SARSがなんだ、食べまくりのソウル

*** 2003年6月18日〜22日 ***

  

★旅の始めに
★まずは朝飯(第1食)
★石焼ビビンバ(第2食)
★豚の焼肉も美味いぞ(第3食)
★韓国人はビール嫌い?
★南大門(ナムデムン)市場の朝食(第4食)
★花を咲かせた、のりまき(第5食)

★ついに牛肉カルビ(第6食)
★持ち帰りのりまき(第7食)
★水原のカルビ通り(第8食)
★広まる日食(第9食)
★似て非なる国
★韓国に行こう


★旅の始めに
私はしがないサラリーマン。旅行が好きでも行けるのは、混んでいて料金も高い時期ばかり。GWとか、夏休みとか、年始年末とか。
頑張ってマイレージを貯めて、さあタダで海外旅行だと意気込んでも、タダ券用の座席数はかなり限られているので、なかなか予約が取れないのだ。
そんな私に神風が吹いた。例のSARS騒動である。
SARSの犠牲になった方々はたいへんお気の毒で冥福を祈るのみだが、おかげで日本からの海外旅行者が激減した。
日本人って面白い。O157だ、狂牛病だ、SARSだと騒いでは、寿司や牛肉を食べなくなったり、海外に行かなくなったり。
でも、ほとぼりが冷めるといつのまにか元通り。
私はかなりのへそ曲がりなので、狂牛病のときは喜んで安くなった牛肉を食べまくっていた。
だからSARSが騒がれるほど海外に行きたくなってしまう。いつもは予約の取れないユナイテッド航空のタダ券も、航空会社に問い合わせてみると、どの路線もほぼOKという信じられない状況だ。
よし、SARSの故郷(?)、香港に行こうと思ったが、さすがにカミさんに反対されたので、4年ぶりのソウルにしたわけだ。

ソウルは久々だが、通算回数では7回目か8回目。
ここ数年も毎年行きたい行きたいと思っていたのだが、チケットが取れなかったり、取れても仕事の都合で行けなくなったり。
何故そんなにソウルが好きなのかというと、答えは食にありだ。
とにかくソウルは美味い!別に食通でもなんでもない私だが、ソウルの食を考えるとわくわくしてしまう。
もちろん、近くて遠い国、韓国の人や文化も面白いのだが、そんなことがどうでもよくなってしまうくらいソウルは美味い!
今回はソウルの食を中心に話をしていこう。
ソウルの話に入る前に、現在の成田空港の状況を簡単に報告しよう。
今の時期(6月中旬)はもともと海外旅行者は少ない時期なのだろうが、やはり空港は空いていた。
SARS騒動も下火になってきたせいか、がらがらというほどではないが、やはり空いていて、とても気持ちがいい。
いつもは行列をさせられる航空会社のカウンターも空いていて、とてもスムーズに手続きができる。
旅行者ももうマスクをしている人などほとんどおらず、出国審査の職員のマスク姿が異様に見えるくらいだ。
さて機内はというと、思った以上に空いている。半分くらいは埋まっているかと思っていたが、せいぜい2〜3割の搭乗率だった。
成田・ソウルの路線はたいへんな人気路線で、この便(成田発18時45分のUA便)も通常は混んでいるはずだが、SARSの影響でこんな状況だ。
こんな空いている飛行機に乗ったのはいつ以来か、記憶にない。
ちょっと幸せな気持ちでソウルに向かったのだ。

