は確かめるように動かしていた膣内の指の動きを変えた。糸の目が見開かれる。



「あっ・・・」



ため息のような抗議の声は無視され、湿った音が聞こえる。

雑音のない静かな部屋の中で異なった音が控えめに響きはじめた。



「触る前から大洪水ってのは凄いね。」

「・・・まこ・・・やめ、助けて。」



自分を苛んでいる男に助けを求める矛盾に気付いていないように上げられる死にそうな声。

湿った糸の膣に抜き差しされる指が奏でる淫靡な音。膣内をかき回し、彼女が特に反応する箇所を探りながら、その指は定期的にぬめりを外に掻き出してクリトリスや小陰唇などに塗りこめるように押しつぶす。

真から与えられる執拗なキスの音。その音は糸の下半身で彼女を苛んでいる指が奏でる音に似ているため、いつのまにかどの音なのかわからなくなる。



「糸さん、ここ感じる?」



時々、真から確認のための言葉が発せられるが、殆どの場合、糸の返答は期待できない。

真も返答は期待していない。糸の身体が素直に反応してくれるので、彼女の言葉は必要ないのだ。ただ、うめき声以外の言葉を聞きたいがために声をかける。



「指を増やすね。」



増やした指を再度突き入れる。



「・・まこぉ、きついよ。」



苦しげに糸が告げるが、返されるのはなだめる様なキス。十分な粘液を指に纏って挿入し、気ままに動かしたり、出し入れする度にすべらかになってくる。



糸の身体を抱え込んでいる左腕が一周して彼女の硬くなった左乳首をきつく摘み、彼女の膣に突き入れている右手の親指で感じやすいクリトリスを容赦なく押しつぶした瞬間に糸が悲鳴を上げた。悲鳴を途中から自分の口で塞いで黙らせながらも、糸が痙攣しながら、達した事を理解した。



「指でいっちゃったね。」



挿入している指の動きを止めて、彼女の早鐘のような動悸を膣内で感じながら糸の耳に口を付けながら囁いた。糸の表情を見ると、隠す気力もないほど悄然としている。

半開きの糸の唇に軽くキスすると、彼女の目の焦点が戻ってきた。



「まこ?」



優しく彼女の頬にもキスすると、真はゆっくりと指の動きを再開した。



「!?」

「まさかこれで終わりだなんて思ってないよね?」



糸の表情をにこやかに見やり、真は指を引き抜いてその指を自身で丹念に舐めた。

糸の視線を感じたので、口角を持ち上げて微笑を返した後、自分の身体を下にずらす。

彼女の両足を持ち上げてそれぞれを自分の肩に乗せると、再度、自分の身体を引き上げて糸の身体を開脚の状態で折り曲げた。



「え?」



始めて他人の手で性的な絶頂感を味わい呆然としていた糸は、真によって変化させられる自分の体位を信じられない気分で見ていた。

彼に折り曲げられた身体は苦しいけど、それよりも、開脚状態であそこを見られている事の方が恥ずかしい。



「まこ?」

「味あわせてね。」



彼女自身の腿を両肩の上に乗せたその優しい顔は首を伸ばして一度自分にキスすると、そのまま彼女の股間に落とされた。



「あ・・・いやーっ!やめっ!」



思わず覚醒した。反射的に身体を引き上げて逃げようとしたが、伸びてきた両手で肩を掴まれ戻された。

少しだけ癖がある柔らかい金髪がさらさらと太腿の間で動いているのが見える。

真の舌が糸の恥丘から滑り降りて、興奮して既に陰核包皮から露出しているクリトリスに吸い付いた。その非常に感じやすい性器を唇でくわえられ、舌で刺激を受け、糸は電流が通ったかのように痙攣した。



