まおは、やっぱりひなまつりを行いたい年頃。
でもお嫁にいけるのかどうかは不安。

「もー幾つねーるとー」
 上機嫌なまおの歌声が、執務室に響き渡る。
 彼女の真後ろ、本来なら何もない空間に巨大な赤い階段が現れている。
 五段のその階段は、一段一段が2mある酷く巨大なものだ。
「魔王陛下。その歌はこの時期には不似合いでございます」
 まったくだ。既に正月は過ぎ去っている。
「夏休みまではまだございます」
 まて。
「え゛ー。だって、この間ひなまつりだったんだよぉ」
 お前も間違いだ、まお。
「掲載は遅れましたが、この間ではなく今日がひなまつりです。でなければ魔王陛下はいきおくれてしまいます」
 そう言って、彼女の後ろの階段――ひなだんを指さす。
「さっさと片づけなければ、結婚どころかなまはげに連れ浚われてしまうという伝承をご存じ有りませんか」
 勝手に作った物語を語ろうとするマジェストを無視して、まおはひなあられをぽりぽりとかじる。
「時期はずれになっちゃってもこの作者はネタを使わないと気が済まないんだよね」
 そう言って、ひなだんを振り返って見上げる。
 お内裏さま。
「…おろして」
 アクセラ。そしてとなりのお雛様。
「ふえぇん」
 シエンタ。
 そして、その下に三人官女。
「ふふん、まあ、いいんじゃない?」
「私がここにいるのは不本意ですが」
「ほぅあちゃー!」
 カレラ、ドク、リィの三人が女装して座り込んでいる。
 五人囃子は残りの奴らだ。この際省く。
「全く、作者が無知だからいい加減な事を書いてるけどねぇ」
「ふむ。本来なら魔王陛下はとっくに初節句は終えてるはずですがね、これも人間の風習ですからね」
 原寸大雛壇を見上げながら、マジェストは腕を組んで頷く。
「五月の端午の節句もネタにするつもりですかね」
「……私、一応女の子」
 一応なのか。
「だとすると、来月は何をするつもりなんでしょうねぇ」
 内裏雛の泣き声の響く執務室、呆れた顔のまおと頷くマジェストは雛壇を見上げていた。
 取りあえず。
「おーろーしーてよぉ」
 シエンタが、可愛そうだった。