★まずは朝飯(第1食)
昨晩ホテルに着いたのはもう真夜中近くだった。
ホテルでぐっすり寝て、さあ翌朝。ソウルのホテルは基本的に朝食は付いていないので、当然外で食べることになる。
東京でいえば新宿か渋谷のような大繁華街である明洞(ミョンドン)で朝食をとることにする。まだ朝の9時前なのでさすがに空いている店は少ない。
行き当たりばったりで小さな食堂に入ってみる。食堂というよりも飯屋という表現のほうがぴったりくるくらいこじんまりとしている。テーブルが5つくらい。
メニューはハングル語のものしかないのでさっぱりわからないが、そもそも朝は一品しかないようで、店の人が日本語で「ゴハンとスープ」と言う。
ということで朝食は「ゴハンとスープ」だ。スープの具は良く煮込んだ牛のすじ肉、もやし、大根。味噌汁に似た味でとても美味しい。
あとで調べたら、これは「ヘジャンクッ」というスープだったようだ。韓国でポピュラーなスープだ。
ゴハンとスープには当然ながらキムチが付いている。韓国で食事を取ると、何を食べるにしろ必ずキムチが付いてくる。日本の漬物よりもはるかに密着した食べ物なのだ。
でも韓国のキムチは太古の昔からあるのかというとそうでもないらしい。18世紀までは、日本と同じ浅漬けのようなものだったらしいが、あるとき塩不足の年があって苦し紛れに塩の代わりに唐辛子を使ったのが起源とのこと。その後いろいろと改良されて今のゆるぎなきキムチになった。
朝飯代は一人4000ウォン(約400円)。

★石焼ビビンバ(第2食)
もうすっかり日本に定着したビビンバ。日本でもチェーン店が珍しくなくなった
私が最初にビビンバを食べたのはもう十数年も前のこと。もちろんソウルで食べたわけだ。
日本人にはまだなじみのなかったビビンバはけっこうインパクトのある食べ物だった。驚いたのはまわりの韓国人がこれでもかこれでもかとビビンバをかきまぜる姿だった。混ぜれば混ぜるほど美味しくなると信じているかのように徹底的に混ぜる。あとで聞いてなるほどと思ったが、「ビビン」は混ぜるという意味。「パプ」はゴハンのこと。
ビビンバに限らず韓国人は混ぜるのが大好きで、日本食のマグロ丼も彼らの手にかかるとコチュジャンまみれの赤い物体になってしまう。
別に韓国の人をばかにしているのではなくて、これが文化というものだと思う。韓国人は混ざり合った味により美味しさ感じるということなのだと思う。
前置きが長くなったが昼飯は石焼ビビンバ。場所は仁寺洞(インサドン、韓国の伝統工芸品店の多い町)にある焼肉屋だ。
昼からもう焼肉を食べている主婦達もちらほらいて、このへんはさすがに韓国らしい。
となりのカップルは男性は石焼ビビンバで、女性は冷麺。私たち夫婦は二人とも石焼ビビンバだ。
待つこと十分。香ばしい風味とともに石焼ビビンバの到着だ。ビビンバを混ぜているときに幸福を感じるのは私だけだろうか。ジュージューという音の心地よさ。おこげもしっかりとできていて、うーん、美味そう!
ちなみに石焼というのは器が石でできていて、これを熱してあるということ。器は真っ黒で本当に石かと疑ってしまう。東大門などの市場で食器を扱っている店で石でできた器が置いてあるので聞いてみると、これを焼くと真っ黒な色になるとのことだった。本当に黒くなるのか、その現場を見てみたいものだ。
当然ながら副菜としてキムチやら大根やらが付いている。
久々のビビンバは美味であった。一人前5000ウォン(約500円)なり。

★豚の焼肉も美味いぞ(第3食)
韓国といえば焼肉。焼肉といえば韓国j。さあ、お待ちかねの焼肉である。
もちろん日本の焼肉は韓国から入ってきたものだが、日本風にずいぶんとアレンジされてしまった。でも韓国の焼肉は日本の焼肉とは全然違うのだ。
まず店だが、食材によってはっきりと分かれている。牛の焼肉屋、豚の焼肉屋、鶏の焼肉屋、内臓の焼肉屋といった具合に。
日本だと焼肉屋に行くと単品をいろいろと注文する。カルビ、ロース、ミノ、タンといった具合に。また副菜もキムチ、カクテキ、サンチュといように個別注文だ。
ところが韓国の焼肉屋の場合は、基本的に食材を選ぶだけ。牛肉の場合だと、味付けカルビ、生カルビ。豚肉だとカルビ、三枚肉等々。
例えばカルビを注文すると出てくるのは肉だけではない!数種類の副菜がどんと出てくる。もちろん多くはキムチで、白菜、大根、ワケギ、キュウリ等々、店独自のキムチが出てくるわけだ。そして当然ながらサンチュも出てくる。こうした副菜はなんとお代わり自由なのだ。日本みたいにサンチュ一皿500円などという法外な請求はせず、いくらサンチュをお代わりしてもアガシ(お姉さん)は嫌な顔せずお代わりを出してくれる。
そして、食べ方も違う。とにかくサンチュなどの葉っぱにくるんで食べる。肉のほかにキムチやらニンニクやらお好み次第。ゴハンまでくるんでいる人もけっこう見かける。
だから焼肉といってもけっこうヘルシーなのだ。肉と一緒に野菜を食べるという感じで、肉の量はさほどでもないのに意外と早めに満腹になってしまう。