「!・・いやっ・・・」



彼女の肩を抑えていた両手は、いつのまにか彼女の太腿を抱え込みながら大陰唇を両側から押さえて広げ、クリトリスに行使されている口淫を助けている。



「まこ、やめろ。そんなとこ汚い・・・。」

「糸さんの身体に汚い場所はないよ。」



クリトリスに口を付けたままくぐもった声で返事され、刺激を受けた性器から更に粘液が染み出てくる。

片方の手の指が再度まとめて膣に挿入された。クリトリスには相変わらず真の唇が吸い付いていて、糸は小刻みな痙攣を繰返している。



「まこ、もうやめ・・・苦しい。」



繰り返し小さく達する事を強要され、びくびくと身体を震わせまともに呼吸すらできない。

真はクンニリングスを停止し、彼女の脚を一本肩から外した。その状態で彼女の乳首にキスをすると、膣に押し入っていた指の抜き差しを激しくする。



「や!・・・」



こらえきれずに泣き出した糸の表情を見ながら真は再度彼女が深く達した事を締め付けられた指で確認した。(糸さん、かわいーな。)真はそっと引き抜いた自分の指に舌を這わせながら目を和ませた。



激しい呼吸音だけがその場を支配している。

糸は連続していかされているせいか、ひどい疲労感に襲われていた。

しばらくして彼女の身体から手を離した真は一旦ベッドの外に出、糸の腕を掴んで彼女を引き起こした。



「糸さん、お疲れのところ悪いんだけど。」



自分が全裸である事も忘れ、不思議そうに自分を見上げる糸の唇に指を這わせて愛撫する。



「糸さん見てたら我慢できなくなった。軽くオレをいかせてちょうだい。合宿中のように、ここでね。」



唇をいじっていた指が口の中に入れられる。糸は急に真の意図に気付いて頬を染めた。



「あんまり無理は強いたくないけど、一度位いっとかないとコントロール不能になっちゃうしね。」



彼女が固まっている間に真のチノパンの前がくつろげられる。糸は彼の希望を拒否するつもりもなければ、拒否するだけの余裕も与えられなかった。



手際よく取り出された「もの」は以前見たときより大きく感じられたが、仔細に観察するだけの時間もない。



「口開けて。大きく。」

「んっ!・・・」



彼女の頭を優しく撫でていた手が彼女の鼻を摘み、無理に大きく開けさせた唇の間から侵入してきたペニスは口腔内で更に膨らみ、彼女の息を詰まらせた。糸が見上げた真の表情はその容赦のない行為に反して申し訳なさそうに見えた。



「ごめんね。かなり興奮してる。」





**************************************************************





糸はしばらくの間、ベッドに沈んでいた。下半身も口もだるかった。彼女の裸の身体の上には無造作にタオルケットがかけられている。上下する胸の動悸がやっと治まった頃に真からミネラルウォーターのペットボトルを渡され、それを飲んでやっと人心地がついた。真の様子を伺うと、彼もペットボトルを手にしながら冷蔵庫を閉めていた。彼女の視線に気付いてウィンクしてくる。



「小休止ね。喉も渇いたし。」



かけられているタオルケットごと起き上がり、糸は回りを見回した。

殆どの行為はベッドの上で行われていたので、周囲は比較的整然としている。

ベッドの上だけ、無茶苦茶だ。床に転がっているボックスからティッシューを1枚とり鼻をかむ。ゴミ箱を見つけて、汚れたティッシューを捨てようとすると、既に捨てられている彼女の股間や真の精液を拭ったティッシューに気付いた。

(人の手で拭われるなんて・・・。)



さっきまで自分がされていた事を思い出して一人顔を赤らめている糸の耳に電話をかけている真の声が入ってきた。



「はい、打ち合わせの為に私のアパートに。はい。」

「!?」



思わず振り向いた糸は電話中の真と目が合った。彼はにっこりと微笑み、口の前に人差し指を立てた。



「ええ、昨日出来なかった分の稽古もあわせて行いましたら、時間が経ってしまって、糸さん、疲れたようで眠ってしまったのです。」



優しい真琴の口調で真っ赤な嘘を爽やかについている。



「いかがしましょう?よろしければお迎えに来ていただけますでしょうか?でも、時間も遅いのでこのままこちらに泊まっていただいてもよろしいのですが。」

「はい、夕食はすでにすませております。」



しばらくのやり取りの後、真はにっこりと微笑みながら受話器を置いた。



「まこ、てめー・・・よくまあ、あれだけぬけぬけと・・・。」

「いいじゃん、ばれなければ。」



通話時とは打って変わった低い声で呟く。上半身裸の状態でミネラルウォーターを飲みながら、ベッドに近づいてくる真の姿に少々びびった糸が後ろに下がった。



「なに?」



器用に片眉だけ上げて、微笑する。限りなくダークである。それなのに、どんな表情でも格好よいとうっとりする自分に気付き、糸はため息をついた。(我ながら、重症だ。)



