まおも人の娘、色々気になることがあるようで。
 今日も今日とてまおはまおらしく日常を過ごしている。

「ううん」
 まおは唸っていた。
 別に何か困ったことがあったわけでもない。
 彼女はいつものように執務机に両肘をついて、なにやら首を傾げている。
「どうかしましたか」
「あー、ちょっとちょっと」
 真後ろに現れたマジェストが声をかけると、まおは右手を振り振り彼を真正面に来るように指示する。
 思い切り嫌そうな顔をして、しぶしぶ彼女の前に回り込む。
 どうやら後ろに立つのが好きなようだ。
「ちょっと色々やってみるから、かんそうきかせて」
「色々……なんですか」
 こほん。
 小さく咳払いして、喉の調子を見るように声を出してみる。
 そしておもむろに。
「マジェスト。今の我が軍の状況はどうなっておる?」
「状況も何も、魔王陛下、最近は命令もなく平和な物で御座います」
 こけ。
「ちょ、ちがうよーちがうよぉ。まじー、私は感想をきいてるの」
「……何の真似で御座いますか。それとも何がしたいんですか」
 むう、とまおは顔をしかめる。
「えー。なにー、そんなもんなのぉ。似合ってない?威厳ない?」
「そうですな。しいていうなら、無理してるのがばればれでしたな。その手の趣味のヒトにはたまらないというかなんというか」
 がく。
 二度目のショックに、彼女は机に突っ伏すように倒れ込む。
「あー……」
「どうかしましたか?急に。どうせ何も変わらないのですから、無理はなさらず」
 机に突っ伏したまま、彼女は机に手を這わせて紙を取り出し、人差し指でとんとん叩く。
 マジェストが覗き込むと――
「たまごの特売日ですか。あとでシエンタに買いにいかせましょう」
「そっちじゃない」
 がばと顔を上げて、自分で紙――「まおう新聞」を見る。
「……かいてないじゃないの」
 はっはっはと笑うマジェストを後目に、彼女は新聞を持ち上げ、問題の部分を指さして彼に突きつける。
 無言の彼女に、彼は再びそれを読み上げる。
「あー、人気投票。途中経過ながら大人気ですな」
 確かに現在トップ、二位のフユに倍以上の差を付け、得票率も50%と小泉内閣並の支持率である。
「こめんとみてよぉ」
「コメント……『魔王っぽくないところが萌えどころです』」
 ふむ、とマジェストはまおに視線を向ける。
「らしくない。確かに陛下は魔王らしくないかも知れないですな」
 がびん。
 顔に縦線を走らせ、口を三角形に開き、目を白く。
「……意外に気にされていたんですね」
 だから先刻の科白になるのだろうか。無理に魔王らしく振る舞おうとしても無理が大きいのだが。
「ご安心下さい、陛下。私は魔王陛下が魔王らしいところを知っておりますぞ。こればかりは誰も否定しません」
 にこりと笑って胸を張る彼を、信じられないという目で見つめるまお。
「魔王陛下の怠惰で気怠い性格はまさに魔王!もう少し真面目にされてもいいのではないかと思わず注意したくなるほど」
「うるさいだまれ」