元々銃器が好きで、構造なら頭に入っている。
でも、それがどういうものなのか実物を知らない。
ままそういうものだろう。
はらりとかれんだーをめくる。
5月。本当なら端午の節句とかいうネタを使い尽くしているつもりだったのだが。
「んー、今一番いいきせつだよねー」
まおは上機嫌で大きく伸びをしている。
春から初夏にかけてのこの季節は、一番季候がよく過ごしやすい。
嫌いな人間の方が少ないだろう、だが、それはまおもおなじだった。
「本当ですな魔王陛下、今年は花見もやりませんでしたが」
いや、色々ネタがあったから花見なんか行わなかったんだ。
無論そんなうちうちの大人の事情などどこ吹く風で、マジェストも何となくうれしそうだ。
「この季節特有のでんぱとか、よくでてくるもんねー」
こらまて。
「ええ、そうでございます魔王陛下。この季節は脳味噌のボルトを緩めるヒトが続出で御座います」
むむ、表現として間違っていない気もするんだが……
「ボルト?人間にそんなものあるの?」
魔王であるまおにはそう言う言葉のあやなど通じない。通じるわけがない。魔王だし。
「そのとおりでございます、魔王陛下」
かといってこいつも怪しい事この上ない。
だって魔王だから。
「よろしいで御座いますか、魔王陛下、人間の頭は頭蓋骨を主体としたちゃんばーなのです」
それに、付け加えると。
マジェストの性格上、うそしか言わないしだます機会があれば必ず真顔でうそをつく。
「ボルトは、丁度脊椎に沿って配置されています」
「……それで」
まおはいつものとおりに目を細めてついーとマジェストを睨み付ける。
「構造はクローズド、閉鎖方式はローラーロッキング方式」
「MP5か!」
ちっちっち、とマジェストは右人差し指を振って舌打ちする。
「古いですぞ陛下、今はクルツ社が出したクルツと呼ぶモノでございますぞ」
「さらりと答えるんじゃない」
ボルト違いだって、まずそれをつっこめよ、おい……