しつこく繰り返したクリスマスネタも、多分これが最終。
とうとう今回はネタ切れのためまおがコスプレサンタ!
格好がアレなのはご勘弁いただこう。
「じんぐるべーじんぐるべーすずかーぐらー」
「こらこら、魔王陛下ともあろうものがお客様に対してなんですかその態度は」
ちなみにサンタの恰好である。
いい加減飽きたからと言ってクリスマスをやらない訳ではないらしい。
しかも大事な常連様の名前で思いっきり間違ってるし。
サンタさんといえば真っ赤な服に白い謎のボア。
あのボアはどうやらシロクマを狩り倒してはぎ取ったものかもしれない。
頭の帽子から裾まで、綺麗な三角形におみあし。
大丈夫、太股は真っ赤なスパッツで、膝上ニーソックスは真っ白で、靴には毛玉のぽんぽんが飾られた赤い革靴。
見事に『ふーぞく系だけどお肌みせてないよ』という似非ロリサンタである。
なお手袋は流行なのか、ボア付きゆびなし手袋(赤)。
「みんなのところにぷれぜんともらいにいくよ!すりーぷおあすとーる!」
「しかもサンタの恰好で泥棒ですか。すりーぷって何ですかすりーぷって」
「ん。おやすみだよ。寝床かしてもらうの」
不思議そうに首を傾げるまお。
「……それはそれで……確かに何かプレゼントっぽいところがあるんですが、陛下」
きらりん。
中指で眼鏡を押し上げるマジェスト。
「『ねどこかしてー。さもなきゃ色々ぬすんじゃうぞー』ですか。ちまみれサンタですな」
む、と彼女は口を尖らせる。
「なんだよー。サンタってそれじゃーなにものだよー」
実はここ、魔城のあるシズオカではツリーを飾る風習はあるがサンタが襲いかかる風習はない。
場所によっては出刃包丁をもって『悪い子はいねがー、強い子はビネガー』と言いながら回るとか。
集団で雪降る中をざくざくと行軍するとか。
地域によってかなり差があるのである。総てサンタだという事を除けば大きくその存在は違う。
「そうでございますね。一言で言えば冬の風物詩でしょうか。精確にはこの季節に稀に出現する謎の魔物」
かっ!と彼の背中に落雷が輝く!
「期間限定イベントモンスターなのです!」
まおは呆れた顔をして、冷や汗を額に浮かべる。
「……なにそれ」
「この期間にだけ出現し、特殊な期間限定アイテムを与えるモンスターのことですよ。陛下、あれだけゲームをやってるくせに知らないとは言わせませんぞ」
そう、MMO-RPGをやる魔王。或る意味しゅーるな光景かも知れない。
むう、と唸ってすこし眉を寄せる。
「でもそんな魔物私造った憶えないわよ」
魔王軍団のまものデザインは魔王であるまおが行った。
ねこかぶとやいぬむすめなどの雑魚は彼女の完全なオリジナル・デザインである。
ちなみに中級魔物と認識されている狩人や猟犬、天使は彼女のデザインではない。
上級に入ると存在その物が変更できないため、魔王に合わせたデザインになるように設定された『個性』を保つ。
もしイベントモンスターであれば、上級モンスターと言うことはありえないのだが。
「そうですな、いわば自然発生した偶発性まものです故に。人の信じるちからが我々を変質させたといいますか」
こうしている間にも、人々の伝承によってつぎつぎに魔物が発生しているのかも知れない。
「えっと。……てことはなに?人から生まれたまものもいるの?」
「当然で御座います。たとえば『恐怖股裂き女』。いつも手袋をしているコートを着た女で、『私の子、可愛い?』と言いながらコートを開いて中から」
「わわーわーっ!駄目駄目だめーっ!」
「……真っ二つの子供を見せる女の人なのですが。……何が駄目なんでしょうか」
ちなみに、子供の手足をもって引っ張り合いをしたために、子供が真っ二つに裂けた故事から産まれたと言われている。
まおは今の勢いではあはあ肩で息をして、真っ赤な顔をしている。
「まってまじー。そんなまもの本当にいるの?」
「ええ、最近発生したみたいですね。この間挨拶に来ていたので良く憶えていますよ。なかなか快活な方でしたよ」
そういうものらしい。
「……ふーん……ともかく、みんなのおたくに向かうことにするね。まじー、案内」
きらりん。
「案内すると思ぉてか!魔王陛下!陛下をそんな危険な目に遭わせるぐらいならいっそこの私がケーキを食べさせて差し上げます」
「えー」
ともかく、めりー☆くりすますでございますみなさま。