またも前置きが長くなってしまったが、今回最初に焼肉を食すことにしたのは新村(シンチョン)という町。近くに女子大があったりして若者でごった返している。
どの肉を食べるかと迷ったが、まずは豚でいくことにした。
韓国でも牛の焼肉は高価なもので、家庭での焼肉は豚が多いという。外食をするときも豚は高価なので、この学生の町、新村には豚カルビの店が多いのだ。
たしかに豚カルビは安い。牛の半分くらい。でもこれがけっこう美味しい。最近は日本でも狂牛病などを契機に豚の焼肉(豚トロとか)も珍しくなくなってきたが、韓国では昔からとてもポピュラーな食べ物なのだ。
新村には豚カルビ通りといって豚カルビ店がずっと連なっているのだが、そのうちの一店を適当に選んで入ってみた。
注文したのは、豚カルビ(テジカルビという)と豚の三枚肉(サムギョプサル)。
この三枚肉は最近のはやりのようで、かなり脂身が多くてぎょっとするが、焼いてカリカリにして食べるとさほどしつこくはない。
ソウルで焼肉を食べると、なにやらほっとする。まあ旅の目的が焼肉のようなものなので、目標達成感みたいなものを感じるわけだ。
期待にたがわぬ美味しさであった。
一人前7000ウォン(約700円)というリーズナブルな価格であった。

★韓国人はビール嫌い?
ここで食べ物を離れて、ちょっと一息。飲物の話だ。
どこの食べ物屋に行ってもビールを飲んでいる人たちってあまりいないのだ。では、韓国人は何を飲む?
これは本で読んだだけだが、韓国人は食べるときは食べる、飲むときは飲むというのがはっきりしているそうだ。
飲むときは民俗酒場(居酒屋)でじっくりと、どぶろく(マッコリ)とか焼酎(ソジュ)ということになるらしい。
でも焼肉屋で彼らは何も飲んでいないわけではない。テーブルの上をよく見ると、ビール瓶はないが、緑色の小さな瓶が置かれていることが多い。
これは何かと隙をみて確認してみると真露(ジンロ)だった。あの有名な日本でも売られている焼酎だ。
新村の豚カルビ屋は私たちのまわりは学生風のカップルが多かったが、ほとんどが真露を飲んでいた。しかもストレートで。
韓国人は短時間でアルコール度の高い飲物を飲むこと(要は、酒飲みが多い)で世界的に有名だそうで、彼らからすると、日本人は何故あんなに薄い酒(つまりビール)を好むのか不思議だそうだ。

★南大門(ナムデムン)市場の朝食(第4食)
  
2日目はまず朝食がてら巨大市場、南大門に行くことにした。ホテルからは歩いてせいぜい10分くらいである。
とにかくごちゃごちゃとしたところで、上野のアメ屋横丁(通称、アメ横)を数十倍もの規模にしたものというと、東京の人ならばなんとなくわかってくれるだろう。
この市場にとっては日本人観光客が上客らしく、すぐに日本語で声をかけられる。以前に比べて日本語でかかれた看板も多くなったような気がする。
さて市場で朝食をとろうと食堂がいくつか並んだ通りに行ってみると、ここでもすぐに日本語を声をかけられた。見本が店の前にずらっと並べられていてわかりやすい。店によっては日本語の説明書きまである。
驚くのは(日本人が知っている)あらゆる韓国の軽食が揃っているという点。うどん、そば、しょうろんぽう、餃子、ビビンバ、のりまき、チジミ、冷麺、カルビクッパ、ソルロンタン等々。
まあ韓国の軽食にはどんなものがあるのかを知るにはよいが、味は推して知るべし。
水餃子とうどんで7000ウォン(約700円)であった。

