7月23日午後11時30分















月明かりで仄かに明るい部屋の中で糸はうっすらと眼を開けた。


ぼーっとした頭で初めに知覚したのは、
自分は仰向けに寝ているということと、ここが自分の部屋ではないということだ。

天井が違うし、真新しいペンキの匂いが微かに漂っている。

見慣れない壁掛け時計は、蛍光で光る針が11時30分を指している。



――――そうか、ここは―――



そこまで考えて、やっと自分の身体にかけられた重みに気が付いた。


そもそも、糸は普段眠りの途中で目が覚めるタイプではない。

目覚めたのは糸の上半身を横断してかけられているものの重みのせいであり、
それは隣で眠る真の長く逞しい腕だった。


糸を腕の中に留めようと優しく、だがしっかりと糸のことを抱き締める真。


糸はそんな真を起こしてしまわないように首だけを右に向け、
自分のすぐ近くですやすやと眠る愛しい夫の顔をじっと見つめた。

行為後、自分の意識が戻った後は
面映ゆくまともに真の顔を見ることが出来なかった。

(勿論、糸のそんな様子を可愛く思った真に散々からかわれたのだが。)


今は天使のような美しい顔で静かに眠っているが、数時間前、
すなわち糸が意識を失う前まで息を荒げ一心に自分を求めてきた真。

初めての性交渉ということで恐怖心や羞恥心でいっぱいだった。
しかし今、真の新たなカオを見れた嬉しさと真とひとつになれた喜びで
糸の心は満たされていた。

意識して考えるでもなく、
糸は自然と、お互いの情熱をぶつけ合った長く短い刻を思い出していた。







糸の顔のそこかしこにおとされた柔らかく濡れた唇。


どちらからともなく舌を絡めあい息も出来ない程にお互いを求めた接吻。


耳に、首筋に、鎖骨にと次第に降りてかかる熱い吐息。


背中から伝わる真新しいベッドの感触。


自分の胸にそっと触れゆっくりと揉み始めた真の掌。


一瞬ぎくりと緊張した自分の身体。


乳首を弄る長い指と、ぴちゃぴちゃと胸を舐めまわすざらついた舌の感触。


その感覚に溺れそうになるのを堪えるため抱き締めた真の、さらさらとした金色の髪。


左手は乳房を弄んだまま、なぞるように太股に下ってきた真の右手。


その手がそのまま糸のショートパンツを脱がし、
下着の隙間から既に熱を帯びた秘部に触れたとき身体を駆け抜けた電流。


糸自身でさえ知らない箇所に本数を徐々に増やしながら挿し込まれる長く繊細な真の指。


下半身から微かに聞こえるくちゅくちゅという水音に狂わされていく聴覚。


先程まで蠢いていたものとは違う、もっと太く固く長いものが身体を貫いていく時の、
今まで感じたことのない感覚と激痛。


きゅっと真の背に食い込ませてしまった爪。


「大丈夫?」と自分を心配そうに見つめる瞳。


こくりと頷いた時に絡み合った、お互いを恋うる熱い視線。


真が自分の中で蠢く度に痛みに代わって自分を支配していく快楽。


じんわりと肌に浮かんでくる汗のつぶ。


思いがけず発した自分でも聞いたことのない恥ずかしい声。


下半身から聞こえるジュプジュプという独特の、空気と二人の愛液の混じりあう音。


二人の荒く乱れたせわしく刻む呼吸。


そんな中でも囁き続けてくれる真の「糸さん」という耳慣れた、
けれど常に彼への愛おしさをもたらしてくれる響き。


快楽に身を任せ本能のままに発した喘ぎ。


そして次第に遠ざかっていく意識―――







たった数時間前の自分たちの営みを思い起こし、
糸は頬が火照るのを感じて思わず手を自分の頬に添える。

しかし恥ずかしいと思いつつも、糸の頭は真への愛しさでいっぱいで、
羞恥心よりもただただ嬉しさの方が勝っていた。



――――結婚、したんだ、真と―――



糸は自分の肩に回された真の右手に、そっと自分の手を重ねた。

先程まで顔を火照らせていた熱が胸の奥に移り、自然とそうさせたのかもしれない。



――――きっとすぐにこの重みにも慣れ、愛おしくさえ感じるようになるのだろう―――



そんなことを思い、糸は再び深い眠りに落ちていった。




その頬に幸せそうな微笑みを刻んだまま――――









fin.












































































<<管理人より>>


朝水惠さま!
ご寄稿、本当にありがとうございましたっ!

おご馳走様でしたーっO(≧▽≦)O

勝手ながら、糸さんのお誕生日=結婚記念日祝いとさせていただきます♪

あの後の妄想をしていた方に巡り合えて感激ですっvv

あああ、もう、Wジュリって素晴らしいっ♪



糸さん、おめでとうvv
ついでに(?)まこりん、おめでとうvv





(2007.07.23)