★★★★ 合同夏合宿[センサー解除まで] ★★★★
「糸さん。」
「・・・っ!」
背後から耳たぶの後ろと髪の生え際の境にある柔らかい肌に唇を滑らせると抱きすくめている身体が面白いように反応する。
「感じすぎ。」
「これは驚いたから・・」
尻すぼみになる言い訳が可愛くて、もっと意地悪を言いたくなる。
「じゃあ、もう驚かないでね。」
言外に行為を続けることを匂わせながら、彼女が身構える前に抱きしめている腕に少し力を加える。
跳ね上がった動悸を感じながら、彼女の左耳の後ろ、先ほど唇を当てた場所に舌を這わせる。
「驚かないでって言ったじゃない。やっぱり感じた?」
「まこっ!・・・ちが・・・」
もがこうとする身体を抱きしめ、彼女の左耳への愛撫を続ける。このようなスキンシップははじめてではないのに、慣れるということを知らないのだろうか?
でも、オレはこのように感じやすい糸さんをとても好ましく思い、喜んでいる。
「違わないよ。糸さんのごまかしには慣れているからね。」
彼女との言葉のやりとりはとても楽しい。そして、とても刺激的だ。
でも、普段から意図してブロックしている本能をこんな時は押さえられなくなる。
彼女の柔らかい耳を舐りながら、下半身が反応し始めているのに気付いた。まずい。
「まこ?」
「ん、ごめん。調子に乗ったかも。」
ここまでぴったりと引っ付いた状態では隠しようがない。オレの強張りに気付いた彼女の頬がみるみる赤くなった。でも、身体を捩じらせてオレの腕から逃げようとしても、それを許すつもりはない。
「だめ。逃げないで。」
じたばたし始めた糸さんに低い声で牽制しながら、じっくりと首筋に吸い付くと大人しくなった。可愛いなあ。やっぱり愛されている?
「まこ、眠くない?朝まで起きているつもり?」
とってつけたように話題を変えようとしている。
「センサー解除まではまだ時間があるからね。糸さん、眠ければこのままオレを枕に寝ていいよ。」
「・・・」
この状況で寝ろと言われても困るよね。ごめん、糸さん。
健康な青少年としましては、好きな女の子と二人だけなら楽しいことを始めたいとこだけど、糸さんの初体験がこんな場所ではさすがに可哀そうだしね。
そんなことを考えながらも、彼女の胴に回した左手をゆっくりと動かしてTシャツの中に潜らせた。夏とはいえ、こんな山の中だ。夜中は冷える。Tシャツの下は案の定、素肌だったのでとても温かくて気持ちいい。
「まこ・・・つめたい。」
「うん、オレは温かい。」
「何それ?自分だけずるいなー。」
オレの軽口にすがるように返ってきた糸さんの安堵したような返答が少し癇に障った。
彼女の首に回した右腕をずらして、首と頤を右手で押さえてオレを見上げるように角度をつけた。
「声が大きいよ。しゃべる時は気をつけようね。糸さん。」
「ま・・・」
目を覗き込みながら低い声で囁くと、何か続けようとした彼女を遮るようにそのまま口付けた。
一度、口を離して、右手の人差し指をその口に入れて歯並びをなぞる。凍ったように動かない口に再び自分の唇を押し付けて舌を差し込むと彼女の舌が慌てたように逃げ回る。本当にこの人は可愛い。
停止していた左手を動かして彼女のブラジャーをずらすのと、彼女の舌を捕まえるのが同時に行われた。
「っ!・・・」
堪らず、オレの唇から逃げた彼女の表情を見ながら、左手をじっくりと彼女の乳房に這わせていく。
オレの指が動くたびに彼女の表情が変わる。困ったような、あきらめたような、そして期待するような。
乳首をかすったオレの指先の動きに反応して眉を八の字にして真っ赤になっている。
「硬くなっているね。」
「えー・・・それは・」
「糸さんのエッチ。」
「ええっ!」
「オレのと一緒だ。」
真っ赤になって俯く糸さん。いじめすぎたかな?
