「ねえリシェル。ルシアンって、わたしのこと好きなのかな?」
たまたま二人きりの食堂で、いきなり真顔でフェアがそう言ったので、
リシェルは酢でも飲んだみたいな変な顔になった。
「好きなのかな。ってあんた、なんでそんなこと聞くのさ」
「…え?だって、好きとか言われたことないなって思って」
そんなの言われなくったって、見てたらわかるじゃないかとか、
必ず迎えに来るから待ってて。とか言われておいて、何バカなことを言ってるんだこいつは。
とか思ったが、リシェルはそうは言わずに質問を返した。
「ならさ、あたしも聞くけど、あんた、ルシアンのこと好きなの?」
「え?えーっと…」
「だから、あんたはどうなのさ?ルシアンのこと、好きなの?」
「…そういうことは、リシェルに言う事じゃないって気がする」
「ふーん。じゃあさ、ルシアンには言ってるの?好きとか、好きじゃないとかさ」
「…言ってない、かな」
「なんで」
「…何か、別に言うことでも無いかなって思って」
ってことは、そうか、好きなのか。これはルシアンの姉としてはちょと嬉しい。
それにしても、ふだんはスパっと物を言うくせに、随分と煮え切らないし、
表情もいつもに比べてちょっと不安そうに見える。
珍しく、フェアが可愛らしいと思って、くすっと笑って言葉を返した。
「なら、ルシアンも同じなんじゃないの?」
「同じって?」
「だからさ、別に今更言うことでもないかなーって思ってるんじゃないの?ルシアンも。
何かとっくに結構すごいこと言ってるし。」
「そうかな?」
「そうに決まってるわよ。
ほら、わかったらさっさと好きとか好きじゃないとか言ってきたら?」
背中をばしっと叩いて食堂から追い出す。
「ありがと。」
と言って話していたときとは逆に、物凄い勢いで走っていくフェアを見て、
これは、さっきみたいに可愛く話を持っていったりはしないな。
と思って、こっそり付けていくんだったと少し後悔した。
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