秋。ついにこの季節がやってきた。
 陰謀と謀略渦巻く季節。我らがアキ司令。
 魔王もちょっと人恋しい季節らしくて……
 既に中秋の名月とやらは過ぎ去って。
 世界は秋。紅葉にはまだ早いとは言え、既に肌寒いものが。
「秋ですな」
 マジェストは一人呟く。
 秋と言えば人恋しい別れの秋。
 彼はどこからとりだしたのかやたらと冷えたワインが注がれた、表面に霜が降りた赤ワインのグラスを掲げる。
 そしてくいっと一気に開ける。
「まじー?」
 まおが彼を捜しているのか、きょろきょろしながら現れた。
 そして、彼をみてとてとてと駆け寄ってくる。
「おや、どうなされました魔王陛下」
「うん」
 きゅ。
 彼の上着の裾を掴む。
「どこいったかと思ったよ。何かあったの?」
「あ、いえ」
 いつのまにか宙を舞うグラス。
 音もなく宙を舞い、魔城から落下するグラス。
 勿論もうマジェストには取り戻せない、まおにも聞こえない位置で砕け散る。
「ところでどうかなさいましたか。わざわざ私を捜すなんてことはここ最近珍しい事ではないですか」
「んー。やきいもやろうと思うんだよー。いもはあるんだけどさ、おちばもないし、手伝って貰おうと思って」
 まおはいいながらふところからごろごろと赤い芋を出してみせる。
「おお。これは非常に手頃なぽてとですな。焼き菓子にしたり蒸し焼きにしたり」
 良いながら彼女から芋をうけとり、手元で転がす。
「では魔城の入口で焼き芋をしましょうか」
「うんうん!いこいこっ!」

 おもいっきりため息を付く。
 訓練を終えたキリエは、訓練場はずれでため息をついている。
「ほほう」
 何故か嬉しそうなタカヤに、眉を顰めるナオ。
「気味悪いな、タカヤ兄ぃ」
「お、そうか?悪かった」
 といいながらにやにやと笑って続ける。
「キリエの奴どうかしたのか?」
 すごい憂鬱そうな顔でもう一度ため息を付く。
 どうやら秋だからだろうか。
「……何故俺に聞く、タカヤ兄ぃ」
「いや、何となく知ってそうだから」
 実際知らない。
「ここ最近あやしーぞおまえら」
「誰がだ誰が。くだらねー心配してんな兄ぃ」
 とはいえ。
「いや、しかし最近お前ららぶこめしてるぢゃん」
「待て兄ぃっ!ちょっとまてっ!」
 顔を真っ赤にして襟首を掴んでぶんぶん振り回すナオ。
 そして、やっぱり訓練場外れでため息を付いているキリエ。
「秋か……おなかがすく季節なんだよなぁ」
 食べ物がおいしいけども、ちょっと体重が気になる季節。
 訓練後の食事が憂鬱なキリエだった。
「まてまてっ!こんな投げっぱなしで終わるのかっっ!俺はさらし者か!」
 さらしものだ(笑)。今回はオチ無し。ごめん。