「糸さん、オレを見て。」
糸さんの頤に再度手を添えて、振り返らせる。
「ごめんね。いじめちゃったね。」
「まこ。」
目をオドオドとさせている。気が強く、男気が人一倍強い彼女がこのように振舞う時の原因はうっすらと理解している。オレを異性として強く意識して、惹かれている時だ。
「糸さんの反応が可愛いから、やりすぎちゃうんだね。」
「まこ・・・からかった!?」
「しー・・・」
軽く唇を合わせると、大人しくなった。
「からかっていないよ。でも」
オレは声を更に低めて彼女の耳に口を寄せて囁く。
「糸さんがオレを求めてくれるのなら、喜んで先に進められるってこと。」
「え・・?」
オレの左手がゆっくりと動いて、先ほど掠めた彼女の乳首の先を引っ掻いた。
「あ!・・・ん。」
「でも、今の状態では可愛い声を思いっきり聞けないね。やはり状況は選ばないと。」
指先で感じる限り、彼女の乳首は硬くなっていた。まあ、感じたからなのか、外気に触れて冷たかったからかはわからない。ためしに指で摘み上げると、彼女の身体が大きく震えた。
「まこ、やめ・・・」
「ねえ、感じてる?オレはすごく感じているよ。」
摘み上げた乳首を人差し指と親指でゆっくりと転がし、そして乳房の中に指先で埋め込む。
乳首を弄んでいる間、彼女はかすれた声を苦しげに漏らしている。上気した頬とうつろな眼差しがとても色っぽい。自分じゃわかっていないだろうね。
つくづくチェリーじゃなくてよかった。今の彼女と状況を前にして、後先考えずに襲い掛からないですんでいるのは、たぶん昔のくだらない経験のおかげだな。
ズボンの中の分身は少しおさまってきた。
よしよし、我ながらすごい忍耐力だ。ブラボーと自分に声をかけていると、糸さんがオレを見上げてきた。
「まこ。」
「何?糸さん。」
次にきた衝撃は簡単には忘れられなさそうだ。糸さんがオレの腕の中で身じろぎしたので、抱きなおそうとした途端に振り向いて、そっとオレの強張りにズボンの上から手を這わせた。
「!」
「これ、きつくない?何かできないかな?」
あろうことか、ジッパーに手をかけておろし始めた。
「糸さん!」
オレは慌てて、彼女の手をとろうとしたが、一気にジッパーをおろされた。
「糸さん!ちょ・・・」
「なんだか苦しそう。」
ズボンの開口部分から覗いている下着に包まれた「あれ」をじっと見ている。
糸さん、はしたない。家でいくらでも見ているでしょ?いたたまれない気分になったが、俺が何か言う前に彼女の指がそっと触れてきた。やばい!
彼女の指に反応したオレの下半身が再度元気になってしまった。
「まこ・・・なんだか大きくなったかも。」
「糸さん。」
コノヤロー。悪気がないから余計始末が悪い。
よろしい。あなたの観察意欲を満足させてあげますよ。
その代わり、責任はとってもらいます。オレは自分の行動に大幅修正をかけた。
「糸さん、触っちゃだめ。後戻りできなくなる。」
「え?」
「・・・もう遅いけどね。出して。」
「え?」
「ここまで刺激したら出さないといけないの。早くオレのペニス出して。」
「あ・・・出すって?」
パニック気味な彼女の言葉を聞き、ため息をついて、オレは自分で出した。
今日はズボンを履いているので下着も男物を着用していた。
下着の開口部から勃起してしまっている「あれ」を器用に取り出した時の糸さんの表情は見ものだった。
「お・・・おきぃ。」
「触ってみて。さっきまで触っていたから大丈夫だよね。」
オレを振り仰いだ表情は完璧に怯えている。あ〜あ、怖がらせたくなかったのになあ。
恐る恐る触ったら、それに反応したオレの分身に更に怯えた目を注ぐ。
「両手で持ってみて。」
オレは気を取り直して、優しげな声で糸さんにお願いする。
「この状態になる前に落ち着かせようとしていたんだけどね。糸さん、責任取ってくれる?」
「せきにん?どうやって?まこ・・・」
「今日のところは、手でいかせてくれる?」
糸さんの目と口がまん丸になった状態で凍結している。やっぱり反応が面白すぎる。
オレはくすっと笑って、彼女の両手をとって、そっとオレの分身に添わせた。