近寄ってきた真はベッドサイドに置いているテーブルの上にペットボトルを置くと、その近くに小さなビニールのパッケージを数個置いた。お菓子にしては薄すぎる。クッキーかと思って見ていた糸は首を傾げた。床に転がっているティッシューボックスもサイドテーブルの上に置いて、ベッドに座る。



「さてと。」



独りごちながらチラッと壁際に張り付いている糸を見て手招きをする。



「糸さん、おいで。」



糸は迷う素振りをしながら、内心パニック状態だ。どう考えても、小休止は終わった。つまり先ほどの再開を求められていると思うが、間が開いたために恥ずかしさが復活している。



「糸さん?」

「そうだ、それ何?」



時間稼ぎの為にサイドテーブルに置かれた包みを指差した。

返事がないので、真の顔を見たら、人の悪いニヤニヤ笑いが張り付いている。

(あれ?)



「知りたい?」



猫なで声で真が訊いてくる。糸は非常に危険なものを感じた。その時にピンときた。

もしかしたら「あれ」かもしれない。



「知りたくない。」

「えー、ただの風船だよ。」

「風船?」

「ほら。」



包みを一つ持って差し出してきた。恐々と覗き込もうとした糸は、次の瞬間、腕を掴まれて真に引き寄せられていた。



「捕まえた。」



舌なめずりをするように囁かれ、そのまま頬にキスされる。身体に巻きつけていたタオルケットごと抱き込まれた糸は慌てふためいたが、すぐに大人しくなった。経験上、真相手に力比べで勝てたためしはない。



「ずるい。物で釣るなんて。」

「この場合、釣られる方もどうかと思うよ。これが何かはわかっていたんじゃないの?」

「んー、もしかしたらとは思ったけど。」



糸は彼が手にしている包みに目をやった。



「こんな可愛いパッケージに入ってるとは思わなかった。」

「色々あるよ。可愛くないパッケージもあるし。」



そもそも、このような物がこの部屋にあるなんて思ってもみなかった。

糸は真の顔を見やって、少し睨んだ。



「ん?避妊は男の甲斐性だからね。所持していないほうが問題だよ。それが何か?」

「いや。何でもないよ。」



涼しい顔で説明する真。微妙に論点がずれてるのは意図的?

ため息をついて糸は追求をあきらめた。



「では、はじめましょ。」



手にしていた包みをポンとサイドテーブルの上に投げて、真は糸をベッドの上に再度押し倒した。予測していたのに、あまりにも自然な動作で糸は抗う余裕さえなかった。

あんなにしっかりと巻きつけていたはずのタオルケットもあっさりと解かれて、全裸のまま押さえ込まれる。



「まこ、こんなのおかしー。」

「ん?」

「あたしだけ裸って平等じゃないっ!」



恥ずかしいのを紛らわすために言い出した言葉を真は嬉しそうに受け止めた。



「了解。オレも脱ぐ。これで平等だ。」

「え?えーー!?」



すぐに立ち上がって真はズボンと下着をまとめて下に落とした。脱いだ服はまとめてベッド下に蹴り飛ばす。



「うあー・・・・」



目を逸らして、糸は壁を向く。



「これでいいかな?・・・って糸さん、何やってるの?」



ベッドの上で手を伸ばし、糸を後ろから捕まえた真はあきれたように話しかける。



「何も始めて見たわけではないでしょ?さっきもくわえてたし。こっち向いて。」

「はじめてだよー。裸は。」



真っ赤になった糸が可愛い。真は後ろから彼女を胡坐をかいた自分の上に抱き上げ、座らせた。



「そのまま、楽にしていて。」



後ろから抱きしめながら、耳、首などの背後に唇を寄せる。優しく、届く範囲に唇を這わせる。思いのほか気持ちが良くて、糸は身体が弛緩してくるのを感じた。



「気持ちいい?」

「うん。」



彼女の首を時々甘噛みしながら、優しく口で愛撫する。同時に抱きしめている腕を少し解いて糸の前面に指を這わせ始めた。糸の顔、唇、頬、首、乳房、乳首、わき腹、お腹、下腹、全てに柔らかく指を這わせる。



