段々気温が上がっていく今日この頃。
 夏服も用意したくなる程気温が上昇して、汗ばむ日差し。
 無論それは魔城でもおんなじで。

 非常に残念ながら、もう桜も散ってしまった。
「お花見過ぎるとすぐあつくなるよねー」
 ぱたぱた。
 あろうことかむなもとをぶわーっと開いて、うちわでばたばたあおぐまお。
「ふぅいー、あくせらー、しえんたー?」
「はぁいまおさまー」
 とてとてとて。
 駆け寄ってきた二人に団扇を渡すと、なんの躊躇いもなくあおぎ始める。
「あーすずしー」
 でろーんと前屈みになって、服の隙間という隙間から風が入るようにして両手を地面につく。
「魔王へい……へいかっ!」
 ばたばたばた。
 慌てて駆け寄ってくるマジェスト。
 彼はまおを引き起こすと服をきちんとしつけて、彼女の全身の埃を払う。
 そして、くるりと周囲を見回すと、彼女を睨み付けて見下ろした
「陛下。流石にその恰好はまずいと思いますぞ」
 人差し指を立てて、ふん、と鼻息荒く。
「なーによー。あついんだもんしかたないぢゃん」
 ぷい。
 こうしょうけつれつ。
「魔王陛下。陛下は、腐っても魔王陛下ですぞ」
「くさってないわよ」
「で、では腐ってないけど魔王陛下だとしてもおんなのこですぞ」
 む。
 何故か顔を赤らめるまお。
 で、睨むように上目遣いに顔を上げる。
「……わかったよ。もうしない」
 そして、ぷいと視線を逸らしながら目を伏せる。
「よろしい。……ですが、確かにこのところ暑いですなぁ」
 そう言う彼の額には汗粒どころか、妙にすずしげである。
「ちょっと、おかしいんじゃない」
 ごそごそ。
「こ、こら陛下、やめな、ぷふあははは」
「ぶ、ぶぅえっっ!」
 マジェストのローブの中に潜り込んだまおだったが、すぐ真っ赤な顔で顔中から汗を吹いてでてくる。
「あちーっ!あついあついっっ!」
 ばたばたばた。
「だから言ったでしょう、暑いときには蒸し暑く、寒いときにはさらに凍てつくようにと」
「なんであんたへいきなのよ」