「このまましごいて射精させてくれたらいいから。それともお口を使ってくれるの?」
「うー・・・」
「ん?」
「まこ、どっちがいいの?」
凍結が解除された。先ほどまで呆然としていた表情にいつのまにか一本芯が通っている。
オレが好きな糸さんの表情だ。
「勿論、糸さんの下の口がいいけど。」
「ちょっ!私が言っているのは!」
「わかっている。選べというならその可愛い口のほうが嬉しいよ。温かいしね。」
「う・・・わかった。初めてだけど・・・」
初フェラだってさ。顔を真っ赤にして両手でオレのペニスをささげ持っている。
見ていて痛々しい。でも、彼女が少し手を動かすだけで、オレの分身は更に反応して先走りまでにじんできた。思いっきり下手なのに、糸さんに触られていると考えただけではじけそうになる。
ペニスの先を睨んでいた糸さんが意を決したように舌を出して舐めた。
無茶苦茶気持ちいいのですけど。
「そのまま、ゆっくりと舐めながら、亀頭以外にも手を這わせてみて。」
「キトー?」
「舐めながらしゃべる時は、なるべく歯が当たらないようにね。」
「ごめん。痛かった?」
いやいや、子猫に引っかかれたようなもんだ。オレの下半身はあまりの気持ちよさに狂喜していますとも。
「変な味がする。」
「そっか、大きく口を開けてみて。」
「え?」
「歯を当てないでね。」
素直に口を開けた糸さんに優しい慈愛の笑みを見せながら、オレは彼女の頭を両手で固定しながらペニスをゆっくりと突き入れた。オレの股間の前にいる糸さんからくぐもったうめき声が聞こえる。
一度、引き出して、その表情を伺う。
「大丈夫?」
ゲホゲホとなみだ目で頷く糸さんの頬に指を滑らせて優しく撫でる。
「苦しかったら、右手を上げて合図してね。呼吸は鼻でしてね。」
虫歯治療中の歯科医みたいなセリフを吐き、彼女の頭を再度固定してオレは本格的に抽送運動を開始した。糸さんの口腔内はとても気持ちよくて、最初遠慮がちだったオレの動きがそうでないものに変わるのも早かった。
個人的にはこの行為自体はもともとそんなに好きではない。相手をもの扱いしているようで良心の呵責も感じるし、人の顔がゆがむのを見ても嫌悪感を感じるだけ。
でも、糸さんが相手だと全く違う。苦しげな彼女を見るのは本意ではないはずなのに、倒錯めいて興奮する。癖になりそうだ。オレの中にこんな性癖があったなんて驚き。
糸さんを見やると、苦しそうなのに一生懸命我慢しているのがわかる。
その様子に愛しさがこみあげてくるが、同時にもっと追い詰めたくなる。
とっさにこぼれた涙を隠す仕種に気付いたときは頭がくらくらした。
だめだ、可愛すぎる。もっと泣かせたい。
そう思ったときに耐えられなくなり、発射してしまった。・・・早すぎるだろう?だめじゃん、オレ。
不意の射精で用心していなかった糸さんの上気道も塞がり、彼女は苦しそうに咳をしている。
後ろポケットに入れていたティッシューを取り出して、オレは糸さんの口に当てた。
「吐き出して。」
鼻から出た分の処理のために更にティッシューを使うよう身振りで示し、彼女は大人しく小さく鼻をかむ。精液を吐き出しながら、若干、飲み込んだ感触があったのでオレは少しドキッとした。
「まこ・・・苦い。」
「ごめんね。気持ちよかったので中に出しちゃった。」
射精したおかげでオレの戦闘的な気分が解消された。
たぶん、糸さんもそれを直感で気付いているかもしれない。
オレを見上げて恥ずかしそうに笑顔を見せているその可愛さ。
これは凶悪だ。お願いだからこれ以上刺激しないでくれ。
「糸さん、センサー解除されたら、早めにシャワー浴びようね。」
「うん。疲れた・・・。」
オレは彼女を抱きしめながら、そっと口付けた。
独特の生臭さが辺りに漂っている。ま、そのうち消えるでしょ。
「まこ、味がするから・・・」
「大丈夫。ごめんね。苦しい思いをさせて。」
糸さんは大人しく抱きしめられながら、ふと微笑した。
「なに?」
「まこってやっぱり男だったんだ。ちょっと驚いた。」
「・・・今まで何だと思ってたの?」
「でも、よく隠せているね。まこの・・・」
「ペニス?」