「ん・・・」



あまりにも優しくて、先ほどまでの苛烈な触れ方とのギャップがありすぎて、糸はどのように振舞ったらいいのか迷う。

ゆっくりと真の右手が糸の顔の前に戻ってきた。人差し指と中指をまとめて、彼女の口の中に差し込んでくる。



「舐めて。」



疑問に思いながらもリクエスト通りに舐めた。



「もっと唾液つけて。」

「え?」



座っている彼女のお尻に何か当たっている。(これって・・・?)

唾液をたっぷりと塗られた指が糸の口から抜かれ、ゆっくりと下に向かう。

真の左手は糸の左腿を押さえこんでいる。右手は恥丘を少しくすぐって、そのまま膣口までたどり着き、二本の指を差し込んでいった。



「あ・・・。」

「きつい?」



大きく深呼吸する糸の横顔に目をあてて真が尋ねてくる。



「ちょっときつい。でも大丈夫。」

「それはよかった。」

「ひあっ!」



腿を押さえていた左手が動き、彼女のクリトリスを摘んだので、糸は驚いて声を上げた。

突然の強い刺激だった。膣に挿入された指も動きを速め始めている。



「あああ・・・」

「さっきは三本までいけたからね。糸さん、優秀だよ。」



(何が優秀?)と内心叫びながら、糸は再開された強い刺激に翻弄され始める。

摘まれたクリトリスは二本の指で強く擦りあわされている。痛いのに変な感覚。我慢できないほど痛いわけではないが、あと少しでも力を加えられたら激痛が走りそうな予感に慄く。しかし、それと同時に妙な気持ちよさがある。



「まこ、いた・・・い。」

「でもね、痛くすると濡れるんだ。糸さんって。」



耳元で囁かれ、耳たぶに噛み付いてくる。

声もなく叫んだ糸の耳たぶを今度はざらりと舐めて舌を差し込んでくる。



「痕がつくような噛み方はしないよ。さっきも言ったけど。」



クリトリスを攻めていた左手がそこを離れて上がってきた。ある予感に糸は緊張する。

上がってきた左手は彼女の左乳首を撫でて、予感した通りにきつく摘み上げた。



「あ・・・!」

「叫ばないでね。今は糸さんの口、塞げないから。」



膣に挿入されている指はきつく締め付けられた。真は叫びをこらえた糸の頬に愛しそうに口付ける。



「がんばったね。いい子。」



達して息も絶え絶えの糸をベッドに横たえて、真はベッドサイドの包みを取り上げた。

呆然と天井を見詰めている糸の横でゆっくりと取り出したものを装着していく。



「糸さん?大丈夫?」

「あ・・・まこ。」

「もしかして意識飛んでた?」

「いや、ぼーっとなってしまって・・・。」



真は糸の前面に回り、彼女の脚を割り開く。(股関節やわらけー。)

自分のペニスをゆっくりと糸の膣口にあてがうと、先ほどとは違う異物感に糸を急速に覚醒させた。上半身を起き上がらせ、自分の股間にあてがわれたものを見やる。



「だめ。無理っ!」

「大丈夫だよ。(やれやれ)」



ゆっくりと頭を擦り付けて彼女の粘液を纏わせると、ゆっくりと挿入し始めた。



「嫌だ、まこ、こんな格好。」



嫌がる糸の気持ちを聞いて、真は苦笑した。気持ちはわかる。

でも、破瓜を伴う性的交渉を行う場合、この体位が一番身体への負担が少ないのだ。



真はゆっくりと彼女に覆いかぶさり、乳首に吸い付いた。

少し前に達したばかりで、まだ感じやすい状態の糸の身体はその刺激に小さく反応した。

右手が伸び、2人の身体の間にあるクリトリスに触れる。糸のうめき声を聞きながら、それを優しくこねる。予想したような痛みではなく、優しい愛撫に一瞬糸の緊張が解け、その隙に更に挿入を進める。