★花を咲かせた、のりまき(第5食)
日本で「のりまき」というとちょっと中途半端な食べ物だ。おにぎりほどよく食べられるわけではないし、出前で寿司をとってもほんの脇役に過ぎない。
こののりまきが日本から韓国に伝えられ、韓国では確固たる地位を占めているのだ。例えていえばメジャーリーグの大家選手みたいなもの。異国の地で大輪の花を咲かせたわけだ。
まあそんな大袈裟なものでもないのだが、のりまき(韓国語でキムパプ)は韓国では非常にポピュラーだ。韓国には屋台が多く、さまざまな食べ物を売っているが、のりまきを扱っている店の比率はかなり高い。
屋台でなくて町中の店にものりまき専門店もあるし、専門店でないにしてもサイドメニューにのりまきを用意している店も多い。
コンビニにだっておにぎりと同格、いやそれ以上に優遇(?)されてのりまきが置かれている。
コンビニでカップラーメンとのりまきを買った女性がいたが、彼女は店内でのりまきをカップラーメンのスープに浸しながら食べていた。これぞ韓国流だ。
では日本ののりまきと同じかというとそうではない。
一番違うのは、お米が酢飯ではなく普通のゴハンであるという点と、仕上げにのりにごま油をぬり、さらにごまをまぶす点だ。
中身はいろいろだが、私の好きなのりまきはキムチ、たくあん、卵、ハム、ごぼう、だいこん等々いろいろな具を入れたもの。日本の太巻きに近いものだが、こっちのほうが美味しい!
というわけで今日の昼飯はのりまき。
明洞を歩いているとのりまき専門店があったので入ってみた。
ここののりまきは独特で中身がなにもない。ただのゴハンをのりで巻いただけ。そのかわりに、大根のキムチとイカのキムチがどっさり。そして、スープも付く。一人前は4000ウォン(約400円)だった。
あとでガイドブックを見て知ったが、けっこう有名な店らしい。キムチが美味しくてやみつきになると書いてあるが、うーん、私はそこまでは気に入らなかった。
やはり具がたくさん入ったのりまきのほうが美味しく感じられる。
のりまきがソウルではポピュラーな事例を一つ。
今回不思議に思ったのが、地下鉄の入口に朝になると妙なオジサンやオバサンが出現する。オジサンやオバサンは箱(日本ではよく釣り人が持っているようなプラスチック製の箱)を足元に置いてなにやら商売しているのだ。ときたま人がお札を渡すとその箱から何やら円筒形のものを取り出して渡している。
興味深いのでためしに買ってみたが、なんとこれがのりまき。
きっと営業許可などを受けていないもぐりの商売なのだろう。美味しい具だくさんののりまきがたったの1000ウォン(約100円)だった。
腹が減っていたせいもあるが、この旅行中で最も美味しいのりまきだった。

★ついに牛肉カルビ(第6食)
昨晩は豚カルビだったが、やはり焼肉の王道は牛肉だ。
豚の次に牛を食べるという私なりの計画だったのだ。
場所は大学路(テハンロ)という演劇の町だ。以前ソウル大学があったこともあって、数多くの劇場が集まり芸術の香りが漂う町とのふれこみ。行ってみると新村よりは小さ目の町だが、やはり若い人の群れでむんむんとしている。
人並みにうんざりしつつ駅の近くの焼肉屋に入った。注文はもちろん、牛カルビだ。
注文をすると、副菜が続々と出てくる。白菜、大根、キュウリ、キャベツ、イカ、カニ、ポテト、ワケギ、ワカメ等々。全てがキムチというわけではなくサラダになっていたりもする。包むための葉っぱも、サニーレタス、えごまの葉、白菜と3種類。
こんなに副菜が多い店は初めての経験。最近のはやりかもしれない。
カルビの美味いこと。ああ幸せ。