言いにくそうに赤らむ糸さんの頬に唇を滑らせながら、言葉の後を継いだ。
「普段からあのサイズではございませんことよ。お姫様。」
「そう・・・そうだよな。でも、あんな大きいのどうやってはいるのか。いたっ!」
オレは糸さんに思わずでこピンしていた。
「折りたたんで入れるわけではないことは確かね。」
「兄ちゃん達もあんなになるのか?」
「もう・・・糸さん。そのはしたないコメントの数々。少しは恥じ入りなさい。」
「うわ、どうしよう。茜さんが気の毒になった。」
「あのね・・・」
急に彼女の身体を支えながら、くるっと入れ替わった。突然、オレの下に敷かれた彼女は目を大きくしている。体重を少しかけて簡単に動けなくした上で糸さんの目を覗き込みながらオレはにっこりと微笑んだ。
「人の心配よりは自分のね。」
「あっ・・・」
真っ赤になってじたばたし始めた彼女をあっさりと解放したオレはあくびをかみ殺した。
結局一睡もしなかった。今日は厳しい一日になりそうだ。
― 完 ―
★★★★ 合同夏合宿[打ち上げパーティの後] ★★★★
甲斐監督の特別演技指導を受ける日は滞りなく終わった。
ある意味、最後の打ち上げパーティが一番きつかった気がする。
「結局 糸さん、なんて書いたの?」
「だっ ダメ秘密!!」
「いーじゃん、私には教えてくれても。」
(だからダメなんだってば。)
少し拗ねたようにこちらをねめつけながら近寄ってくるまこは今日も綺麗。
「あっ・・・あーあ、飛んじゃった。」
あたしの希望を書いた紙が燃えながら飛んでいく。あれが完全に燃えきったら安心だ。
「いーんだって。」
こいつの運動神経は半端ではないから完全に燃えつきるまでは安心できない。
牽制するように通せんぼをしたら、あきれたように笑っている。
《将来 真琴と結婚できますよーに。 桜高 三浦糸》
誰にも見られないことを前提に書いた内容だしね。空中で真っ黒に変色するのを見て安心した私は逆に質問を返した。
「まここそ、なんて書いたの?」
「役者になりたい。」
「えっ!何だよそれ。ズリーの。」
ゆっくりと歩きながら、ふてくされたように返ってくる言葉。
「教えてもくれない奴には言われたくないセリフだね。」
空中で燃えた紙がまこの足元に落ちた。ちらっとそれを見、足で粉々に踏み潰したまこがこちらを見てにやりと笑った。あれ?まさかね。燃えてたし。あたしのとは限らないし。
「来て。糸さん。」
優しい声音でまこが誘う。だれが聞いても無邪気な女友達(親友)からのお誘いだけど、何故か背中がゾクゾクした。あの笑顔が怖い。知り合って1年以上、常に一緒にいる親友(兼恋人?)だけど、女から男への切り替えの鮮やかさには毎回感心する。
それと表面は同じだけど、何故か危険な雰囲気の時がわかるようになってきた。
「どこにいくって?」
「けっこん」
「・・・!」
「について聞きたいなー。」
なにいいいい!あたしの希望だったのかよ!でもちゃんと燃えたのに。
「燃えていても表面に書かれている文字って判別つくときがあるよ。ちゃんと燃えカス潰すまでしないと。」
だらだらと嫌な汗が出てきそうだ。きっとあたしの顔は引きつっていたのだろう。
まこがにっこりと微笑んでいるのが見える。
「ついてきて。」
市場に牽かれていく仔牛だかの気持ちがよく理解できそうだ。でも、この雰囲気のまこには何故か抗えない。これもほれた弱みか・・・。
まこは途中からあたしの手を握り、少し足早に森に連れ込んだ。
「それでね。糸さんの希望を無理に聞きだすつもりはなかったんだけど、あれだけ必死になって隠そうとしていたから気になってね。」
立ち止まって、まこが話しかけてきた場所はキャンプファイヤーからそれほど離れていず、誰からでも遠めに姿が見える大木を背にした場所だった。もっと人気がない場所に連れ込まれると思っていたあたしは少し安心して気が緩んだ。
「まあ、まこには教えてもよかったんだけど、やっぱり人に見せるつもりはなかったから恥ずかしくてね。」
「でも希望する結婚相手にぐらい教えて欲しいよね?」
「ごめん!でもやっぱり恥ずかしかったからさ。」
あれ、あたし何で謝っているの?
