電波使いの論文  『なぜ電波が使えるのか?』  電波に関する科学的考察が少ないためにとんでも化しつつある毒電波使い、DENPER達。 さほどではないが、現在考えられている大脳生理学等を引用して、これを解析してみようと思う。  ここで勘違いして貰いたくないのは、「どうして電波使いは電波が使えるのか」を科学的に論証するためであり、  電波が使えるようになるための方法論を述べているのではないと言うことである。  まず現段階で超能力を『常識で否定する』理由は以下の二つが上げられる。 1 信憑性がない(イカサマとする説)。 2 人間がそれだけのエネルギーを出す事はできない。  常識ではない範囲で、『何故それが起きるのか』を真面目に研究している部門もある。 『遠視(クレヤボヤンス)』及び『念写』がそれに当たる。  日本でも過去に、御船千鶴子という透視能力者がいた。これに関する実験や検証も行われた。  だが、結局科学として定義された『実験の繰り返し』を彼女以外では不可能なために否定されたのである。  科学は、同一の条件で、不特定多数の人間が実験できなければならないからである。  念力が、2の理由により不可能とされたのは、エネルギーをそれだけ与えたならば言うまでもなく生体への影響(フィードバック)が大きく、  それに耐えられるはずがないとするためである。  たとえばスプーンまげでは、曲げられるだけの電磁波を発すれば高熱が発生するだろうし、脳もいかれてしまう。  原子を叩きつける等怪しい原理も考えられたが、それはむしろ念力を否定するために用意されたものとしか思えなかった。  さて、では以上を踏まえた上でこれから電波について考えてみようと思う。  まず第一に、電波とはなにか。  毒電波を月島さんの言葉を借りてあげるなら、『急に空から振ってきて人間の脳を狂わせる』ものだそうだ。  毒電波はこれからも分かるように明らかに人間の脳に反応するものである。  人間の脳、神経系は電流等の作用により信号が流れていると言われている。  実際にはどれだけ電流が流れているのか?というと、神経節の間を『とびとびに』流れているとされている。  神経節の両端では電気の作用があるが、神経節その物に流れているわけではないのだ。  いわば、次々にスイッチが入っていくスイッチの列のようなものが、神経と考えた方が正しいだろう。  これならばほんの僅かな電気的信号で、且つ素早く信号を伝えることができる。  人体にも影響は出なくなる。  その神経系を操作するには。  化学物質によりシナプスの情報伝達物質を与えたり、異状分泌させたりする手段があるが、これは外部からは不可能である。  電波はその実体を『電磁波』としながら人間の脳に影響を与えるものとしているのだ。  果たしてそんなことができるのだろうか?  神経節とほぼ同等の波長を持つ電磁波ならば不可能ではないかも知れない。  長時間ラットに電磁波を与えた場合癌になったり精子が減ったりするそうだが、未だかつて狂ったという話を聞かないため  実際にはどうなのか、それを確認する術は今存在しないのだが。  ここでは素直に、超能力を検証する際の心構え『否定せず、起きている現象を捉える』に従って考えることにする。  では第二に、そんな風に他人の脳をいじくる電磁波があり、それを操るにはどうすればよいか。  人間は脳内に『生体マグネタイト』と呼ばれる磁気感知の為の物質があると言われている。  これは生体磁気及び地磁気を感知する事ができる。  良い例を挙げると、何の目印もない海を渡る鳥や魚は本能に従ってこの『マグネタイト』の示す方向を感知するのである。  人間にも方向音痴や逆に方向感覚の優れた人間がいるが、彼らは気づかないだけで実際にはこのマグネタイト量の差ではないだろうか。  磁気とは、『電磁波』の一種である。  すなわち人間は『電磁波』を捉える能力を初めから有しているのである!  だがこれだけでは残念なことに、電磁波によって『方向感覚が失われる』事があっても気が狂う事がある実証にはならない  (渡りをするイルカが狂ったように海岸に向かって押し寄せる姿をご存じだろうか?   地磁気の狂いにより方向感覚の狂ったイルカが殺到する事が稀にあるのだが、   成る程それだけ捉えれば『電磁波によって狂う』様にも見えるだろう)。  電波の効用がどんなものかを検証するのは後の機会にゆずり、ここでは人間が電波を使えるかどうかの検証を続ける。  電波を捉える事ができるのは既に述べた。勿論それなりの訓練等を受ける必要性はあるが…  ではどうやったら電波を意のままに操れるのだろうか。  電波使い同士の戦いでは電波を防御する為に電波を使用していた。  多分電波使いでも電波を直接受けるのは危険なのだろう。  これから考えるには、脳内から電波が出ているのではないことが言える。  また月島さんが祐介の電波によりダメージを受けたのも納得できる。  もし脳内から電波が出せるのであれば、それに耐えうる強靱な脳が必要になるだろう。  すなわち、電波を浴びても平気な脳である。  さもなければ、自分が出した電波で脳が破壊されてしまうからだ。  すなわち彼ら電波使いは『外部を飛び交う電磁波を操作』できるのである。  興味深い事例が幾つかある。  ファイアスタータ(発火能力者)という超能力者である。  ファイアスターターは目で見た物もしくはある程度自分の周りにある物が発火する。  上記したように自分が発してそれによる場合だと、視線の延長線上もしくは自分の周囲総てが影響を受ける必要がある。  なのに、なぜ『目標』のみ発火するのか?ここに電波使いとの共通点がある。  彼らは自分の身体に影響を与えず、それも的確に『目標のみ』に影響を与えられるのだ。  ファイアスタータもまた『人間が電磁波を発し…』という風に解釈された点が面白い点である。  この二つの共通した事例を解釈するのには、考え方を改めねばならない。  「電波が満ちている」のを祐介は感じることができた。  これは、彼ら電波使いが外部に対して電波を発しているのではなく、『外部にある電波』を操作しているに過ぎない事を実証しているだろう。  電波――電磁波の方向を変えたり、遮断したりする方法には幾つかある。  発生源に指向性を持たせたり、金属板を使用して反射させる等である。  本来電磁波というのはX線等横波として捉えるべきである。  だが発生源は一点であり、ある一点から放射状(球状)にあらゆる方向に放射されていると言っていい。  この発生点を支点にしてある二次曲線の集合を描くと、それらをある方向かわせるパラボラアンテナができる。  このように、ある程度の方向性を持たせたりしても若干減衰と拡散により電波は捉えられるものである(エリア外でも携帯がある程度使えるように)。   しかし、これらを完全に制御する方法がないわけではない。  磁界を発生させることである。  磁界中ではローレンツ力により電流がねじ曲がるのはご存じだろう。これは電磁波にも同じ事が言える。  というのも、電磁波は電場と磁場を合成したような存在であるからである。  右ねじの法則やローレンツの法則はここに起因するものである。  すなわち、電流あるところ必ず磁気が発生するようになっているのだ。    磁気ならば人間でもある程度『感知』することができる。  さらに、『生体磁場』というものをご存じだろうか。  恐らく源は「生体マグネタイト」であると考えられるが、生命体が発する磁場の事である。  以上より、このような結論を得た。  マグネタイトの振動もしくは流動により、磁気を自由に発生させる事ができるならば、人間は体外に存在する電磁波を操作できるようになるのだろう。  その正体は恐らく『生体磁場』である。  最後に、ついでにファイアスタータが何故目標のみを発火させられるのかを考えてみる。  結論だけいうと「共鳴効果」ではないかと著者は考えている。ここで詳しく述べるつもりはないので、結論だけに留めることとしてこの文章を終わろうと思う。