韓国では焼肉を食べてそのあとに冷麺というのが定番。日本でいう別腹ということ。
当然ながら冷麺も食したのであった。
カルビは一人前15500ウォン(約1550円)であった。あんなに副菜がついていて割安感あり。

★持ち帰りのりまき(第7食)

連日ボリュームのある食事をしているとさすがに朝食は軽くしたくなる。
それで3日目の朝食は、前夜大学路でテイクアウトしたのりまきだ。
うーん、このごま油のぬめりがなんともいえない。

★水原のカルビ通り(第8食)

私は観光はあまり好きではない。
旅先でもいわゆる観光地にはあまり行かず、現地のスーパーマーケットやコンビニを探索したり、床屋に行ったりするほうが楽しい。
自慢じゃないが、ソウルは7回目(ひょっとして8回目)だが、ソウルの市外に出たことはない。
しかし、今回はちょっと思い切って電車で1時間の水原(スウォン)という町に行くことにした。
ここには、2つの有名なものがあるという。一つ目は、世界遺産に指定されているという「華城」。19世紀末、李氏朝鮮の時代に遷都のために造られた城だが、結局遷都は中止となった。
二つ目は安くて美味いと評判の水原カルビ。当然ながらこれが目当てである。
電車で1時間ということでのどかな町並みを予想していたが、けっこう大きな町で驚いた。日本でいうと錦糸町とか町田とかいった感じであろうか、巨大な駅ビルがそびえたち、人波でごったがえしている。

華城の見学もそこそこにカルビ店が並ぶカルビ通りに行って、適当な店を選んで入ってみた。安くて美味い水原カルビとはいかなるものか。
メニューも見てみるとカルビが一人前25000ウォン(約2500円)。昨日の大学路の店に比べかなり高いのだが、量がたっぷりで昨日の倍くらいある。味付けをしていない生カルビを注文したのだが、美味である。大満足。
しかし、食べ進むとさすがに食べ飽きてきたような。。。
日本ではせいぜい2〜3ケ月に1回くらいしか行かない焼肉屋に、もうこれで3日連続。飽きるのも当たり前か。

★広まる日食(第9食)

昼の水原カルビがまだ完全に消化しきれていないうちに、もう夜となった。ソウル最後の夜となった。
さあ、何を食べるか。
今回のソウルで気づいたのが日食、つまり日本食の普及ぶり。もちろん今までも日本食の店はいろいろとあったが、どちらかというと高級な店が多かったように思う。それが、今回は庶民的なファミレスっぽい店が増えているのだ。とんかつ屋も珍しくない。(新宿さぼてんもあった。)
よし最後は日食で締めよう。

ということで、弘大入口(ホンデイック)という学生街に行ってみた。
日食の店を探すのは簡単だ。歩いているとすぐに見つかる。いろいろな日本食をまとめて扱っている店が普通だ。そういう店のメニューを見てみると、とんかつあり、寿司あり、うどんあり、といった感じでなにやら楽しくなってしまう。
海外で日本食を食べるのはおもしろい。別に日本食が恋しいというのではなく、その国に日本理解度みたいなものがわかるような気がして、
けっこういろいろな国で日本食を食べている。
さあ、韓国の日本理解度やいかに。
入ったのはこじんまりとした日食の店。店内はなんとなく日本風。客層はというと、若い韓国人カップルが多いような気がする。
若い層のほうが日本アレルギーが小さいことが関係しているのかもしれない。
私が注文したのは、うどん定食。(4000ウォン、約400円)うどんに、天ぷら、手巻き寿司が付いている。
天ぷらは海老だけがフライ(ころもがパン粉)となっているのがちょっと不思議。
味はというと、もういろいろと食べ飽きてどうでもいいという感じになってしまった。(笑)