「まこ、痛い・・・。」



時間をかけて亀頭部分が完全に挿入されると、途中からスピードを上げて押し込まれていく。軋むように入ってくるペニスに糸は恐慌状態に陥りそうだ。このまま、自分が裂かれるのではないかという恐怖を感じているが、目を開けると真の優しい顔が苦しそうに歪んでいるのが見て取れる。どうやら痛いのは自分だけではないらしいという事実に少し安心した。



視覚的にかなり暴力的だった真のペニスが完全に押し込まれた頃には2人とも汗びっしょりになっていた。糸にしてみるとあんなに大きいものが入ってきた事実が信じられない。

真は真で糸の中のあまりのきつさに驚いている。挿入前に十分ほぐしたつもりだったが、彼が覚えているセックスの記憶に比べて段違いな抵抗を彼女の内壁から受けた。



しかし、きついが故に非常に気持ちがいい。我を忘れて、派手に動きたくなる。



(毒を食らわば皿までも・・・とね。)



先ほどまで「痛い痛い」と訴えていた糸も今は大人しくなっている。

中に納められたペニスの形状に慣れて来ているのかもしれない。

嵐の前の静けさのような今の状態が真は結構好きだ。

次の行動に移る為のエネルギー充填期間のようなもの。

目の前には世界で一番欲しい最愛の女性がいる。

不意に閉じていた糸の目が見開かれた。お互いに相手に見入る。

(では第二ラウンドいきますか?)真はゆっくりと動き始めた。





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糸は自分を見ている真の顔がゆっくりと落ちてきて口付けるのを見ていた。彼の上半身が動いたせいで彼女の中にいる真の半身の角度が微妙に変わり、一瞬ぴりっとした痛みを感じた。少し歪ませた糸の表情に気付いた真がキスしながら微笑むのを目の端に捕らえる。(まこは意地悪だ。あたしが痛がると喜ぶ。)



糸は少々痛くてもそれを見せないようにしようと意固地に決心する。

そういった負けず嫌いな一面を真が愛し、彼を興奮させていることに気付いていないところが可愛いゆえんでもある。



軽くキスした後、真は上半身を戻し、その両手を糸の両腕にかけた。そのまま掴んでくる。

疑問に思う糸に小さく笑いかけ、ペニスをゆっくりと引き抜き始めた。

終わったのかと一瞬安堵した彼女の表情を見ながら、途中まで抜いたペニスをもう一度押し込む。その衝撃に慌てた糸の動揺を見ながら、浅く抜き差しを始めた。



「あ・・・あ、あ、・・」



逃げるように身体をずらそうとした糸を両腕を掴んだ真の腕が引き戻す。

味わった激痛の記憶に引き摺られて、ゆっくりと出し入れされるペニスに恐怖を感じていた糸だが、途中から別の感覚にも気付きは始める。痛いけど、気持ち良く感じる箇所がある。そこをこすられると身体がぴくっと跳ね上がってしまう。

痛い、でも気持ちいい、しかし、痛い。



糸自身は気付いていないが、その心情は見事に声と表情に反映されている。

苦しみに歪む表情と喜悦に綻ぶ表情。苦しげなうめき声と耐えるような嬌声寸前の声が交互に発せられる。真にとっては天にも昇るような彼女の変化である。

糸の膣が定期的に伸縮しはじめる。特に快感を感じた時の締め付けが激しくなる。

糸のうめき声に刺激され、彼女の中に挿入している自分のペニスが更に膨れるのを感じる。

糸のほうでもそれに反応して小さな悲鳴を上げる。

徐々に激しさを増していく真の行為。糸が行為に慣れるに従って、抜き差しのスピードと強さが加えられていく。

ぎりぎりまで抜いて、一気に最奥まで突く。そして再度ゆっくりと抜いていく。



「まこ・・・まこ、お願い。・・・死にそー。」



闇雲に救いを求める言葉が時々糸の半開きの唇から漏れる。一見、欲望に目の色が変わった真が一方的に糸を攻めているように見えるが、彼も又彼女に次第に追い詰められていく。