「ふ〜ん。安心した。相手はオレなのね。」
「ちょ・・・こんなところでその口調は・・・え?」
誘導尋問?遠くのキャンプファイヤーの光に照らされ、暗がりに浮かんでいるまこの笑みが深くなる。急に腕をつかまれ、もたれている大木の反対側に誘導され、途端に口をふさがれた。唖然としているあたしから唇をはずして、殆どくっつきそうな位置で囁く。
「さすがに全文は見えなかったけどね。結婚っていう文字だけは判別できました。」
「この〜・・・ん」
角度を変えて、再度口付けられてあたしは続く言葉を吸い取られた。
「まこ、こんなところで何考えてるの。人に見られるよ。」
「そうだね。」
頭を振って口付けから逃れ、あたしは低い声で叱咤する。まこは涼しい顔であたしの言葉を聞き流している。思わずかっとなったが、まこが耳元に唇を寄せ囁いてきた。
「しー。人目を引くよ。」
まこの低い艶がある声音で近い場所から囁かれると力が抜けてしまう。
きっと、知っていてわざと使ってるに違いない。
そのまま、耳に息を吹き込み、うなじに舌を這わせてくる。
数日前に洗濯部屋で朝までセンサー解除を待っていた時の事が生々しく思い出される。
やっぱり、さっき感じた危険信号は正しかった。
雰囲気的にこいつは確信犯。この場所を選んだのは逆にあたしを動けなくさせるため。
「マークつけたいな。でもここじゃ目立つね。」
首筋に口を這わせながら、とんでもないことをほざく。
やめれー・・・・!!
「ああ、いいとこ思いついた。」
あろうことか、あたしが着ているランニングをめくりあげてブラジャーの下のわき腹に唇を這わせる。
「・・・いたっ・・・」
ちくっとした。たぶん強く吸い付かれたんだと思う。
「ついたかな?暗くてよく見えないや。」
更に数箇所に同様に吸い付いて、その場所をじっくりと観察している。
いい加減立ち上がってくれ。
「糸さん。そのまま木にもたれていてね。」
下から低い呟きが聞こえる。先ほどよりもっと低い位置のようなのでドキッとした。
「フリースパンツって、動きやすいし温かくていいよね。」
「まこ・・・何してる?」
「い・た・ず・ら。」
急にあたしの股間にまこがキスした。えええええ?
ゆっくりと立ち上がりながら、それにあわせてまこの右手があたしのフリースパンツの中に差し入れられてくる。
「手も入れやすい。ちょっと確認させてね。」
「な・・・何を確認・・・やめ。」
そのまま下着の中に右手は進んでいく。
「濡れているかどうかをね。」
「!」
息を呑んでまこを見ると、鋭い目つきで目を覗かれていた。
「暴れちゃダメだよ。目立つからね。木の陰だけど・・・。」
口角を少し上げて、目を和ませる。くそっ。どんな表情をしてもかっこいいな、こいつ。
・・・って感心している場合ではない。なめやがって。
「あ!!・・・」
ゆっくりとクリトリスに指を這わされた。ほんのちょと触れただけなのに、ここまで衝撃を受けるものなのか?触られた場所がしびれるような感覚。指はそのままソフトにあたしの股間をなでおろして行く。
「嬉しいな。濡れてるね。」
「く・・・」
ゆっくりと降りていった指が、茂みを掻き分けるように優しく膣の入り口に触れ、そのまま差し込まれていった。
「いや・・・まこっ・・・」
「だまって」
口をふさがれながら、まこの舌が侵入してくる。ひどいよ。こんなの。まこの馬鹿。
あたしの舌にからんだまこの舌。拒否しようとしたけど、一度捕まったらそのまま吸い出されそうになった。
一度、口を離して、まこがあたしの顔を近距離で覗き込む。
「見ていい?」
「え?」
あたしの返答も待たずに再度足元に跪いた。ちょ・・・まじで何を。
いつの間にか外に出されている右手と左手を両方ともあたしのフリースパンツにかけている。
我ながら蒼褪めてしまったのかもしれない。こんなところで何をしようとしているんだ!
