このころ、話は佳境に。
 とうとう魔王の城と、やる気になったまおが勇者の前に現れて。
 勝手に予測する二人。
 「とうとう本編は佳境だねー。ところでナオとかどうするのかな?」
 まおは執務机に両肘をつけてぷらぷらと両脚をふりながら、首をこてん、こてんと左右に倒す。
 リズミカルに楽しそうに。
「はい。当然魔王陛下をばっさり両断。『やたー!勝ったー!』でしょう」
「……まじー。なんだか馬鹿っぽいよ」
 じと。
「は。では『勝った……だが、むなしい……』こうですかな」
「あのね」
 両手のうえに顎を載せて、大きなため息を付く。
「だれが勝ちぜりふの話してるのよ。これからのことよこれからのー」
 ぶぶーと口を尖らせて嫌そうに言うと、マジェストは対照的に笑って後頭部をかく。
 勿論笑って誤魔化しているのだ。
「そんなもの、私が言える訳ないでしょう」
 まおはジト目をぐっと大きくする。
 ジト目のまま。
「なんでよ」
「ネタばれで御座います。そんな事できる訳ないでしょう」
 ふうやれやれ。
 マジェストの正論に、両肩をすくめてまおは馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「な、なんですか?」
 そしていつものようにぴょこたんと椅子から飛び降りて、小さな胸を大きく反らせる。
 どん、いやとん、と胸を叩いてにっこり笑う。
「胸を貸してあげるんだもんね!やっぱり『まお、俺みなおしたよ』って言ってくれるかな?」
 こんどはマジェストがふうやれやれと肩をすくめる。
「何を言ってるんですか。ヒロインのくせに」
「はっはっはっは、まじー?いいですか?ヒロインはキリエちゃんー。私は主人公」
 ちちち、と人差し指を振りまおはふふん、と笑みを浮かべている。
「主人公には色々特典があるんですよーだ」
 マジェストは自慢げな彼女に、やっぱりため息を付いて、かわいそうなものを見る目で彼女を見つめる。
「しかしながら陛下。それはおんなのこの自慢ではありません」
「え」