アンブロシア。伝説の高山植物にして、不死の妙薬の材料。
これから作られるという『神酒』(ねくとるやそーま)はどんなものなんだろうか。
ただまおの側にあるアンブロシアはちょこっと違うみたいで……。
高山植物、アンブロシア。
過去には伝説とまで言われたこの植物も、今では手軽に手に入れることができる。
「ねー、まじーはアンブロシアって知ってる?」
学名をambrosiaと言い、初めて手に入れた人間が『こんなのはなぢゃねーっっ』と叫んだところからこの名がついたと言われている。
「無論で御座います陛下。私に知らない事は微妙にしかありません」
「びみょーなんだ」
アンブロシアは魔術にも使用される。マジェストが知らないはずはない。
しかし、最近は薬として珍重されるようになり、何よりこれの量産というか栽培ができるようになったのだ。
「しかし何故急にアンブロシアなど」
マジェストはむうとうなって顎に手を当てる。
まおはうん、と頷くと薬の小瓶を出す。
所謂ポーションって奴だ。詳しい日本語であれば水薬というものだ。
大抵魔術なんかじゃ、何かの煮出し汁なのだが。うん。
「これこれ。病気・気まぐれ・気力低下時の滋養強壮に効くハイパーエリクサだよ」
主成分・アンブロシアとラベルに刻まれている。
なおタウリンは1000mg配合である。
「ああ、魔王印のハイパーエリクサですか。そう言えば原材料は養殖物でしたね」
思わずまおは?を飛ばして首を傾げる。
「よーしょく?」
「ええ、近海の天然物は馬鹿みたいに高いですから」
何事もなかったかのようにさらりと流すマジェスト。
「何故アンブロシアが近海で取れる。植物だから栽培じゃないの」
「む。アンブロシアは確かに植物ですが、養殖で正しいのです。…判りました。そこまで言うならテンカク2の栽培所を見てみましょう」
そう。アンブロシアが薬として頻繁に使えるようになったのは、テンカク2が冒険者の登竜門、ある種の観光地と化したからだ。
そしてさらに、手を加えて『最も栽培が難しいとされた』アンブロシアが大量に生産されている唯一の土地でもある。
「現場のシエンタさん、カメラよろしいですか?」
「誰のつもり、まじー……」
「ぎゃーっ!」
叫び声を上げるまお。
動じないマジェスト。
「このようにアンブロシアは引き抜こうとする人間に叫び声をあげさせる効用がありまして、その叫び声を聞いたアンブロシアは死ぬと」
「死なない。つーかそれは別物だし反対だ!」