膣の中は相変わらずきつく、性交に慣れていない膣の拡張や膣粘膜と真のペニスとの摩擦による刺激や傷などによって生じる痛みはまだあるが、それさえも彼女は快楽に変換していく。



糸の表情の変化からそれを読み取った真は、彼女の腕を拘束していた手を外し、そのまま両方の乳房を握りこんでくる。その感触にびくっと反応した糸が真の顔を仰ぎ見た。



糸の顔を優しく見下ろして真は薄く笑う。興奮しきった雄の目だが、どこか嗜虐的な色をたたえている。



「知ってた?糸さんってさ。」



乳房を握った手の指で乳首を撫でながらも糸の最奥を貫く行為はどんどん激しくなる。激しく揺さぶられながら呼吸する事さえも糸はままならない。

絶えないうめきは悲鳴に変わりつつある。



「いじめられたら感じる人だよね。ほら。」



両乳首をそのまま摘んで、捻り上げる。真は絶叫しそうになった糸を口で封じ、流れ始めた彼女の涙を感じて目を和ませる。



「そろそろかな?とんだ変態だよね。(オレもだけど)」



最奥を穿った時に彼女の膣が強く痙攣した。(いったな。)

痙攣して強く真を締め上げる。気持ちよくて自分も達しそうになったので、真は動きをしばらく止めて、波をやり過ごす。強い動悸のような痙攣が周期的に伝わってくる。

先ほど捻り上げた乳首を優しく撫でながら、疲れ果てて焦点の合わない目で天井を眺めている糸を見やる。その様子が愛しくて真はそっとキスをする。



糸の動悸が静まったのを見計らって真はペニスの抜き差しを再開した。糸の目に焦点が戻る。驚いたように真を見、こらえきれないようにうめいた。



「まこ?」

「糸さん、勝手に一人でいっちゃったね。オレまだだよ。」



いったばかりで敏感になっている身体に追い討ちをかけるように突くと逃げるように上に身体をずらしていく。腰を掴んで引き寄せると糸は耐えるように目を瞑る。



(感じすぎてる身体を平静にしようとしてるの?)



真は糸の両足を再度自分の肩に乗せ苦しい体勢をとらせた。

楽にさせるつもりは全くない。さらけ出された彼女の秘部にペニスを突きたてたままで体重をかけると、更に深く穿たれた糸はその衝撃で目を見開いた。



そのまま、強制するように抜き差しを再開すると、そのあまりの苦しさと深い快感に悲鳴を上げかける。



「だめだよ、叫んじゃ。近所迷惑になる。」



涼しい声で釘を刺し、左手で糸の口を塞いだ。右手は彼女の体勢ゆえに持ち上がった尻を支えている。



「オレも満足させてね。」



荒い息をつきながら、真は幸福そうに糸を攻め続けた。





















★★★★交歓[あまつかぜ]★★★★









糸が纏っていたタオルケットを広げると赤とピンクが滴った後がはっきりと残されていた。



(あの時はこれを下に敷いてたな。そういえば。)



最初の性交時、抜き差しを開始した時に彼女の粘液と共に排出された血液を傷ましい想いで見つめたのを真は覚えている。但し、予想していたものより出血の量は控えめだった。



(すぐ処理したら綺麗になるかな?)