ということでソウルの食は第9食でおしまいとなった。

★似て非なる国
食べ物の話ばかりになってしまったので、ちょっとだけ違う話をしよう。
日本と韓国、似ているなと思う点もいっぱいあるし、ここは違うなと思う点もいっぱいある。町歩きで気づいたことをいくつか書いてみる。
●町行く人々
韓国人と日本人。顔がよく似ているので、けっして見分けはつかない。私が店に入って行ってもだいたい韓国語で声をかけられる。こちらがあー、うー言ってもなかなか日本人だとわかってもらえないことだってよくある。
でも、個人的な感覚では韓国人のほうが男性も女性もやはり大柄だと思う。スラリとしたスタイルのよい女性が多く、ついつい視線がいってしまう。(笑)
●地下街
町を歩いていて慣れるまでたいへんなのは、とにかく横断歩道が少ないということ。通り一本隔てたビルに行きたくても簡単ではない。地下街の降り口を探して階段を下り、このあたりだろうと目星をつけて階段をあがるといった具合だ。
韓国は今だ北朝鮮に対しては準戦時体制で、地下街がシェルターの役目を果たすそうだ。だから地下街の発達ぶりはすごい。もう町中が八重洲地下街状態といってもいい。
それゆえホームレスには居心地のよい町かもしれない。仁川空港到着日に夜遅くバスに乗って町に向かったが、乗り越してしまったのだ。ホテルまでかなりの距離を歩いたが、地下街には必ずホームレスがたむろしており、ちょっと危ない雰囲気だった。昼間にはけっして見かけない光景だった。
●ケイタイ中毒
ソウルの町はケイタイで溢れていた。老若男女がケイタイを持ち、生活への密着度は日本とあまり変わらないようだ。
電話で話すだけでなく、メールを打っている人たちが多いのも日本と同じだ。歩きながらでも地下鉄の中でも一心にメールを打っている。このようにちまちまとメールを打つ国民というのは日本人と韓国人だけではなかろうか。似たもの同士だと妙に感心した次第。
●なにかが足りない
町は人人人であふれている。町並みも日本に似ている。でもなにかが違う。そのなにかがずっとわからなかったのだが、ようやく今回わかった。うん、ソウルには自転車が少ないのだ。ほとんど見かけないと言ってもいいくらいで、わが町亀戸とは大違い。
それは何故か?
理由その1:ソウルは公共輸送機関が発達し、しかも安い。水原まで1時間電車に乗ったが、なんと1200ウォン(約120円)だし、タクシーの初乗り運賃は1600ウォン(約160円)。バス路線は縦横無尽に張り巡らされており、運賃はせいぜい数十円といった具合。だから、自転車に乗らなくてもすんでしまう。
理由その2:自転車は労働者(ブルーカラー)の乗り物だという意識が強く人気がない、ということがある本に書いてあった。この自転車の少なさからしてこれが真実なのかもしれない。

★韓国に行こう

最後にちょっと真面目な話。
韓国は日本の隣国でありながら、過去の複雑な歴史から日本とは微妙な関係にある。そもそも隣国同士というのは世界的にも仲が悪い(英仏が典型例か)と相場は決まっているので、あまり仲良くしようと言うつもりはない。
でもこんな近くの国でありながらどんな国なのか知らない人が多すぎるのは問題だ。今や韓国は日本からの海外旅行者数NO.1の国であり、年間200万人以上の旅行者が韓国を訪れているが、どうも旅行者層が偏っているように思える。
韓国の旅行地としての「売り」は、エステ・ショッピング・グルメなので、女性、特に若い女性の旅行者が多いわけだ。そういうわけで、私の周囲のオッサンやオニイサンには韓国経験者はあまりいないのだ。
これはちょっともったいない。
すぐ近くに顔も形もとても似た人々が住んでいる。それなのに、歴史・気候風土等々の影響で、日本と似ているようでいろいろと違う文化が存在している。そんな国を歩くだけでもいろいろな発見があってとても刺激的だ。
軽い気持ちで多くの人々に韓国を訪れてもらいたい。韓国と日本は飛行機で2時間足らず。近い将来には羽田からシャトル便が飛ぶ計画もある。
両国の庶民レベルの行き来が増えれば、つまらぬ偏見もきっと小さくなっていくはずだ。

さあ、オッサンよ、オニイサンよ、韓国に行こう!


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