ばか。やめろー。
ぎゅっと目をつぶって身構えた。
「・・・・」
でも、想像していたことは起こらず、まこが立ち上がってあたしを抱きしめるのを感じた。
まこの唇があたしの頬をたどる。頬が濡れている。
恐る恐る目を開けると、まこの申し訳なさそうな顔が正面にあった。
「ごめん。糸さん。暴走した。」
許しを請うように、抱きしめてくる。
思わず安堵で涙がこぼれた。
「ごめんね。」
「まこのばかやろー・・・」
呟くように悪態をつく。今頃になって身体が震えている事に気付いた。
まこに促されて木の陰に座り、隣に座ったまこが優しく肩を組んでくる。
身体の震えとあわせて、動悸もすごく大きい。
なんて罪作りなやつだ。まこのやろーめ。
そして相手がこいつだと何でここまで無力なんだ。
殴り飛ばす・・・ことは無理だろうけど、せめて逃げる隙ぐらいなら作れそうなのに。
でも、逃げそこなった時の事を考えると、足が竦む。
兄ちゃん達や親父と比べてもこいつは遜色がない。
敏捷性などを考えたら、もしかしたらもっと強いかもしれない。
そんな奴に本気で追われるなんて、考えただけでも恐ろしい。
つらつらとそんなことを考えているうちに、身体の震えは止んだようだ。
胸の動悸も治まってきた。黙って差し出されるティッシューを受け取って鼻をかんだ。
なんだか、この前から同じ事を繰り返している気がする。
そういえば、今日はなんでこんなことになったんだ?
殆ど行きがかりと言いがかりだった気がする。
何か文句のひとつでも言ってやらねば。
隣に座っている奴に目をやって口を開けようとすると、その気配に気付いた奴は自然にあたしの頬にキスをした。
「な・・」
「糸さんがあまりにも可愛いすぎて、自制がきかなかったよ。オレとの結婚を真面目に希望として書くなんて・・・。」
「う・・・」
「未来の夫としましては、妻の身体の検分をしたくなりまして・・・。ごめんね、ちょっと強引だったね。」
あれが「ちょっと」だったのか!?
あたしは思いっきり胡乱な目つきでまこを睨んだが、やつはにこにこと優しく微笑むばかり。全くうろたえてもいない。
「今日は嬉しいお土産も貰ったことだし。」
「へ?」
にっこりと笑って、まこは右手を自分の顔の前に持っていく。
「もう乾いてしまったけど、匂いは残っている。」
ぎゃーーーーーー!
「早くそんなの洗って、まこ!」
「嫌だよ。」
「洗えーーー!!」
あたしはまこの右手首をとって、力任せに洗い場の方向に走ろうとしたが、振り払われた。
「待て、まこ!」
「い・や・だ。」
「このーーーっ!」
笑いながら逃げていくまこを追っかける。全く追いつけない。
ヤロー、本気で逃げてるな。
「仲がいいのね。桜高のお二人さん。」
「あれ、糸さん、どこにいたの?」
「伸子ちゃんがさっき探してたよ。」
行く先々で色々と声をかけられる。
適当に返事しながら、まこを追っかけたが結局は振り切られた。
ずるい奴だ。
次に会ったときは、右手は匂ってなかった。
洗ったのか。よかった。
すれ違いざまに小さい声で「なくなっちゃった。今度補充させて。」と甘えられ、周りの人間が「?」という表情をする中、慌てたあたしをその場に残し、確信犯の高笑いとともに奴は去っていった。くううぅ・・・。
さて。
糸さんはしばらくの間、人目がある場所で着替えができずに大変困りました。
わき腹の微妙な位置に明らかなキスマークが散在している様はとてもとても目立っていましたので。
(いつか殺す!)