すでに乾いているし、タオルケットは元が白色なので完全に色抜きが出来るかはわからない。それよりはこのまま(記念に)とっておきたいような気がする真であった。

悩んでいると、お風呂からあがった糸が後ろから覗き込んだ。



「あっ!」



慌てたように叫んで真の手からタオルケットを奪い去る。



「すぐ洗わなくちゃ!」

「あ・・・待って糸さ・・・」



ざっぱん!と威勢の良い音を響かせながら風呂場に戻った糸が何をしたのか想像は容易だった。しばらくして戻ってきた糸は妙に暗い声で呟いた。



「なんだか、取れなくなったよ。どうしよー?・・・」

「既に乾いて固まってたしね。」

「ごめん。」

「脱衣所の籠に入れておいて。後日染み抜きしてみる。」



糸のしょんぼりとした後姿を苦笑しながら見送る。

ベッド周りを綺麗に整えた上で、真が入浴のために脱衣所に入ると、洗面台の前でまだ糸は石鹸片手にタオルケットと奮闘をしていた。



「糸さん、それはもういいから。」

「いや、ちょっと薄くなってきたかも・・・。」



あきらめきれないでいる糸の姿に微笑しながら、真はタオルケットを取り上げて洗濯籠に放り込んだ。



「それよりも身体の調子はどう?疲れたでしょ?」

「ん。誰かさんのおかげで。でも、お風呂に入ったら元気になったよ。」

「ほう。」



風呂上りのパジャマ代わりに渡した真のTシャツが良く似合ってる。

糸の体格は真とそんなに変わらないと思っていたが、真のシャツを着ると少し大き目らしく、中で身体が泳いでいる。結構、刺激的な光景だ。



思わず、後ろから抱き絞めた。



「何、まこ?」

「ここも傷つけたと思うけど、ちゃんと洗った?」

「んっ・・・!」



Tシャツの裾から手を差し込んで糸の股間に指を這わせる。下着は洗濯して干してある。



「何やってる?・・・。」

「下着がないと触りたい放題だね。ここ、痛くない?」

「洗ったときにちょっとピリッとした程度。大丈夫・・・あっ!」

「声が響くから大人しくしてね。」



真の指が一本、やんわりと差し込まれた。

糸は咄嗟に自分の口を塞いだ。



「うーん、濡れてないと入れにくいね。ま、ひどく傷ついてないならいいのだけど。」



ちらっと糸を見ると、顔が赤くなっている。



「又、濡らしちゃおうか?一緒にお風呂にはいる?」

「アホッ!」



即座に真を殴り、彼の腕を振り切って糸は脱衣所の外に逃れた。



「糸さん、先に寝てていいよ。ベッド狭いけど我慢してね。」

「おう・・・。」



追いかけるように脱衣所から聞こえてきた言葉に短く返事をした糸は、息を落ち着けて整えられたベッドを見やった。この上で先ほどまで行われていた行為を思い出すと、熱が出そうだ。でも忍び寄ってくる眠気には勝てそうもない。

真に言ったとおり、糸は疲れ果てている。

風呂に入った事で弛緩した身体が安眠を求めている。

真に渡されて全部飲みきらずに残していたミネラルウォーターを冷蔵庫から取り出し口に含むと、さっさと真のベッドに潜り込んだ。



(おやすみなさい。)





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風呂から上がった真が部屋に戻った時に見つけたものは煌々と照明が付いたままの部屋で安眠を貪る糸の寝顔だった。

ベッドの壁際で気持ちよさそうに寝ている、その太平楽な様子には笑ってしまう。

このベッドの上で結構激しく苛めたはずなのに、終わってみればそのようなものに変えられない糸のしぶとさを思い知らされる羽目となった。



まるで天高い場所を吹き抜けていく風のようだ。

爽やかで力強い、何ものにも妨げられない存在。



(そういえば、オレと一緒のベッドに寝る事に躊躇してないようだけど、信頼してる?)



しかもノーパンで。



ふと思いついて、糸が被っている布団をめくると、着ているTシャツが上にずれて、お尻が丸見えになっている・・・。(おいおい。)

ため息をついて、たくし上げられたTシャツを下に引っ張り、布団を元に戻した。



(元気ならば誘惑されただろうけどね。)



真もくたくただ。さっさと寝る準備をして糸の隣に身体を滑り込ませた。

そのまま布団の下で彼女の身体を抱きしめると、寝ぼけた糸が気持ちよさそうに身体を擦り付けてきた。



自分と同じ石鹸とシャンプーの匂いがとても心地よい。

そのしなやかな身体を抱き込んでいると、大きな猫を飼っているような錯覚に陥った。



(おやすみ、糸さん。)







































<<管理人より>>


連続爆弾投下終了


存分にお楽しみください。


(2013.04.29)