お師匠が、聖王都に行くことになった。

とりあえず、驚いた。そして喜んだ。
好きに遊べるわけだし。

お師匠が、聖王都に行った。

別に、困りはしなかった。
御飯はどうせ、お師匠が店に出てるときは自分で作っていたわけだし。
だから、だいたい自分が作っていた。二人分。
洗濯だって自分でしてたし、当然。

まぁ最初は、御飯を作りすぎて困ったこともあったけど。
余ったからって夏美よんで食べさせてたし。
喜ぶから。
しばらくたったら、一人の御飯にも慣れたし。

面倒だったら、告発の剣亭かフラットの皆の所へ。
告発の剣亭はまけてくれるし。
フラットのときはお土産を忘れずに。
…たまに忘れるけど。

あ、そーいやひとつだけ。
店番なのに、薬が売れないのは参った。
でもまぁ……売れないのは仕方ないし。
ただ、売れないとつまんない。
最近休業が増えたかも。

うん、遊んでられるのは悪くない。
修行だってサボりたい放題。
でもなんで最近修行してるかな。
…飽きたかな、サボるの。
何も言われないとつまんないし。




今日も今日とて店番サボった遊びの帰り、
がらっと戸を開ける。

「ただいま帰りました〜」

つい声を掛けてしまうのはクセだ。
暗い部屋に靴を脱いで上がる。

「ぎゃっっっっ」

足の小指をぶつけた。
痛い。

「いっっっっっっったぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」

しばらく足を投げ出して呻く。

「うぅぅぅぅぅぅぅぅ」

クノイチとしてちょっと情けない。
とりあえず落ち着いたんで、立ち上がって明かりを点ける。

冷や御飯と余り物の肉じゃがを出してきてもふもふ食べる。
不味くはない。
空になった食器をそのままに、後ろの万年床にぼてっと横になった。
こんなことできるのも、一人暮らしの特権。
お師匠が居たらこうはいかない。

しばらくごろんごろんと転がってみる。




「……早く帰ってこないかな〜。お師匠」


……
………


しばしの間の後、
いきなりむくっと起きあがる

「なんか今、や〜なこと言ったなぁーアタシ……」

なーんであんなコトいったかな〜。
凄く嫌〜な顔をして、食器をがちゃがちゃ片付ける。

「………寝よ」

部屋に戻って明かりをふぅと吹き消す。
明日はフラットのアジトに行かなきゃ。

……



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