― 完 ―
★★★★ 合同夏合宿[打ち上げパーティ後の後] ★★★★
4泊5日の合宿最終日、オレは布団に入った後つらつらと考えていた。
オレ以外の310号室メンバーは皆ご就寝中。糸さんも同じ部屋だが、疲れてぐっすりと寝込んでいる気配がある。部屋に2個設置されている二段ベッドの下段にはオレと糸さんが振り分けられた。身長と体重あたりで決められたんだな。気分的に軽そうなのを上段に乗せたほうが安定がいいのだろうか?まあ、どちらでもいいけどね。
オレが寝ているベッドの上段には三咲が寝ている。打ち上げパーティでのサプライズ告白のせいで、きっとこの子も疲れたのだろうな。時々寝返りを打っている。
「・・・んっ・・・」
向かいのベッドから糸さんの声が聞こえた。寝言かな?
山の気温は低くて、真夏でも冷房なしで気持ちよく過ごせる。
夜も寝苦しくなく、皆ぐっすりと快眠できるのはいい事だ。
ふと先ほどの糸さんを思い出してオレは頭を抱える。
あんなに怖がるとは思わなかった。策士策に溺れた良い例だ。
彼女の動きを制する意味でよい場所だと思ったが、それが原因で追い詰めてしまい、結果的に何もする事ができなかった
いや、何かはしたが、言葉どおりの「いたずら」で終わったな。
オレは苦笑しながら二段ベッドの天井(上段のマット)を見上げた。
糸さんを追い詰めるのは実際のところ楽しい。そのせいで歯止めが利きにくくなる。
数日前に洗濯部屋で自分の隠された性癖に気付いた時からオレは糸さんをいじめる妄想をするようになってしまった。糸さんを優しく甘やかすのも、いじめて泣かせるのも、誰にも譲らない。オレだけがやっていい事だ。
でも、このように強く意識するようになってから、オレは男の心になる頻度が高くなった。
親父との約束があるから、気を抜くのは非常にまずい。
糸さんにしても、怖がらせすぎてオレから離れていくなんて事になったら目も当てられない。自重しろ。
そう思いながら目を閉じても眠りはなかなか訪れなかった。
震えながら、こらえきれない涙をこぼすほど怯えた糸さんの姿ばかり思い出される。
追い詰めすぎたことに気付いて内心慌てて取り繕ったが・・・オレは興奮していた。
(やべーよな。)
ため息が出そうだ。
しかし、何で感じているのか確かめようと思ったんだろう?
我ながら神がかっているかもしれない。
キスマークをわき腹に散らす程度では普通は濡れないのではないか?
糸さんみたいに初心な人ならあり得るか。
そう思いながらもオレは違うと感じてた。
あそこまでの言葉のやり取りと追い詰められた事実に反応したのではないかと思う。
オレの手前勝手な希望かもしれないが、糸さんはいじめてもオレが相手の場合に限り、受け入れてくれる気がする。
(ま、これは危険な妄想だけどね。)
さーて、明日は帰宅だ。夏もあと少し。
★★★★ 合同夏合宿 ― 完 ― ★★★★
<<管理人より>>
すっかり大奥を干からびさせそうな管理人に痺れを切らして、
k.さまが大量の糸まこをお送りくださいました。
ありがとうございましたっ!
恐れ多くも3部構成という、私にとって未知の世界への誘いでございます。
いろいろスゴイです(笑)。
しばらく独り占めしてて年を越えてしまったんで、
皆さまもじっくりご堪能ください。
私としては、
1部でまこりんに「どっちがいいの?」と訊く糸さんに、
エロつぼ爆破されました。
我ながら反応早くてちょろいなあ(*^。^*)
私の大切なこっちの世界を潤していただいて、
感謝の言葉もありません。
ご馳走さまですw
何度でもメインのお皿はお待ちしておりますので、
おかわりよろしくです(@^^)/~~~
(2013..01.25)