昔、結構まおは自分のでばんを気にしてた気がする。
確かに、キャラがメタ的発言をすることは結構あるんで。
何せこの世界観はかなりメタな部分に肝があるわけなんですが。
「あのさあまじー」
お化け屋敷・THE・魔物街の中央に、広場と隣接した大きな建物がある。
教会だ。
まぁ、たとえばゾンビものの映画なんかじゃ、ここに逃げ込んだ主人公にゾンビが殺到したり。
アクションだったら、やくざに囲まれる中を銃撃戦で駆け抜けるすさまじい愛があったり。
そんな場所。
「はあ、なんでございましょうか」
まおの前にあるのは、ほかほかと湯気の上がる暖かい七面鳥。
もちろんまおの方から見れば、既にいくらか削ったようになくなっている。
「そなのよねー、そなの。あたし昔はでばんでばんってずーっと言ってた気がするのよね」
「はあ。左様ですな」
やる気のないマジェストの応え。まあ、マジェストがあんまりやる気になっているのも困る。
くいとめがねを押し上げて、めがねをきらりんと光らせる。
「で、陛下。いったい何を言いたいので」
「うんー」
と言いながら七面鳥をさくり。
「たべものはおいしーし」
実際以前は四角いソフトビスケットのような、版権の都合で味の変えられないものしか食べさせてもらえなかった(食べる分には食べていた)。
それに比べればどんな食べ物でも見事なごちそうである。
「以前よりのんびりしてるきがするのよね」
「魔王陛下、それは大きすぎる間違いでございますぞ」
きっらりん。待ちかまえていたように眼鏡が光る。
「陛下、陛下が食事をなさるたびに財政がぎしぎしとかたむくのでございます」
「どんだけ厳しいのよ」
というか食べているものが高いのだろうか。
マジェストは嘆くようにため息をついて首を振り、右手を胸に当てる。
「魔王陛下の一食は我々の食事一月分にあたります」
「ほんとにどんだけっ」
驚くまおの目の前で、七面鳥の丸焼きをひょいと取り上げて、後ろに控えるコルトに渡す。
コルトは傅いた格好のままそれを受け取ると瞬間、姿を消す。
「あ゛あ゛あ゛あ゛っ!」
「これで魔物20家族が救われるのです魔王陛下。残念ながら我慢くだされい」
「我慢くだされじゃないやい!それになんでそんなにうれしそうなんだっ!」
ふ、と口元をゆるめるマジェストに、両目から涙を滂沱とあふれさせて叫ぶまお。
「前回からなんでこーなのよー!」
「いや、しかし、まぁ陛下。近々陛下の出番となるようではありますが?」
ぱちくり。
「ほへ?だってまだ全然お話すすんでないぢゃん」
にやり。
「魔王陛下。話が進んでいない最大の理由は、今128話全部読み返してるからであって。否応なく陛下は登場しなければならないのです」
うるさい。
「……なんで?」
「タイトルが『魔王の世界征服日記』だからですよ、魔王陛下」