ぽかぽかと、お日様の暖かさが身に染みる昨今。
 既におひなさまは過ぎてしまったので、ネタをネタとしてつかうしかなかった。
 まおは今日はテラスでひなたぼっこだけど……。

 ぽかぽか。
 思ったより早く、春の日差しが降り注ぐテラス。
 ここ魔城のテラスに、とろけたかおのまおがくてーと手すりの上にぶら下がるように体重をかけていた。
 両腕の上に、自分の頬を載せて。
「ふー」
 ぽかぽか。
「魔王陛下、そんなところでそんな恰好で、襲いますよ」
「襲うなーっ」
 がばり。
「冗談で御座います。なんでそんな、チープでありきたりな事しますか」
 両肩をすくめて、掌を上に向けて、いかにも馬鹿にした表情でため息を付く。
 自分で言った癖に。
「でもここ最近あったかいじゃない?」
 真冬のような怖ろしい寒さは、確かにここ最近はない。
 下手すれば汗ばむほどの気温だ。
「そうでございますな。衣替えの準備をしなければなりませんな」
 いそいそと自分の服を脱ごうとするマジェスト。
「こらこら」
「いえ、陛下。このローブは以前にも言いましたが、暑い時には蒸し暑く、寒い時にはより寒くする機能がついてますゆえ」
 無駄な機能である。しかし、マジェストは顔色も変えず汗もかくことなく過ごしている。
 或る意味何処まで本当なのか確かめたくなる。小一時間ほど。
「切り替えないと夏に涼しいという異常な現象が」
「異常なのかー!」
 そっちの方がいいじゃないか。
 初めからスイッチを間違ってただけ何じゃないのか?
「私のローブですから」
 何となくそれだけで納得できそうな気がした。
「しかし春だよね。結局雛祭りネタできなかったし」
「やってたら間違いなく魔王陛下はおよめさん候補から外れましたが」
「だれがだれのおよめさんだー」
「魔王陛下が、未来のおむこさんの」
 何となく言葉尻に違和感を感じる物言いで、しれっとマジェストは呟く。
「おむこさんのおよめさん候補から外れるというのは矛盾してない?」
「ふむぅ。矛盾……ですがしかし、今雛人形を飾って白酒飲ませて甘酒片手に『もーいくつねーるとーひなまつりー』と歌って戴きたいですな」
「ばかにしないで。これでもそんな無茶苦茶はしないよ」
「大丈夫でございます陛下。その程度で行き遅れるようなら、私の娘ではありませんから」
「初めから違う」