実際にクーラーは必需ですな。
 しかし、昔の人の常識を覆す、じゃなくて見習う必要もありきでしょう。
 打ち水を再現とか、そのうたい文句で発売されてます、冷風扇。
 はっきりいうと。
「あーぢーいー」
 ぱたぱた。
「もう残暑見舞いの時期だよねー」
「既にざんしょみまいとくべつ号を発刊しましたが」
 しれっというマジェスト。
 じろ、と睨み付けるまお。
「そんなこといったってー。ねー、魔城のクーラーてこわれてるの?」
 意外と盲点をついてきた。
 マジェストの右のこめかみにひとすじの汗が浮く。
 たらり。
「はっはっはっはっは」
 たらたら。
 たらら。
「くーらーは?」
「壊れる以前に存在しません。CooL!BouZで御座います」
「ぼーずってなんだ」
 というか。
 暑いはずである。
「だったらえあこんいれよぉよぉ」
「エアコンですか……」
 魔城は、その構造がちょっと特殊だったりするのは以前のとおりで。
「魔王陛下。ご家庭用えあこんは入れられません。室外機までの距離が必要です」
 当然、魔城深奥であるから、御家庭用だとどうしても廊下がくそあつくなる。
 結果的にとんでもないことになる。
「集合型にしようとおもうと、今度は魔城の構造を固定する必要性があります」
 勿論不可能。
「そこでっ!」
 ばん。
 ばばん!
「……なにそれ」
 しかくい、しかくいクーラーのような物体。
 ちょっと見クーラーに見える。
「これぞ人類の叡智、冷風扇!水を巡回させて気化熱によって冷たい空気を送る科学の粋!ちなみに『かがくのいき』と読んでもらいたい!」
 きららら……
 なんとなく爽やかに決める。
「……何故じんるいのえいち……第一それ、涼しくない」
 ばたばたばた。
 岩盤からむき出しになったコンセントから電源を取り出し、スイッチを回す。
 氷を水にがらがらと入れて、ぐるぐるまわりはじめる水もひやしてみる。
「んーんー……何となく扇風機よりましかな……」
 取りあえず張り付いてみる。
 ぱたぱた。
「…………」
 水を充分に含んで、じっとりした冷た目の空気。
「ねぇ、まじー」
「なんでしょうか」
 なんとなくさみしそうな顔で。
「これってさ、扇風機回してかきごおりたべたほうが嬉しくない?」
「……もしかして悪循環かもしれませんなぁ」
 ばたばた。
 ばたばた。
 今日も魔城はなんとなく平和。